女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

シネマ365日

2012年11月12日

特集 「ブラックな笑い」ギャラクシー・クエスト(1999年 コメディ映画)

監督 ディーン・パリソット

出演 ティム・アレン/アラン・クリック/シガニー・ウィバー/サム・ロックウェル

SFオタクの呵々大笑

20年も前の人気SFテレビシリーズ「ギャラクシー・クエスト」に主演した俳優たち。彼らは一世を風靡したが栄光は過去のもの。今や落ちぶれイベント会場の人よせパンダや、スーパーの開店祝いのテープカットにでかけ、細々と食いつないでいる。貧するとは鈍する。主役をつとめた俳優たちはちょっとしたことでいがみあい、悪口をいいあい、軽蔑しあい、現状を冷笑するいやなやつに成り果てた。ところがだ、再放送された番組が800万光年離れた異星でキャッチされたのだ。その星は知性があって性格がおだやかな国民が平和に暮らしていたが、ある日邪悪なエイリアンに襲撃される。反撃のノウハウを知らない彼らはやられっぱなしだ。どうすればいい▼そこでかれらは決心する。地球という星からはるばる発信してきている、このノウハウを学ぼう「ギャラクシー・クエスト」だ。このヒーローたちに救援を依頼するのだ。特使が選ばれ800万光年をものともせず出発した。地球人が驚かないよう、あらかじめ映像で見た姿かたちに似せた。言語も超高機能翻訳機で同時通訳できる▼過去の栄光でくいつなぐ落ち目の人気者たち、という設定がまずブラックだ。全員いい年をして…マディソン少佐に扮するシガニー・ウィバーを見てみよう。彼女にとって20年前とはどういう意味か。ぷっ。あの傑作「エイリアン」第1作が公開され、シガニー・ウィバーがブレークした年だ。それから20年。エイリアン・シリーズは4作を数えSFアクションの金字塔を打ち立てた。シガニー・ウィバーは50歳になり、依然としてグラマラスな体型で堂々「ギャラクシー・クエスト」のスクリーンを圧しているではないか。おまけにこの役作り。彼女はどんなセリフをいうときでも胸を突き出してボインを強調し、知性の権化であったリプリー航海士からバービー人形への大変身を遂げたばかりか、劇中自らエイリアンをネタにしてさんざんふざけ倒しているのだ▼ドクター・ラザラスに扮するのはアラン・リックマン。と言ってピンとこなければ「ハリー・ポッター」の魔術学校は薬学の専門家スネイプ先生といえば思い出せるだろうか。ドクター・ラザラスはイギリスのシェイクスピア役者という設定。彼は鏡に向かって妙なトカゲのカツラをつけながらわれと我が身を呪う「リア王を3度やったこのわたしが…もうこのセリフは一生いわないぞ」でも舌の根の乾かぬうち彼はサイン会でファンの要望に答え、こう言わねばならぬ「やるのだ。トカゲアタマに賭けて」▼タガート艦長ことジェイソンには「トイ・ストーリー」シリーズでお馴染みのティム・アレン。そもそも二日酔いの彼が、宇宙人サーミアンをイベントのプロモーターと勘違いし、迎えに来たリムジンに乗ったのが本編の始まりである。サーミアン星人には「嘘」の概念がなかった。彼らは「ギャラクシー・クエスト」が架空の物語とは考えず、地球の歴史ドキュメンタリーであると信じ、その愛と勇気と信念を自分たちの行動規範とし、異星人との戦いにそなえ「ギャラクシー・クエスト」の宇宙船プロテクター号さえ完全に再現していたのである▼地球に戻ったジェイソンはサーミアンを助けに行こうというがだれも本気にしない。しかしせっかくジェイソンが持ってきた仕事だからと引き受ける。彼らを待っていたのは本物の宇宙船と宇宙戦争だった。ここから先は笑いと涙と最高のSFアクション・コメディだ。サーミアン星人の献身的な「祖国防衛」にジェイソンやマディソン少佐、トカゲアタマいやドクター・ラザラスは一丸となって奮戦する。醜い異星人は映画のエイリアンをグロテスクにマンガチック化した醜怪な化物である。銃撃戦やら怪物とのアクション場面になる異星の地表は、ユタ州ゴブリン・バレーで撮影された。アメリカって広いのだなあ、こんな火星みたいなところがあるのだね。監督スタッフ俳優、とにかく全員SFオタクが乗りまくっているのが「ギャラクシー・クエスト」に高笑いを響かせている。高度なばかばかしさっていうのがあるとすれば、それは幸福観のひとつかもね。