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シネマ365日

2012年11月16日

特集 「ブラックな笑い」アメリカン・ドリームズ(2006年 コメディ映画)

監督 ポール・ワイツ

出演 ヒュー・グラント/ウィリアム・デフォー/デニス・クエイド/マーシャ・ゲイ・ハーデン

ご都合だけの筋運び 

芸達者は揃っているのだけど。大統領を登場させイラクのテロ組織など格好の時事ネタまであるのに、盛り上がりがないまま終わってしまう。スター誕生の人気オーディション番組「アメリカン・ドリームズ」はアメリカでいちばん視聴率をとっている。司会者のマーティン(ヒュー・グラント)は視聴率しか頭にない超ジコチュー男。恋人にも愛想をつかされるが「マーティン、僕は僕が羨ましい」と自分につぶやくナルシストの固まりだ。番組の一新を狙って登場者の選択を変えることになった。選ばれたのがオハイオの田舎で歌手を夢見るサリー(マンディ・ムーア)。ミュージカルを愛するテロリストのオマール。彼は砂漠での訓練中ドジばかり踏むのでアメリカの親戚の家に預けられたところ、ひょんなことでアメリカン・ドリームズに出演することになる▼再選を果たした大統領(デニス・クエイド)はウツでひきこもり状態に陥った。夫人(マーシャ・ゲイ・ハーデン)がやさしく励ましても元にもどらない。頭をかかえた補佐官(ウィリアム・デフォー)は大統領が好きなテレビ「アメリカン・ドリームズ」にゲスト審査員として出演させたら元気がでるのではと考えた。大統領出演で番組の前人気は沸騰。サリーとオマールは順調に勝ち抜いていくのだが…。サリーの恋人ウィリアムは陸軍に入隊するが負傷してオハイオに帰ってくる。テレビ局は帰還した負傷兵との純愛を番組の話題にしようととびつく。オマールが、大統領がゲストで来る人気番組に出演するときいた故郷のテロ組織は、オマールに因果を含め大統領と握手するときにこのスイッチを押せ、と自爆装置を与える。ウィリアムは決勝戦の直前サリーとマーティンの情事を目撃する。オマールはテロがばかばかしくなって自爆装置をトイレのゴミ箱に捨てる。それを拾い上げたのがウィリアムだ▼決勝戦はサリーとオマールの一騎打ちだ。補佐官は引きこもりの大統領が有権者の面前でトンマなことをいわないよう、耳栓型の無線機を通して大統領の発言をコントロールしていたが、耳栓の外れた大統領はステージにあがって場違いなセリフをいう。そこへふらふらと登場したのはウィリアム。恋人が司会者を寝た、とばらしガバっとジャケットの前を広げると胴体に自爆装置がまきついている。騒然とにげまどう観衆。避難する大統領。右往左往大混乱の会場をマーティンはカメラにおさめようとウィリアムに近づくが、怒り心頭のウィリアムは自爆装置もろともマーティンに接近した。もちろん大爆発。マーティンとウィリアムは爆死だ。でも映画はその後の繁栄をばっちりと映す。サリーはマーティンの後釜として「アメリカン・ドリーム」の司会者に抜擢。オマールはつきまとうテロリストが全員逮捕され、めでたく芸能界にスカウト。大統領は耳栓を外してしゃべるようになる▼八方丸くおさまったはずなのだが、割をくったウィリアムとマーティンの後味が悪い。サリーはウィリアムの純情をさんざん利用して、あげくは調子よくマーティンと寝てサクセスを手にする。マーティンは恋人が去る本当の理由がひとつもわからない、あるいはわかろうともしないエゴイスト。そら、世間にはそんなやついくらでもいるじゃない、そこがこの映画のブラックなのだよといってしまえばそれまでだが、これはブラックでもなんでもなく、ただご都合主義で辻褄を合わせただけだろう。大統領だってなんのために映画に使われたのか、たいした理由があるわけでもない。大統領夫人のマーシャ・ゲイ・ハーデンなんか出るだけ無駄だった。補佐官役のウィリアム・デフォーはこのとき51歳だ。頭が禿げる年でもないのに、大統領の父親のような大久保彦左衛門ふう禿げ頭に髪を剃りあげたのは悲しいばかりだ。ただひとつ救われるのはオマールの従兄弟役。彼は悲願の「アメリカン・ドリームズ」出場をオマールにさらわれ、怒り狂っていたものの、オマールの余りに下手くそな「ゾンビの死体ふうダンス」に目をおおい「おれは今からお前のマネージャーになる。ダンスを教えてやる」とコーチを買ってでる。それもまた夢の実現だとわりきった若者らしさ。これこそアメリカン・ドリームではないか。