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シネマ365日

2012年12月19日

愛と死の間で(1991年 ミステリー映画)

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監督 ケネス・ブラナー

出演 ケネス・ブラナー/エマ・トンプソン/アンディ・ガルシア

なかなかのミステリー

前世とか生まれ変わりとか、いわゆる輪廻転生思想にあるミステリアスなものが、映画や小説、コミックなど多岐にわたる分野で傑作を生んでいる。小説では三島由紀夫の「豊穣の海」、タイトルもずばり「魔界転生」(山田風太郎)「幻魔大戦」(平井和正)「高丘親王航海記」(澁澤龍彦)。鈴木光司の「楽園」もそうか。伝奇小説というジャンルで傑出するのはボルヘス。彼はアルゼンチンの作家だけど、輪廻転生が仏教思想にとどまらず、創作の核として世界各地の作家に刺激を与えてきたことがよくわかる。コミックでは手塚治虫の「火の鳥」「キャプテンKen」。映画ではジャッキー・チェンの「THE MYTH/神話」。10歳の男の子が夫の生まれ変わりだと言いだし、驚愕するニコール・キッドマンの「記憶の棘」。新しいところでは「セブン」のデビッド・フィンチャー監督がマックス・エーリッヒの小説「リーインカーネーション」の再映画化を進めている▼輪廻転生って考えてみればいいネタだよね。だれも証拠だ文献だとやかましく言える義理はない。だから書きやすいというのではなく、人間はことほどさように「幻」とか「幻想」とか「霊」とか、証明できないけど、目にはみえないけど確信できるなにか、を信頼しているのですね。これが犯罪に利用されたら怖い。「愛と死の間」は厳密にいうと「生まれ変わり」を上手に使った異常者の犯罪映画ですが、そこにケネス・ブラナーがサスペンスとロマンスを織り込み、40年の時間軸を往来させ緊迫を盛り上げていく、いいミステリーに仕上げました。本作はブラナーの監督ハリウッド・デビュー作です。共演のエマ・トンプソンはケンブリッジ大学在学中に学生劇団をたちあげ、卒業後ブラナーが率いる劇団「ルネッサンス・シアター・カンパニー」に参加、ブラナーと結婚し、1993年「ハワーズ・エンド」でアカデミー主演女優賞、1995年には「いつか晴れた日に」で同脚色賞を受賞、なんでかわかりませんが離婚に至りました。ともかく「愛と死の間で」はふたりがまだ夫婦だったときで、ラブラブの雰囲気がよくでています▼ときは1949年、高名な作曲家ローマン・ストラウス(ケネス・ブラナー)は妻マーガレット(エマ・トンプソン)殺害の罪で死刑を宣告され、執行の日を迎えた。ローマンは事件を追跡していた新聞記者グレイ(アンディ・ガルシア)を呼び「妻を愛していた。永遠に愛し続ける」と告げる。40年後修道院に保護されていた記憶喪失の女性(エマ2役)は、いつも見る悪夢にうなされ飛び起きる。修道院の院長は女性の身元調査を、私立探偵マイク(ブレナー2役)に頼む。ブレナーは新聞にこの女性に心当たりの人は連絡してくれと広告する。マドソンと名乗る骨董屋が現れ、催眠療法によって同じ症状の人を助けた経験があるから手伝いたいと申し出る。彼の催眠術が彼女から引き出した過去は前世の自分であり、指揮者として活躍していたローマンと出会ったマーガレットだった。彼らは幸福な結婚をした。そこへ新聞記者のグレイが近づき、ローマンは妻とグレイの間に嫉妬し、不信を募らせていく▼ローマンの屋敷には住み込みの家政婦とその息子がいた。家政婦はローマンを愛していた。ローマンとマーガレットの幸せそうな暮らしに辛い思いをしながらも耐えていたが、息子はそんな母が可哀想でならなかった。40年後の現代、何度か催眠療法に通ううち、催眠はだんだん深く潜在意識に侵入し、意識の底に沈んでいた光景が詳らかに絵解きされていった。しかし何か決め手を欠いていると感じたマイクは、新聞記者の友人(ウェイン・ナイト)から事件の鍵を握るグレイが介護施設で生存していることをききだす▼そこから映画はアップテンポで急展開。マイクが施設を尋ねるとンまあ、このとき35歳のアンディ・ガルシアが腰を抜かすような老け役で登場するではありませんか。ガルシアは前年「ゴッドファーザー パート」でドン相続の若手トップを演じたばかり。彼が事件の真相解明の重要人物を教えます。それはローマンでもなかった、マーガレットでもなかった、40年の歳月でもその狂気を鎮めることのできなかったただひとりの人物。出演者が少ないのに最後まで練度の高いミステリーに仕上げたのはやっぱり監督の腕と役者です。主演ふたりのほか催眠術師マドソンを演じたデレク・ジャコビは、エマと同じくケンブリッジ大学出身、最近では「英国王のスピーチ」で大司教を演じ健在を示しました。

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