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シネマ365日

2012年11月27日

スリーデイズ(2010年 サスペンス映画)

監督 ポール・ハギス

出演 ラッセル・クロウ/エリザベス・ハンクス

監督の凄腕 

いきなりどやどやと踏み込んできた警察が妻を殺人罪で逮捕した、という前後関係のさっぱりわからない「不条理劇」で「スリーデイズ」はスタートする。ポール・ハギス監督は「ミリオンダラー・ベイビー」でアカデミー脚本賞、「クラッシュ」で同作品賞・脚本賞を受賞。「父親たちの星条旗」や「硫黄島からの手紙」などでクリント・イーストウッドと組んだ。「スリーデイズ」はこの2年前に公開された仏映画「すべては彼女のために」のリメークだ。ピッツバーグの教師ジョン(ラッセル・クロウ)は、妻ララ(エリザベス・ハンクス)と息子ルークと、地道で幸福に暮らしている。妻が逮捕されたことで息子は仲間はずれになるが、父親はママのことで愚痴ひとつこぼさない。郡刑務所へこまめに面会に行きララを励まし、息子が元気でいることを伝える。ジョンは妻の無実の証明に奔走するが、弁護士はこの事件に控訴の見込みはないことを匂わす。殺人事件の現場の詳述が最後までスクリーンに出ないこと、ララが自分を犯人だとなぜ思わないのかと夫にたずねること、具体的すぎる証拠が繰り返し示されることなどで「ララ真犯人説」をチラッと観客に思わせるが、それは単なる寄り道。本筋はどこまでもラッセル・クロウの「すべては彼女のために」です。このタイトルよかったのにね▼控訴は棄却。ララは絶望のあまり自殺を図る。身柄は郡刑務所から長期重罪犯を収容する刑務所に移送が決まる。ジョンは妻が移送のため刑務所の建物から出る、そのただ一度のチャンスを狙って脱獄させることを決意する。パスポートを偽造しようとして逆に金だけまきあげられ袋叩きにあうとか、家も家財道具も売り払って金を工面してきたがそれも底がつき銀行強盗まで企むとか、窮地に追い込まれたジョンはとうとう窮鼠猫を噛む。善良な教師が法と権力に闘いを挑むのだ。暴力には暴力を。ごろつき共の巣窟に乗り込んだジョンはやつらを叩きのめして金を奪い返す(奪われた金の何百倍もの現金が、なぜ都合よくバッグにあったのかは首をひねるが)▼ここからの監督は「カジノ・ロワイヤル」「慰めの報酬」で新しいジェームズ・ボンド像をこしらえた凄腕のアクション映画作家に激変します。ラッセル・クロウもウェイトオーバーのところが、アクションなんかと無縁に過ごした田舎の教師という役にピッタリ。ララは自分を奪いに出現した夫の意図を知って驚倒。やめてあなた、そんなことするくらいならわたしは刑務所で平和に暮らすわ、という選択肢がありあり。終身刑にも絶望したが今度は夫の無謀さに絶望して、脱出行の途中、猛スピードの車から飛び降りようとさえするのだ。でもひたすら突っ走る夫の猛進に、行くところまで行くしかないと観念した。腹を決めると女は強いのだ。囚人脱走の緊急手配によって、空、駅、道路、あらゆるルートに厳重態勢がひかれたなかをかいくぐり、ついにジョン一家は空港に到着。出国手続きにジトーと脂汗をうかべる夫に、妻は「わたしに任せて」ニッコリ笑をたたえてやすやすとパスしちゃうじゃないですか▼ジョンがああまでしてやりぬいた脱出と逃亡はなんだったのか。刑事の一人は3年前の殺人現場に立ち戻る。ひょっとしてララは無罪だった…法と権力で構築された社会のシステムとはすべて信じるに足るのか。このシーンは重いですね。ジョンに脱獄指南するプロフェッショナルに、リーアム・ニースンが出ています。ジョンの父親役がブライアン・デネヒー、このとき72歳でした。「ランボー」で執拗にランボーを追い詰める保安官を演じました。監督もやれば脚本も書き、精力的な舞台出演では2度のトニー賞に輝いています。息子が国境を超えようとしている計画を察した父は、さり気なく「元気でな」と声をかける。別れを告げるのは男同士の無言の握手だけ。こういうところ役者も監督も渋かったですね。