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特集「ディーバ(大女優)」

2012年12月8日

特集 ディーバ(大女優) ソフィア・ローレン 
リベンジャー(1979年 アクション映画)

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監督 マイケル・ウィナー

出演 ソフィア・ローレン/ジェームズ・コバーン

いまいちね。

一言でいえばソフィア・ローレンのガラじゃない映画なのね、これ。だからってボロをだす女優でないことはもちろんだけど。彼女がシリアスな映画とコメディの両方に強いのは、真面目なユーモアというか、包容力というか、肝っ玉というか、そういうものがシリアスをシリアスだけにさせない、コメディをコメディだけにさせない相乗効果として働くのよね。こまかいことをいうようだけど、この映画じゃローレンは銃の扱いもさまになっていないし(メカに弱いのかもしれない)興ざめのところがあるのよ。1979年といえば「エイリアン」が大ヒットしてシガニー・ウィバーがアクション女優として映画ファンを刮目させた年ですが、それでも女優のアクションとはいまと比べ物にならないほどマイノリティだった。「エイリアン2」でジェームズ・キャメロンという「強い女大好き」監督によって、シガニー・ウィバーはアカデミー主演女優賞候補となった。アカデミー賞とはノミネートされるだけで市場価値が認められる威力を持っていますから、映画史上初のアクション女優の誕生は以後の映画製作と女優の在り方に決定的な影響を与えた。そういう新時代をソフィア・ローレンが知らないはずはなかったが、われ関せず。下手なアクションをものともせず挑んだが失敗作を本作のみにとどめたのはさすがに賢明です▼本作でローレンは「謎の女」役という位置づけなのだけど、ひとつもミステリアスではない。ジェームズ・コバーンが大きな歯を剥いて笑うのは馬みたいだ。O・J・シンプソンは…ご記憶でしょうか。「燃えよドラゴン」に出演した、勝ち抜き空手試合でいいところまで行くが、主催者の悪漢に殺されてしまう黒人の格闘技家。ローレンとは「カサンドラ・クロス」でも共演した▼ローレンは医学界の権威タスカ博士の妻アデルです。目の前で夫が爆薬で即死するのを見たアデルは、夫が麻薬の実害を告発したために麻薬組織によって殺されたと察知、復讐を誓う。彼女は巨大麻薬組織のボスの逮捕をFBIに要請するが、そんな大仕事ができるのは賞金稼ぎのジェリー(ジェームス・コバーン)だけだというのだ、天下のFBIが、だよ。このへんからすでに調子がおかしくなっている。麻薬組織のボスは心臓がわるくて絶えず侍医を連れ歩き、専門の薬を片時も手放せず、表の席に出たことはないそうだ。そんな重症患者がニューヨーク、マイアミ、ワシントン、カプリと転々と活劇の舞台を変えられるのかよ▼ジェリーは引退していまはガーデニングをやっている。会話から察するに引退したのは十数年前だろう。彼はものすごく律儀な男で、むかし命を助けてくれて男への恩返しにこの仕事、つまり麻薬組織のボスを生きたままFBIの手に渡す仕事を引き受けるというのだ。100万ドルで。1億円のギャラなら恩返しでなくてもOKするだろうね。それに大した必然性もなく、ジェリーにそっくりな双子みたいな男が現れて敵に煙幕を張るのは都合よすぎるし、あの長い顔を二人分見てだれか喜ぶのだろうか▼悪女というのもローレンには似合いそうで似合わない。彼女の持ち味は大らかで意思の強い、あったかくて情のある大地のような母親だ。地中海の青い空と海を見て育ち困難を受け止め、思い込んだら全力でぶつかっていく。ローレンは父なき児として貧困のなかで育った。自らも書いている。「自分の人生を、年をとることに費やしたと思うことがあります。わたしには子供でいるときがなかった。早く老成して物事がわかるようになり、一生懸命働いたということです。貧しい生まれで父もない生活で、わたしは母に対しては夫で、妹に対しては父でした。いわせてもらえば私には子供でいるというチャンスがなかったのです」(「ウーマン&ビューティ」近代映画社 林冬子訳)。家庭を、夫を、子供を、家族をこよなく大事にしたローレンは、その延長線上の悲喜劇を演じることは自家薬籠中であっても、家族や家庭を破壊する裏切りや背徳や、あるいは犯罪には基本的にノリが悪かったと思う▼しかるに、である。本作のヒロインは「富とパワーのある男性が好き」といって医学者の夫がいながら麻薬組織のボスの情婦になる、それでいて昔の恋人ジェリーとヨリを戻して二股かける、ボスが逮捕されジェリーが去ったら、華麗な社交界にカムバック、大富豪にすりよるという、謎の女というより根なし草のような女を演じるのだ。びっくりしたのはラストシーン、ヒロインがつぎなるターゲットとしてアプローチする大富豪がだれあろう、ヴィクター・マチュアだ。「サムソンとデリラ」「聖衣」など大型歴史映画に出演したが、それよりも映画ファンにとって忘れられないのは「荒野の決闘」のドク・ホリデイだろう。ジョン・フォードの西部劇で「駅馬車」にならぶ傑作。飲んだくれの医師を演じたマチュアは当時33歳。男の陰影をくっきりにじませていた彼は66歳になっていました。

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