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介護のささやき

2012年12月1日

≪書評≫ 犬塚 芳美 著 『破損した脳、感じる心   ~高次脳機能障害のリハビリ家族学~』

島本町民生部福祉保健課
島本町「ふれあいバザール」

まさかの坂も決断して信じて前に進めば奇跡は起こせる!!

 ある日突然、脳疾患を抱えた夫を介護することになった著者の気持ちが、手に取るほどうまく表現されていて、最後まで、自分の立場に置き換え考えさせられながら一気に読み進めることができた。
 著者は、映像ジャーナリストでありながら、京都でブティックを経営。夫は映画やテレビ番組の美術監督。そんなお二人だから、昔の映画のワンシーンに重ね合わせるのもこの夫婦ならではで、文章はとても読みやすかった。重い内容ながら、とにかく明るく愛を感じられるリハビリ本。

 脳って本当に不思議。まだまだ解明されていないこともいっぱいあるという。1+1の答えや右と左の意味が理解できず、右半身麻痺でも、感性は事故以前より素晴らしかった。外出許可をもらい映画館で映画鑑賞した後、映画について語り合えたと言う。
 病院のリハビリに加えて著者の直感で、家族ならではの様々なリハビリを実践している。
 入院中とは思えないほど、毎日車椅子で外に連れ出して歩く練習をしたり、喫茶店に入り勘定の計算を任せたり。日常生活の中、全てをリハビリと捉え、俳句を詠んだり、国旗の塗り絵、数字の早口言葉、般若心経を唱える(言葉の練習)、温熱療法などなど。「きっと治してみせる!」という気迫を感じた。
 「至れり尽くせりの病院の対応では、患者本人の努力や治る力を、そいでいる気がした。これは困る! 夫を治すのは自分だと。全責任は自分で持つ!」と覚悟を決め、いいと思えることはどんどんやってみる!病院に全てを委ねず、主体性を持って取り組む体当たりのリハビリが新鮮だ。
 側に寄り添いしっかりとご主人を観察し、あれがいいんじゃないか?あっ!あの人こんなこと言ってたな!って。病院に言われるままではなく、「私が治してあげる!できなければ、あなたを殺して私も死ぬ!」こんな衝撃的な言葉が何度か出てきたけど、これも理解できるような気がした。ここまでの決断(覚悟)ができたからこそ、奇跡を信じ、しっかりと寄り添うことが出来、次々と、奇跡を起こしたのだろう。

知識は武器だ!ということも教えてくれる本

 著者が振り返るように、確かに周りの人たちにも恵まれていたと感じる。それも、著者の前向きな気持ちが全てをプラスに引き寄せたのではないかと。
 思わずページを読み返してしまうほど日増しにどんどん回復していくご主人の様子に驚いた。急性期(後遺症があるとわかった直後のこと)に素早く出来る限りのことをするか!その対応によっても後々に関わってくる!という情報を著者が持っていたことも、知識が武器になるということを教えてくれる。
 こんなまさかの坂に誰もが会いたくないけれど、もしものときの備えに読んでいるのと、読まないのとでは、結果が大きく違ってくる素晴らしいリハビリ記録本だ。