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特集「ディーバ(大女優)」

2012年10月1日

特集 ディーバ(大女優) エリザベス・テイラー 
名犬ラッシー 家路(1943年 家族映画)

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監督 ミヒャエル・ハネケ
出演 ナオミ・ワッツ/ティム・ロス

大人びた少女

エリザベス(リズ)・テイラーは11歳のとき「名犬ラッシー」に出演した。79歳で没するまで彼女の女優歴は68年に及ぶ。最後の作品は「トウルー」(2004年)だった。9・11が起こり愛犬のゴールデン・レトリバー「トウルー」を気遣う主人公が、イヌにむかって手紙を書くという形で撮った映画だ。エリザベスの女優人生の始まりと終わりにはイヌがいたことになる。実生活でも大の愛犬家だった。彼女のハリウッド入りには、東のひばりに西のリズかと思うくらい母親の影響が強い。母セーラは元女優だった。エリザベスはロンドンで裕福な画商の家に生まれた。両親はアメリカ人だ。英独の開戦によって大使館からアメリカへの帰国を促された父は、カリフォルニア州パセデナに落ち着き画廊をオープンした。画廊の客の一人がエリザベスに目をとめハリウッドのプロデューサーを紹介した(なんとこの人物が帝王セルズニックだった)。父親は知らず、元女優だった母親は、果たせなかった夢を娘に託した。いくつかの曲折はあるがエリザベスは「名犬ラッシー」でキャリアをスタートする。11歳でも女優は女優である。ラッシーのギャラが250ドル。エリザベスは100ドル。後年「クレオパトラ」で100万ドルを手にする女優はイヌより安いギャラから出発した。「名犬ラッシー」をみれば11歳のエリザベスがいかに大人びた顔立ちをしているかがわかる。エリザベスは成人が縮小したような整い方をはや見せているのだ▼物語は、ヨークシャーの田舎に暮らす貧しい一家が困窮に耐えかね、たったひとつ手元に残った財産である「名犬ラッシー」を貴族に売る。ラッシーはコリーの名品だ。一家の少年(ロディ・マクダウェル)が学校の終わる4時5分前になると毎日迎えにでかけ校庭で待つ。少年とラッシーは強い絆で結ばれているが、家族が食べていくためには別れなければならない。ラッシーを買った貴族の大富豪がリズのおじいちゃんに当たる。おじいちゃんは孫娘を目に入れても痛くないほど可愛がっている。孫娘のほしいものはなんでも買ってやるのだ。賢いラッシーを手に入れた富豪一家は、ラッシーを調教しようとするが、ラッシーは午後4時5分前になれば、あらゆる手段をろうして脱出し、校庭へ少年を迎えにいく▼スコットランドで開かれる名犬コンテストに出場させられることになったラッシーは、ヨークシャーから何百キロ離れたスコットランドに移送される。孫娘はどことなくラッシーが幸せそうではないことに気づいていた。ラッシーは辛く当たる無能な調教師の隙をみて逃走、孫娘は走り去るラッシーを見て「おじいさま、ラッシーは南に向かったわ。ヨークシャーに帰るつもりなのよ」と叫ぶ。その通り、ろくに食べ物もなく休む暇もなく走り続けたラッシーは、行く手をはばむ大河をみてもひるまない。どんどん泳ぎだし、流されながらもついに向こう岸に着く。疲れきったラッシーは土砂降りの泥のなかに倒れる。立派なコリーだとみてラッシーを捕獲しようとする犬捕りや、野犬の群れや盗賊がラッシーを襲う。いっぽうで親切な老夫婦や、行商のおじさんに助けられ、ラッシーは右前脚を痛めつつも、ついにヨークシャーへたどりつく。ラッシーは必ず家に帰ると信じていたおじいちゃんと孫娘は、ラッシーの帰宅を確かめに行き、少年とラッシーの思いがあまりに一途なことにうたれ、ラッシーを少年にもどしたばかりか、失業中の父親を犬舎の調教師に雇う。めでたし、めでたし▼「名犬ラッシー」が公開されるとエリザベスの美貌と子供とはいえ腹のすわった演技はたちまち注目を集めた。母セーラは本格的に売り込みを開始した。ベストセラー「緑園の天使」を是が非でもわが娘に。劇中のヒロインにしては子供っぽい、背が低いと言われたエリザベスに母親は、発育期の体を早く成長させようと(いくらなんでも11歳では胸はペチャンコだった)、栄養たっぷりな食事と充分な睡眠、ハードな体操、何種類もの美容クリームをためし、苦手な乗馬に挑戦させ、あっぱれ主役を獲得した。エリザベスが女優として円熟期を迎えた20代後半の写真をみつめてみよう。熱帯の食虫植物のようにじつに濃い顔だ。マスカラにけばけばしく縁取られたスミレ色の瞳。その目で見つめられるとだれでも理由もなくどぎまぎした。ひたと押し当てるようにして見つめる視線は、野心と猜疑と、とらえどころのない複雑さを現していた。

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