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シネマ365日

2012年11月30日

ザ・ファイター(2010年 事実に基づいた映画)

監督 デヴィッド・O・ラッセル

出演 マーク・ウォルベール/クリスチャン・ベール/エイミー・アダムス/メリッサ・レオ

大変だわ、この家族じゃ

実在の世界チャンピオン(WBU)、ミッキー・ウォードの伝記だけど、内容は家族映画だ。ボクシングシーンも迫力あっていいのだけど、主人公ミッキー(マーク・ウォルベール)を取り巻く家族のエゴ味たっぷりの愛情を、コテコテに塗り重ねたことが映画を分厚くした。マサチューセッツ州はローウェルの町。兄はジャンキー(薬物中毒者)、弟は全然芽が出ない場末のボクサー。そこから世界チャンピオンが生まれたのだ。それだけでドラマティックだけど、それに負けないドラマが家族関係にあるのだ▼母親アリス(メリッサ・レオ)は子供9人を産んだウォード家のゴッド・マザー。兄弟2人のほかは姉妹が7人。みな家に居ついたままズラッと並ぶと壮観を通り越して恐怖を覚える面々だ。兄ディッキーはヤク中で前科27犯の典型的なトラブルメーカー。昔はボクサーだった。伝説のチャンピオンをダウンさせたことが唯一の自慢で、飽きもせず繰り返し喋りまくる(ダウンではなくスリップだったとわかるがディッキーは無視)。母が弟のマネージャーで兄がトレーナーだ。地味な性格の弟は母と兄に抑えこまれ、むちゃくちゃ不利な試合でもファイトさせられる。9キロも体重差のある相手と対戦し殺されかけたことがある。父親もいるが完全に家族の権力構造の埒外にいる。つまり母親の尻に敷かれている。こういう家族のなかで金を稼ぐのはミッキーだけなのだ▼無責任で自分勝手な母親と兄の道具にされている次男を、父親は内心かわそうで仕方ない。ディッキーはトレーナーなのにまともに弟の練習の相手もしてやらない。クスリと酒と女と「昔チャンピオンをダウンさせた」お話の毎日。みかねたミッキー贔屓のおじさん警官が、勤務時間外にジムにきてスパーリングの相手をしてやる。彼や父親のツテで、ミッキーに新しいマネージャーが名乗りでた。ベガスで試合をすることと毎日練習できる時間を確保する条件を提示する。兄と母に嫌気がさしていたミッキーは引き受ける。母は、あいつらはお前を食い物にするだけだ、と激怒する。「どっちがや」といいたいミッキー▼ミッキーには恋人もできた。バーで働くシャーリーン(エイミー・アダムス)だ。大学を中退しているというだけで「エラソーにして」といわれる町だ。シャーリーンの出現で母親と兄は分が悪くなる。そこへまたもや兄ディッキーが逮捕。刑務所へ。面会にきた弟は強敵との試合を控えていた。兄は敵の弱点をアドバイスするが弟は信用しない。試合が始まり、兄の予想通り終始優勢に試合を進めてきた相手はとどめの一撃で弟をマットにしずめようとする。弟は意図したのか、していなかったのか兄の教えた作戦通り、ボディに強烈なパンチを叩きこむ。「これは起き上がれないでしょうね」というクラッシュ・パンチの逆転勝利。刑務所でクスリをやめた兄は、出所して弟と再びボクシングを始めようとヤル気満々だが、弟はありがた迷惑だと顔に描いてある。恋人のシャーリーンが「あの家族と組むなら別れる」と宣言した。このままでは収拾がつかないと察した兄貴は、それまでの態度を改め弟の世界チャンピオン実現に打ち込むと約束する。母親も兄だけを偏愛していたことを反省する。父親も母親と敵対せず息子を応援する。それならば、とシャーリーンも別れることを撤回する▼チャンピオン誕生にいたるリングの外での「ザ・ファイト」を、きっちり抑えたから本編が生きたのでしょうね。兄役のクリスチャン・ベールと母役のメリッサ・レオがそれぞれアカデミー賞助演男・女優賞を取りました。ベールの役作りはあちこちで賞賛されたから繰り返しませんが、あの痩せようや頭のハゲ具合は憑依ですね。