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特集「ディーバ(大女優)」

2012年10月2日

特集 ディーバ(大女優) エリザベス・テイラー 
ジャイアンツ(1956年 家族映画)

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監督 ミヒャエル・ハネケ
出演 クリスチャン・フリーデル/ズザンネ・ロータ

エリザベスザウルス

エリザベスはどうしてもこの映画に出たかった。マイケル・ワイルディングと結婚したエリザベスはふたりの息子にめぐまれた。当時のハリウッドは女優とは名ばかり、スタジオの奴隷扱いが普通で、子供を産むと出産停職となった。ワイルディングも仕事がなかった。収入がとだえたエリザベスはお金のためにつまらない映画に出なければならなかった。続け様に出産停職にあったエリザベスは、久しぶりに持ち込まれた大作「ジャイアンツ」に欣喜した。ヒロインには何人かの候補がいたが、共演するロック・ハドソンの「リズがいいと思う」という推薦で決まった。エリザベスは一生この恩義を忘れなかった。出産で増えた16キロの贅肉をダイエットするため、数週間固形物を摂らず水とジュースしか飲まないという、苛烈な減量を敢行し体型を元に戻した。1950年代とはハリウッドの黄金時代で映画は万能の娯楽だった。スクリーンを制することは世界を制することだったと言っても大げさではなかった。それでなくともエリザベスとは、どうせやるならとことんやる、強靭な性格だった▼このさいエリザベスの結婚歴をまとめておこう。17歳でホテル王ヒルトン・ジュニアと婚約、18歳で結婚、9カ月で離婚、20歳でイギリス人俳優マイケル・ワイルディングと二度目の結婚、息子二人をえるがプロデューサー、マイケル・トッドと恋に落ち24歳で二度目の離婚、離婚が成立して2日後にトッドと三度目の結婚。娘一人を得るが26歳で死別。傷心のエリザベスは親友デビー・レイノルズの夫エディ・フィッシャーと27歳で4度目の結婚。32歳のとき「クレオパトラ」で共演したリチャード・バートンと5度目の結婚。これは10年間続く。バートンと離婚したものの、別れ切れずバートンと再婚、つまり6度目の結婚が43歳。1年足らずで離婚。44歳のときジョン・ワーナーと7度目の結婚。彼は上院議員となり、エリザベスはハリウッドを離れ政治家の妻として議員の地元バージニアに移り住み尽くしたが結婚生活約6年で離婚。エリザベス59歳のときアルコール依存症の治療施設に入っていた建設作業員ラリー・フォーテンスキー(20歳年下)とマイケル・ジャクソンのネバー・ランドで挙式。5年後に離婚▼エリザベスの「とことん」ぶりが結婚離婚にも出ている。「ジャイアンツ」のとき結婚していたのは二番目の夫マイケル・ワイルディングだった。妻の浮気に気づいたマイケルが「思慮にかけた行動だ」とエリザベスをなじると「ならわたしのお尻をぶてば。わたしの父はいつもそうしたわ」。エリザベスが何度も結婚を申し込んだがついに結婚してくれなかったたったひとりの男モンゴメリ・クリフト(モンティ)が、ワイルディングのイギリス人らしい、さりげないやさしさをほめると「わたしは大きくて強い男に憧れるの」とエリザベスは言った「わたしの面倒をよく見てくれて、たくさん宝石を買ってくれて、わたし宛の請求書を代わりに払ってくれるような人を」▼24歳でエリザベスは世間の同い年の女性よりずっと成熟していたと思う。9歳で映画界入り、リムジンでの送り迎え、学校は子役たちのためのスタジオの中の学校。たとえままごとのような結婚であれ18歳で嫁いだこと。美貌に加えグラマラスな姿態である。のち結婚したリチャード・バートンがつけたエリザベスのあだ名は「ミス・ボイン」だった。エリザベスは目立った。美貌で? もちろんそれもある。しかし大きな頭に豊かな黒髪。黒々とした多毛症の濃い眉。短い脚に小さなプクプクした手。足は平べったくずんぐりして幅が広かった。悪声だからボイストレーニングを進められるが従わない。ブロンド美人全盛のハリウッドで、わんわんと盛り上がった黒髪の大きな頭と金切り声と、子供のような体型と巨大なボインを備えたエリザベスは、自分に集まる視線と注目と賛辞を貪欲に吸収し、吸収すればするほどますます栄養充分な、途方もないダイナソーに変身していく▼「ジャイアンツ」時代はエリザベスがまだ「いつか女優をやめて子供たちのために家庭に専念したい」と健気なことも口にしていた。エリザベスは見も知らぬ土地テキサスに、東部の名家から嫁いだ初々しい花嫁を演じる。子を成し夫に尽くし、時代にもまれながら子供たちと家名と事業を守り育てていく夫婦の一代記を、ロック・ハドソンとともに素直に演じて好感が持てる。一家の牧童で、石油を掘り当て大富豪となるジェームズ・ディーンは、彼十八番のすねた上目遣いの、感情を表さず、口の中でモゾモゾ聞き取りにくい言葉をしゃべる陰気な小男の役柄だった。撮影終了後数日で事故死した。エリザベスと共演した男性たちは不思議と早死する。最初に結婚したヒルトン・ジュニア。ジェームズ・ディーン。モンゴメリ・クリフト。後年「夜を見つめて」で共演したローレンス・ハーベイもこの映画の直後に死んだ。エディ・フィッシャーは火が消えるようにしぼみ、リチャード・バートンは別れたあと二度結婚したが、精気を吸い取られたような「その後」だった。エリザベスと結婚するとは、悪魔に魂を売ることだと「リズ」の著者デビッド・ハイマンは書いている。

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