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シネマ365日

2012年12月12日

ジャンボ墜落 ザ・サバイバー(1981年 ホラー映画)

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監督 デビッド・ヘミングス

出演 ロバート・パウエル/ジェニー・アガター/ジョセフ・コットン

復讐するは我にあり 

日本で劇場公開されなかったものの、この映画から17年後、M・ナイト・シャラマン監督「シックス・センス」の元ネタになった作品ということでカルト的支持を得、DVD化が待ち望まれていた、そんないわくつきの映画だ。「シックス・センス」と言ってしまえばネタバレ同様だね。でも「ジャンボ墜落ザ・サバイバー」は、もっとシンプルで素朴な映画だ。ホラー映画とは題したけど、ホラーにありがちな死体ぞろぞろ、ゾンビの隊列とかいうコケおどしのシーンはない。マンガ的おどろおどろしさがない。どっちかというとオーソドックスなストーリー・テラーという語り口が、かえってしみじみとした余韻さえ残しています▼ジャンボ機が離陸してまもなく大爆発を起こす。乗客乗員300人は全滅。飛行機はガソリン満タンで墜落したものだから大炎上し、現場は遺体とバラバラになった機体の、みわけもつかないほど惨状を呈した。テレビレポーターが実況するさなか、集められた遺体を前に無神経に写真に撮ってまわる男がいた。まだ炎をあげる機体からひとりの影が出てきた。ケラー機長(ロバート・パウエル)だった。救急車で病院に運び込まれた機長には、奇跡のようにかすり傷ひとつなかった。このあたりもシャラマンの「アンブレイカブル」と同じですね▼遺体を撮影した男は自宅の暗室で現像している。フィルムにはやけただれた少女が写っていた。外にでると窓の外にその少女がこっちをみている。驚いた男は少女を追いかけ、列車にも気づかず轢死する。これが最初の犠牲者だ。つぎは彼の妻かガールフレンドだろうが、同じく写真を現像している。変な物音がきこえ、いぶかしんでいると家中がガタガタ鳴り(ポルター・ガイストか)電気が消え、あたりを手さぐりしていた女の手の上に裁断機が落ちる。たちまち一面血の海だ▼もちろんこれは犠牲者たちの怨みなのだという映画の設定である。犠牲者はまだまだ生じる。健康のただなか、幸福のただなか、家族との暮らしを一瞬で奪われた犠牲者たちの霊は鎮魂するどころではないのだ。ケラー機長とは彼らの代表として、復讐のためもう一度生前の姿を与えられ、任務遂行のためこの世にもどったのだ。ケラーは記憶喪失になっているから事故の前後が思い出せない。そこへ女霊媒師ホッブス(ジェニー・アガター)が近づき、ケラーの使命を伝える。ケラーは最初ホッブスを信用していなかったが、なにかに導かれるように、事故原因究明の行動をともにする。真犯人は意外なところにいた。彼はトランクを機内で爆発させたものの、ケラーの機敏な判断と操縦によって、墜落は民家密集地を免れたのだ。犯人は墜落機体を背に爆死する。翌日現場検証を続ける捜査班の一員が叫ぶ「操縦席にだれかいる。死後3日はたっている」それは黒焦げになったケラーだった▼ホッブスは明るい緑の野原で「だるまさん転んだ」をして遊ぶ女の子たちを見ている。事件は終着した。ケラーは重責をまっとうし成仏したのだと思った。300人の魂も無念の思いは晴れたにちがいない…そんな彼女の情感が青空と白い雲に託されたような、きれいな映像である。配役もB級とは思えない贅沢さだ。ロバート・パウエルはケン・ラッセル監督(「恋する女たち」)の「マーラー」や、リリアーナ・カバーニ監督(「愛の嵐」)の「ルー・サロメ 善悪の彼岸」ではサロメに求婚する哲学者を、フランコ・ゼフィレッリ監督(「永遠のマリア・カラス」)の「ナザレのイエス」ではなんとジーザスを演じた。クリント・イーストウッドを細くしたようなシャープな容貌だ。ジェニー・アガターは英国アカデミー主演女優賞やエミー賞女優。もうひとり神父役のジョセフ・コットンは「第三の男」から半世紀以上に及ぶ映画人生で本作が遺作となった。霊の世界に足を踏み入れた不思議な雰囲気のある映画でした。

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