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シネマ365日

2012年12月13日

ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー(1981年 クライム・アクション映画)

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監督 マイケル・マン

出演 ジェームズ・カーン/チューズデイ・ウェルド

男の〈仕舞い〉と出撃

感慨深いものがふたつある。ひとつはこの映画がマイケル・マンの初監督作品だということ。彼は20代の終わりから30代にかけイギリスでテレビ局のドキュメントやコマーシャルを手がけた。1960年代のことだ。そのときの友人たちに「エイリアン」のリドリー・スコットや「ミッドナイト・エキスプレス」「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」のアラン・パーカーがいた。この顔ぶれでは、さぞ触発と刺激のあったことだろう。マイケル・マンの代表作に「ラスト・オブ・モヒカン」「ヒート」「コラテラル」などがすぐあがるが「ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー」にはすでに彼の手法がわかりやすく現れている。オープニングは雨のシカゴ。裏町から仰角で見る古い階段が集まり、尖塔のように空を裂いている。スタイリッシュな映像にタンジェリン・ドリームの演奏するシンセサイザーが無機質に、そのくせやるせなく、不安と焦燥を煽る。マイケル・マンの詩情ある映像は街をとらえる視覚に発揮される。思えば後年、犯罪都市ロスアンジェルスの夜明けを、彼は「コラテラル」のもうひとりの主役にしてしまったのだ▼ジェームズ・カーンは本作のとき42歳だった。「ゴッドファーザー」の長男ソニーが33歳。余りに当たり役だったためイメージから脱却するのに苦労したというが「ザ・クラッカー」をみればそんな痕跡はどこにもない。まるで別人だ。彼の体格の特徴である広い肩幅は相変わらずがっしりと、腰はひきしまった逆三角形。口元や頬のしわが渋い。脚本もマイケル・マンである。主人公フランク(ジェームズ・カーン)は中古車販売の親父。11年服役し4年前出所した。裏の仕事は金庫破りだ。そろそろ引退を考えている。好きな女ができて、毎日朝ごはんを食べにその食堂に行く。彼女の名はジェシー(チューズデイ・ウェルド)。デートの約束に2時間待たされ、ジェシーはもうつきあわないと宣言する。フランクは言う「なんのために毎日8時に朝飯を食いに行ったと思っているのだ。おれは一直線な男だ。思ったことは曲げない。バカなことはしない。ガタガタ言わずオレと恋を始めよう。刑務所で襲われ相手をぶっ飛ばした、殺されてもおかしくない場面だった。で、相手をぶっ飛ばしてなにも起こらなかった。なにもかも〈構わん〉と思ったからだ。その日以来おれは生きている。だれもおれの夢を止められない。ふたりでならなにかできることがあるだろう」ジェシーは独断的にはちがいないが、どこか心が練れているフランクに「任せよう」という気持ちになる。フランクには忠実な仲間、バリーとグロスマンがいて、仕事は堅実(金庫破りのほう)、18万ドルの仕事を最後に、足を洗うはずだった。ジェシーが子供を産めないと聞いたフランクは養子をもらいにいく。新しい家を買い家族がふえ、夫婦は幸福だった。「なにを見ているの」とジェシーが聞く。「君だよ」とフランク。こういうシーンがドンパチだけに終始する監督に真似のできないマイケル・マンの叙情なのである▼最後は悪の元締めとの対決である。そこにいたるフランクの男の〈仕舞い〉と出撃がいい。バリーは殺された。フランクは妻子をグロスマンに託し「今からここを出ろ。荷物は持つな。41万ドルある。グロスマンに2万ドルやれ。行先はやつと決めろ」女を守るためとはいえ、思い出しません? 非情ともいえる別れ方が「ヒート」にもありましたよね。だれもいなくなった自宅を爆破し、自社の中古車展示場を炎上させ火炎に包む。フランクは再びなにもかも「構わん」という気になってすべてを「ぶっ飛ばした」のである。そして単身悪の元締めの邸宅に侵入する。11年も刑務所に入っていた中古車屋の親父にしては、銃を持つのが様になりすぎているのがちょっと奇妙だけど、まあいいか。で、敵方を全員葬り自分も傷を負ったフランクは、夜のとばりのなかに消えていく。もちろんグロスマンから連絡が入ると思うけど。そういうほのかな希望をもたせるところがいいのです。

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