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特集「ディーバ(大女優)」

2012年12月9日

特集 ディーバ(大女優) ソフィア・ローレン 
プレタポルテ(1994年 群像劇映画)

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監督 ロバート・アルトマン

出演 ソフィア・ローレン/マルチェロ・マストロヤンニ

バラ色の人生 

アルトマン得意の群像劇ですが、着地点がいまいち弱いのだ。実際のパリコレ会場が撮影されているし、ゴルチェ、ソニア・リキエル、三宅一生ら錚々たるデザイナーが登場し、ナオミ・キャンベルとかのスーパーモデル、と思えばハリー・ベラフォンテとかシェールとか、ビョーク、デヴィッド・カッパーフィールドがカメオ出演する。目もくらむばかりなのだけど▼時代の先端をいくのは我こそ、というファッション誌の編集長、デザイナー、記者、カメラマン、レポーター、キティ(キム・ベイシンガー)の取材合戦が繰り広げられているいっぽう、帰国間際にいきなりパリコレの取材を命じられたスポーツ記者ジョー(ティム・ロビンス)と、かけだし女性レポーター、アン(ジュリア・ロバーツ)の「ひょうたんから駒」式恋愛、経営難に陥ったファッション界の重鎮シモーヌ(アヌーク・エーメ)が、知らない間に息子の手によって自分のデザイナーズハウスを売りに出されていた裏切り、42年ぶりの元夫セルゲイ(マルチェロ・マストロヤンニ)との再会にもかかわらず、愛の再出発などに洟もひっかけない富豪の未亡人イザベル(ソフィア・ローレン)、有名写真家との独占契約のためライバル誌を出し抜こうとする女編集長たち、ゲイのデザイナー、ビアンコ(フォレスト・ウィテカー)にテキサスのブーツ王らのエピソードが織り込まれる。確かに豪華で圧巻、殺人事件というけっこうなヤマ場までありながら、なぜか凡々と上映時間はすぎゆく…。恋人に死なれ事業も失ったシモーヌの新作発表が意表をついた衝撃のラストだが、そこにいくまでがタルイのだ。ラストを締めくくるもうけ役はだれあろう、マストロヤンニとカトリーヌ・ドヌーブの一人娘キアヌ・マストロヤンニだ。父親そっくりだよ。アメリカ人スポーツ記者とレポーターがホテルの一室にとじこもってセックス三昧、パリコレが終わったところで名残惜しいけどバイバイなんて、この映画になんか意味と価値を付加しているの? マストロヤンニも太りすぎて精彩がない。これじゃ「二人の夫、ふたつの骸(むくろ)」とソフィア・ローレンに書かれて置いてきぼりされても仕方ないな。群像劇の鮮やかさというか、各エピソードの「あっ」といわせる交錯点、そんな群像劇でしか味わえない華麗なスクランブルとでもいうべき盛り上がりがないわ。興行収入1130万ドル。豪華な出演者たちのギャラも払えなかったのではないでしょうか。感動するのが非常に難しい映画でした▼ストーリーは凝っているのだ。モスクワのブティックで趣味の悪いネクタイを二本買ったセルゲイはパリに出発、一本をプレタ協会会長のオリビエに「これをつけてパリコレの日に来て欲しい」というメモをつけて送る。オリビエがそのネクタイをしてド・ゴール空港にきて、同じネクタイをしたセルゲイに会う。くわしい話は車の中で、とリムジンに乗り込むがオリビエは昼食のサンドイッチをのどにつまらせ窒息死。運転手が渋滞の様子を調べに行ったのをさいわい、セルゲイは車から逃走しようとするが、戻ってきた運転手はセルゲイが殺したものと勘違いし警察に通報する▼ペットのコンテストにきていたイザベルは夫の死を知らされるが(まあよかった、あんな大嫌いな男)と眉も動かさない。セルゲイはファシストから共産主義者に転向しソ連に渡ったものの、もう一度イザベルとやり直そうとパリにきたのだ。パリコレの会場でセルゲイだとわかったイザベルはショックで卒倒、セルゲイはやっと気のついたイザベルをつけまわし、ホテルの一室に落ち着いた二人はつもる胸のなかを打ち明けあう。その気になったイザベルがブラジャーもストッキングも脱いでいくのだが、ローレンはこのとき60歳である。ぜんぜん崩れていませんのです、体型が(だから脱いだのだろうけど)。美について一家言も二家言もある彼女は分厚い本を著し、美とは結局のところ精神の、心の、愛の美しさであり生き方だというが、このプロポーションを維持するには「心の在り方」だけで済んだはずがない。それはともかくナイスバディのローレンがゆっくり脱いでいき、最後のものをポイ、マストロヤンニの顔に投げるのだが、彼はもう高いびき。情熱のもっていきどころがないローレンは、備え付けのホテルのカードに「二人の夫、ふたつの骸」と書いてニヤリ。静かに去る姿が「ハイこれまでよ」を告げている▼さて天下のパリコレもついに最終、トリはシモーヌのデザインハウスである。どんな新作か。固唾をのむ会場に現れたのはオールヌードのモデル、モデル。つぎつぎポーズをとるのはみな一糸まどわぬヌードの大行進なのだ。身重のモデルまでが大きなお腹で闊歩する。レポーターのキティは「シモーヌが提唱するニュールックは…あー、どこまでテレビで紹介できるかわかりませんが、男女を問わずだれでも楽しめる、名付けてヌード・ルック。シモーヌ、万歳」裸で練り歩くファッションショーにそれ以上いうことがなくなりさっさと退場、キティの後ろをちょこちょこついてまわっていた助手のソフィ(キアヌ・マストロヤンニ)が事態収拾のため急遽マイクをにぎり「バレンシアはこう言って1968年にメゾンを閉めました。ドレスを着る種族は消えた。シモーヌも同じ意見です。これはファッションへのアンチテーゼです。このメッセージはつぎの10年の礎石となり、未来のデザイナーに影響を与えるでしょう。シモーヌは全世界の女性にこう語りかけます。いちばん大切なのは何を着るかではなく、服をどう着るかだ」堂々番組をクローズするのである。まるでキアヌの一人勝ちだ。エンディングに流れるのは「バラ色の人生」バラ色? いろいろあるけど、ま、だれでもみな人生何とかやっていくのさ、生きること自体けっこうバラ色なのだよ、がアルトマン流の賛歌なのです。

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