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特集「ディーバ(大女優)」

2013年1月7日

特集「ディーバ(大女優)」 カトリーヌ・ドヌーブ 
ヴァンドーム広場(1998年 サスペンス映画)

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監督 ニコル・ガルシア

出演 カトリーヌ・ドヌーブ/エマニエル・セリア/ジャック・デュトロン/ベルナール・ブレッソン/ジャン・ピエール・バコリ

ドヌーブの「惨めな女」 

カトリーヌ・ドヌーブがスクリーンに現れるまでちょっと間がもちにくいというか、冗長なところはあったのですが見終わるとマアマアでした。ニコル・ガルシアは女性監督。これが初長編映画です。2時間足らずの尺だから長いというわけでもないのだけど、そのわりに登場人物が多すぎてプロセスが整理しにくいためソンしたきらいがあります。わかりやすくレジュメするとこうなります▼男にだまされ棄てられ、酒に溺れアルコール依存症になって療養所を出たり入ったりしているヒロイン、マリアンヌにカトリーヌ・ドヌーブ。その夫ヴァンサンにベルナール・ブレッソン。マリアンヌを棄てた男バティステリにジャック・デュトロン。夫の愛人かつバティステリの愛人ナタリーにエマニエル・セニエ。これだけでも室内劇ができそうなのにまだ一人、資格喪失した元弁護士で、今はうらぶれた差し押さえ屋ジャンにジャン・ピエール・バコリ。ドヌーブの夫はパリのヴァンドーム広場に店をだす名門宝石店「マルベール」の社長。かつてドヌーブは一流の宝石ディーラーだったが、恋人のたのみ(この男がバティステリだ)を聞き入れ、あるホテルでの取引に行った。取引相手は現れず代わりに私服刑事が踏み込んできてドヌーブは逮捕。バティステリは盗品の宝石を売りさばくつもりだったのだ。バティステリはドヌーブを見捨て逃走。宝石の持ち主ヴァンサン(つまり今の夫)はドヌーブの美しさにまいって告訴せず、結婚した。ドヌーブは業界から追放、心の傷はいえず以後18年間酒浸りだ▼ドヌーブが崩れた女をやる。髪はボサボサ、よれよれのブラウスを着てよろめきながら階段を上がる、そういうシーンから登場する。療養所から外出許可がでた日は夫のいるアパートに帰る。その夜は業界取引先の接待がありドヌーブは同席しなければならない。注意してワインに手を出さなかったドヌーブだが、何気ないディーラーのうわさ話で過去の古傷がよみがえり、耐えられず席をはずす。パーティーが始まったがドヌーブの姿がない。さがしまわった夫は台所のとなりみたいな別室で、テーブルに一人すわり下げられたグラスの残り酒をかきあつめて飲んでいる妻を見つける。矢継ぎ早にグラスをあおり「げふッ」とゲップを出す。同じようなことリズもやっていましたけどね「秘密の儀式」で。リズが満腹の腹をなで思い切り「ゲップ」とやるのはどこか陽気でしたけど、ドヌーブが目をすえて「げふッ」とやると凄愴ですね。ヨーロッパ映画の基調はやはり「陰」ですね。このシーンのドヌーブにも子々孫々受け継いだヨーロッパ人の厭世観みたいなものがみなぎっています▼夫が自殺した。夫は最高級のダイヤ(原石)を隠していた。「マルベール」は資金難のため売却されようとしている。ドヌーブは夫が残した石を売却し自殺の理由を明らかにするため現場復帰する。とびきり一級品にもかかわらずだれもそのダイヤを買おうとしない。これはどこから来てなぜ夫の手に入ったのか。謎解きのためドヌーブがカッコよく一流ディーラーを演じれば、それなりのいいミステリーになったであろうが、どっこい本作はハリウッド仕様ではない。男とダイヤのトラブルでストレスまみれ、鬱屈が高じて「フン」とか「ケッ」とか、かなり品の悪い言葉を平気で言い、二度も三度も禁酒を破り酒に逃避してガブ飲みする、自分でも自分がみじめに思えて仕方ない、ニコル監督はそんな弱くてだらしない女にドヌーブを仕立てました▼ジャン・ピエール・バクリはハゲの後頭部。後退している額。ふらふらの背広、ユルユルのネクタイ。女には逃げられ金はない。ドヌーブをみかけ「きれいな人だな」と思い初対面でコーヒーをすすめる。ドヌーブも「みてくれ」は冴えない男だけど、どことなく繊細で配慮のある男であることがわかってくる。二人は深い仲になる。こう言っては何だが、ハンサムぞろいのドヌーブの歴代の相手役のうちでは非常にユニークな俳優さんでした。ユニークといえば裏切り男の元恋人バティステリ。20年ぶりに男と再会したドヌーブはじっと彼をみつめ「髪を染めているの?」と初見で聞く。ふつう人がいやがることを無神経に聞かせるところに、女性監督の復讐メラメラのいじわるな刃が一閃しています。バティステリはちょっとひるむがネチネチと「あのときはああするしかなかった、君が僕の立場でも同じことをしただろう。ああ疲れた」勝手なことをどしどし言います。たいていの女性観客は思うでしょうね。なんでこんな男を20年も忘れられなかったのか、酒に溺れる男かよ、こいつが。ばかくさ…というちょっとした難はあるものの、ドヌーブの落ちこぼれ女の立ち直るプロセスが、きれい過ぎないところがよかったです。

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