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シネマ365日

2012年10月21日

リトルマン・テイト(1991年 家族映画)

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監督 ジョディ・フォスター

出演 ジョディ・フォスター/ダイアン・スウィート

よくできた普通の映画

とくに感激する映画でもないと思うけど、ジョディ・フォスターのきっちりした性格というか、堅実なというか、手堅いというか、一言でいうと無難な仕上がりで、初監督とすれば「まずまず」だろね。強い母親が好きですね、フォスターは。「フライト・プラン」もそう「パニック・ルーム」もそう。「リトルマン・テイト」のヒロイン、ディディも酒場でウェイトレスをしながら天才少年を育てるシングルマザー。ガラッパチふうの口をききながらフォスターが達者に演じている▼フォスターが生まれる前に両親は離婚していたから、彼女は母親の女手で育てられた。フォスター自身人工授精で男の子二人を産んだシングルマザーだ。強い母親は彼女の血筋ですか。早くから芸能界に入り経済的にも一家の中心となってーつまり余技ではなくてー業界の裏表を知り尽くしている。だから勉強しなかったのかというと、エール大学を次席かなんかで卒業だからね。そもそも勉強の好きな理知的な女性である。それはまちがいないが彼女には娼婦と強姦される役が多い。13歳の「タクシー・ドライバー」の衝撃は物議をかもしたが、最初のオスカー受賞作「告発の行方」や「ウディ・アレンの影と霧」「ホテル・ニューハンプシャー」「ブレイブ・ワン」なんかが代表だろう▼仕事熱心で頭がいいからどんな役でもこなすのだとみるか、いい監督を選んで出ているのだとみるか、フォスターはこういう役が好き、とはいわないまでもどこか惹かれるのだとみるか、どれだろう。「リトルマン・テイト」に続く同年の1991年、フォスターは「羊たちの沈黙」で二度目のオスカーを受賞する。一方の天才は子供、他方の天才は連続殺人を読み解く精神科医だ。これだけでフォスターは天才が好きなのだと断じる根拠にはならないが、天才が好むと好まざるにかかわらず、踏み込んでしまう逸脱の世界が好きなのだとはいえると思う。彼女はおよそ破綻をきたさない、とても整った意思の強い性格なのだけど。そういえばキューリー夫人。二度のノーベル賞受賞の科学者。たいていの教科書に登場する偉人伝のヒロインだけど、たしか大昔に映画化されているはずだ(いっぺんみてみよう)、彼女をフォスターにやらせてみたらどうだろう。常軌を逸した狂気と紙一重の天才科学者が出現するにちがいないわ。ボーヴォワールの「他人の血」でも、理解されようとされるまいと突き進む女に、フォスターはノリノリで取り組んでいた。シャブロル監督は、フォスター用シャブロル世界を一作つくって監督してやればよかったのに▼「リトルマン・テイト」でよくわからないのは、仲良く暮らしている母と息子が天才児教育を主宰するジューン(ダイアン・スウィート)と半目したり抵抗したりして、最後は仲良くパーティーするのだけど、どういう意味なのコレ。どっちもシングルだから仕事のつらさをわかりあおうということか。天才児をいじくりまわしてスポイルすることなく、健全に育てていこうとする意図か。フォスターは酒場の仕事を機嫌よくやって息子が生きがいだ。天才であってもなくても息子は息子だ、という母性愛にあふれている。でも天才児教育を受けたために一時母親に対する態度が微妙に変化して、今までのように無邪気じゃなくなったときは、ディディはショックだった。そこで天才教育に「?」となり、ジェーンの方針に疑いを持ったのでしょう。でしょう、というのはわれながら頼りない判断だが、どんな頼りない判断をしたところで、大局にまったく影響ないのがこの映画だ▼フォスターも50歳だ。そろそろ自分の資質を絞りこみ、ビタ銭をばらまくような才能の使い方はしないほうがいい。ヒッチコックがミュージカルに手をだしたか。クリント・イーストウッドがローマ皇帝を演じたか。色気で勝負することをまったく考えていないフォスターは、子供のときから苦労してきたせいか、おめでたいロマンスものはアホらしく、人嫌いなところさえある。ま、自分で決めたらいいけど。

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