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特集「ディーバ(大女優)」

2012年11月5日

特集 ディーバ(大女優) キャサリン・ヘプバーン 
招かれざる客(1967年 社会派映画)

監督 スタンリー・クレイマー

出演 キャサリン・ヘプバーン/スペンサー・トレイシー

 

女ってラディカル

恵まれた富裕な家で育ち、リベラルな教育を受けた一人娘が婚約者に黒人の医師を連れてくる。娘は23歳、相手は37歳。事故で妻子を亡くした。彼はWHOの中軸にいる高名な医学者である。画廊の経営者であり娘の母クリスティーナがキャサリン・ヘプバーン、新聞社社主の父マットにスペンサー・トレイシー、医師ジョンがシドニー・ポワチエ。両親の親友ライアン神父にセシル・ケラウェイ。娘と婚約者が家にきてから晩餐までの半日の経緯を描く室内劇だ▼父親の煩悶を神父がからかう「なんだ、その渋面は。自由主義者が己の主義に泣くか。わがこととなれば錦の御旗の下から本音がのぞく」痛いところを突かれた父親は「説教ならほかでやれ」怒るけれど事実だから意気があがらない。ジョンの両親までくることになったが、彼らは彼らでまだ息子の婚約者が白人だとは知らない。なにもかも明らかになったあと「ほんならいったいどうするネン」という問題の詰めが残った。父親ふたりは断固反対、母親ふたりは子供たちを信頼して賛成、婚約者同士でいうと医師は「相手の親の賛成がなければ結婚しない」娘は「早く出発して結婚しちゃいましょうよ」▼なにも説明を要しない明らかな構図であろう。社会的にまだ時代はそこまで進んでいないとか、世間が許さないとか、愛だけでやっていけるほど人生甘くないとか、許可がなければ結婚しませんとか、グダグダ言っているのが全員男。本人が幸福ならそれでいいじゃないの、先の心配をいまここで議論しても仕方ないでしょ、それより将来にわたってサポートしてやるのがわたしたちの役目でしょうが。愛し合っているという基本を踏み外していないのなら、あとは本人たちの問題、どこでも好きなところへ言って結婚しなさい「ありがとう、そうするわ、ママ」なんていうのがみんな女▼女って本質的にラディカルなのね。一晩理屈をこねていても拉致があかないことを一瞬で答えをだすのよ。もちろん娘の婚約者は国際医療機関の要人であり、社会的地位は安定し、収入においては心配がないという前提もおおいに預かって力あるのだけど。彼が無職で資格もなく、その日の糊口を糊することもできないけど理想だけは高々、となれば男親たちが賛成しても女親たちは、娘が可愛ければ可愛いだけいくら大胆な母親でも、さあ、どうだったでしょう▼「将来山のような困難があることがわからんのだ、お前たちには」と男たちは言うが「結婚させないほうがもっと大きな困難と後悔を招きますよ」と母親たちは動じない。僅かな時間話しあっただけで、ジョンの母親の人柄を理解したクリスティーナは、母親の直感で(この人に育てられた息子に万が一つの手落ちはあるまい)と信じる。クリスティーナの娘であるジョアンナは「ね、ママ。いいでしょ。わたしたち今夜の便でジュネーブに発って向こうで結婚式をあげるわ」なんてピザを注文するより簡単に報告しているのに、肝心の婚約者が「君のご両親の許しをえないうちは結婚しない」なんて言っていたのを知り(い・ま・さ・ら)呆気にとられる▼このへんの女優たちと男優たちの、押しては引き、引いては押しの芝居が出色で、サスペンスでないサスペンスのような緊張感を高めていく。それと…芸の細かい話になるけど、紹介されたあとシドニー・ポワチエがテラスに出てテーブルに腰掛ける。まあどうぞ、とキャサリンがお茶とサンドイッチを進める。なにしろ晩餐までにはまだ時間がある。スペンサー・トレイシーが帰宅して今からゴルフに行くからこれで失礼と席を立つが、異様な雰囲気に気づき座り直す。ポワチエが説明しようとするが…彼はなんと言っても37歳の大人である。父親がどんな反応をするか目にみえている、しかしここは自分切り出さねばならない。サンドイッチどころではないのだ。ものすごく気になったのがここ。ポワチエはサンドイッチのパンを開いたり閉じたり、指でいじくりまわしていっかな口に運ぼうとしないのだ。パンがぐちゃぐちゃになってしまう「食えよ。早く食えったら」イライラした女性観客は(こういうことを心配するのは女である)少なくないはず。結局ポワチエは食べませんでした。よれよれになったあのサンドイッチが映画のスッタモンダを象徴していたみたい。最後にトレイシーがぶつ演説は、すでに提出された解決の整合性をつけただけです。やっぱりこういうシメのところで格好つけないと収まりが悪い。スタンリー・クレイマー監督は「ニュールンベルグ裁判」でもスペンサー・トレイシーの判事に問題終結のシーンを演じさせています。