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シネマ365日

2012年11月20日

カンパニー・メン(2010年 社会派映画)

監督 ジョン・ウェルズ

出演 ベン・アフレック/トミー・リー・ジョーンズ/ケビン・コスナー/クリス・クーパー/ローズマリー・デウィット

自分で稼げよな 

この世の春を謳歌していたエリート社員が出社した朝、予告もなくリストラをいいわたされる。ときはリーマン・ショック直後のアメリカだ。ドキュメンタリーふうに、解雇通告、身辺整理、退職、帰宅と展開していく手際、いいですね。ジョン・ウェルズは、監督はしていませんが製作総指揮に「美しすぎる母」とか「灰の記憶」があります。繊細な感性だと思います▼映画では厳しい現実がいやというほどあからさまになる。巨大企業GTX社に12年勤務する販売部長ボビーは肩で風を切って出勤していた。愛車はポルシェ。高級住宅街に邸宅を持ち、ゴルフクラブでは人気者。リーマン・ショック後、会社は採算の悪い造船部門を閉鎖し3000人をリストラすることを決めた。ある朝いつもの通り部下に冗談をいいながら機嫌よく出勤したボビーは別室に呼ばれ、解雇通告を受ける。12週間の解雇手当と就職支援センターで自分のデスクが使えるようにしてやる、そこで求職活動をしろという会社の指示だ▼呆然とはするがまだまだボビーは甘い。現実家の妻マギー(ローズマリー・デウィット)は大きな家は要らないから売却しよう、自分はパートに行く、兄ジャック(ケビン・コスナー)が工務店をやっているからそこで働いたらどうか、あれこれ収入の道をめぐらすがボビーは楽観的だ。なにしろエリートである、いやエリートだった。相変わらずポルシェを乗り回しゴルフにいく。でもある日ゴルフ場の会費未払いで会員を削除される。するとなんだ、ボビーは「おれに恥をかかせるのか」と嫁さんに八つ当たりするのである。原因はお前だろ▼会社創業以来、造船一筋で会社に貢献してきた重役・ジーン(トミー・リー・ジョーンズ)はリストラに大反対。人いなくして会社が成り立つか。良識を説くが社長は馬耳東風。新社屋建設のため、決算を黒字にして株価を上げねばならぬと、新たに社員5000人のリストラを人事担当役員に指示する。これにジーンも、彼と同期で溶接工から重役にのしあがった現場の叩き上げフィル(クリス・クーパー)も含まれていた。いっぽうボビーはいよいよ追い込まれた。見栄を張って失業を隠していたが親戚の集まりですっぱ抜かれ、就職先は皆無。中年男の悲哀がにじみ、妻がやさしく励ましてもひねくれちゃって、夜の相手もしない。いやねー▼ポルシェは人手に渡り家も売り、親の実家に移り、嫌っていた義兄の大工仕事をすると決める。ケビン・コスナーがなかなかいいですよ。無口で仕事に厳しいが腕一本で工務店を切り盛りする、大工の棟梁を好演している。不況で受注は少ないが安く請け負ってでも職人たちに仕事を与えようとする。義弟を雇えば人件費がかさむが、そのぶん自分が日曜日に、1人で壁を塗って給料を捻出しようとする。小さな工務店とはいえ、経営者のそんなやりくりに比べたらなんだ、巨大企業のエリートなんて何様のつもりだ。会社から追い出されたら何もできないじゃないか…ひょっとして監督はこの感覚の健全なことがいいたかったのではないか。リストラされて、そりゃアメリカのリストラってこんなにひどいのかと思うし、長年働いてきた仕事を一瞬で奪われ、家族や親戚には白い目で見られ、人生真っ暗になってフィルは自殺してしまう。それも他人事とは思えない。でも会社は放っていても自分の口座に大金を振り込んでくる、それくらい自分の値打ちはすごいのだ、あんな仕事はカッコ悪い、こんな仕事は外聞が悪いといつしか見下すようになったのも、かなりアブナイ精神状態ではない? 大工だろうと掃除屋だろうと自分で稼げよな。旦那が失業してグズグズしておれないと、恥も外聞もなくさっさとパートに出た奥さんのほうがよっぽどえらいだろ▼造船は不況部門かもしれないが、ジーンは身につけた造船業の知識と経験と取引先関係と、ありとあらゆるスキルを動員して打ってでようと、自分で会社を起こす。ボビーもそこで働くことにする。GXTを解雇された社員たちが集まり、閉鎖された造船工場の一画にデスクを運び込みパソコンと電話をひいた。人数は7、8人だ。その会社がうまくいくかどうかわからない。つぶれるかもしれないし全員またばらばらになるかもしれない。ちがっているのはだれもあてにしないで自分たちで稼ぐと骨の髄までわかったことだ。床がぬけそうな殺風景なオフィスに、ポンコツの車で出勤したボビーが、激をとばす大声が生き生きしている。