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シネマ365日

2012年11月22日

メカニック (1972年 アクション映画)

監督 マイケル・ウィナー

出演 チャールズ・ブロンソン/ジャン=マイケル・ヴィンセント

ブロンソンって優雅だ

ファーストシーンがいい。ブロンソンの面貌がスクリーンいっぱいに映し出される。男の顔は履歴書とはこういう顔をいうのだろう。頬に深く刻まれたシワ。どんな人をもあなどらず、たちどころにその人間の本質を感じ取る野生動物のような直感を秘めた双眸。分厚い唇は追従と軽薄な笑いを閉じ込め、なげかける一瞥は鋭いが、無用の警戒を相手にあたえる不用意な猛々しさはない。声はおだやかで低く言葉は手短だ。だからといってゴルゴ13みたいかというと、いやとんでもない。彼はクラシック音楽を愛し、本を読み、閑静な高級住宅地の高台に北欧ふうの居をかまえ、調度品は超デラックスかつ合理的にして広々とした室内で、感覚を解き放つ私的時間を大切にする。ブロンソンはこのとき51歳。髪に一筋、二筋、白いものがまじるが腰は引き締まり胸板は厚く、上半身の筋肉は、シュワちゃんのサイボーグかマンガのごとく隆起した逆三角ではなく、人間のものである繊細さを感じさせる▼監督のマイケル・ウィナーとブロンソンはウマがあうらしく「メカニック」(1972年)「シンジケート」(1973年)「狼よさらば」(1974年)「スーパー・マグナム」(1985年)でいっしょに仕事している。おもしろいのは1972年「スコルピオ」をマイケル・ウィナーが監督していること。ははーん。ピンときましたね。アラン・ドロンとバート・ランカスターが共演した「スコルピオ」は、ヨーロッパの匂いがする殺し屋の映画。それがどうした? ここで3人が結びつきましたでしょ。アラン・ドロンとブロンソンといえば1968年「さらば友よ」で共演し、ブロンソンは男が惚れる男を演じ、人気絶頂のアラン・ドロンさえタジタジとさせた、空前のブレークでした。だからマイケル・ウィナー監督とチャールズ・ブロンソン、アラン・ドロンって犯罪映画のふしぎなご縁で結ばれているのです▼主人公の名前はビショップ(チャールズ・ブロンソン)。職業は殺し屋。組織に属し指令のある人物を消す。彼の手口は巧妙で、警察が不審をもたない事故死や病死にみせかける。事件とすら認知されないので、目をつけられることはない。ビショップは極度の緊張感にしばられた仕事を終えると、気に入った調度に囲まれた優雅な部屋で、年代物のワインを飲み、パイプたばこをふかし、クラシック音楽に耳を傾ける。たまにセスナで大空を飛ぶこともある。身寄りはひとりもいない。恋人も友人もつくらない。屋敷に使用人は住み込ませず、日々体を鍛え、武術をみがく。彼は礼儀正しく師範に仕え、空手の腕は黒帯だ▼彼には持病がある。極度のストレスからくる神経衰弱で、時々目眩が生じる。今まですべて単独で行動してきたが、はじめて右腕になるパートナーを探す。目に止まったのがスティーブ(ジャン=マイケル・ヴィンセント)だ。彼の父はビショップが殺したものだ。スティーブは独り親の父の死後、無為な生活を送っていた。ビショップは自分の素性を明かし、仕事を手伝い、父親と同じ殺し屋になるなら一流の凄腕にしてやると持ちかけた。承知したスティーブはビショップからプロの殺しのテクを身につけメキメキ腕をあげる。しかし組織のつぎの標的はスティーブだった。組織の命令は絶対だ。時期をみはからっていたビショップはあるとき、スティーブが組織から受けた指示書がまぎれもなく自分であることを知る。組織はふたりとも消そうとしていたのだ▼ブロンソンのセリフが形而上学的だ。自分がメカニックでいるのは「自分が世間に飲み込まれないためだ」と言う。動物園をスティーブと歩くシーンでは「メカニックとは、メカニックの人生を味わいきるか、酔い痴れるかだ。よく覚えておけ」とスティーブに言う。殺し屋の人生を味わいきるのも酔い痴れるのもよくわからないけど、なんとなく決まっているのよね、彼が着こなすスーツの、ブルーのワイシャツみたいに。スティーブとの勝負? きくだけ野暮ってものよ。野卑なスティーブがビショップの部屋に入ってうれしそうに「うん、この家がおれのものになった」とみまわすのだけど、全然彼の感性にはふさわしくないのよね。でもスティーブは満足気に外へ出て、車にのったとたん、目の前のメモに気づく…あとはお楽しみです。