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特集「ディーバ(大女優)」

2013年1月12日

特集「ディーバ(大女優)」 カトリーヌ・ドヌーブ 
輝ける女たち(2006年 ヒューマン映画)

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監督 ティエリー・クリファ

出演 エマニュエル・ベアール・カトリーヌ・ドヌーブ

ショウはやめるわけにいかない 

2007年3月六本木ヒルズで開かれたフランス映画祭のオープニング映画だ。フランスを代表する俳優たちが、登場人物たちの悲哀、出会いと別離、愛憎と再出発をエスプリあふれるしっとりした情感で演じて好評だった。血縁関係が複雑なので最初だれがだれの子か妻か、夫か愛人かわかりにくいがそれもしまいに気にならず、すべてひっくるめて「人生そんなモンだ。まあ前向いてやっていこう」という姿勢が、劇中何度かユーモラスに使われる「ショウ・マスト・ゴウ・オン」(ショウはおりるわけにいかない)「サメは泳ぐのをやめたら死ぬ」といったセリフに現れる。それぞれの役者たちの味わいがとてもいい▼南仏ニース。首都パリにはない海と光にあふれた地方都市だ。そこに昔ながらの小さなキャバレー「青いオウム」がある。この舞台設定がそもそも監督の手作り感を強調する。キャバレーのオーナー、ガブリエルが突然死した。遺言が公開され店は孫の会計士のニノ(ミヒャエル・コーエン)と雑誌編集長のマリアンヌ(ジェラルディン・ペラス)に譲るとあった。ガブリエルを父のように慕い「青いオウム」で長年マジック・ショーをやってきたニッキー(ジェラール・ランヴァン)ではなく彼の息子と娘に、ということだ。店になんの思い入れもない彼らは赤字の経営難だから売り飛ばすと結論する▼ガブリエルの死をきっかけに一堂に会したのはニッキーの元妻のアリス(カトリーヌ・ドヌーブ)と、今は酒屋を営んで平穏に暮らしているシモーヌ(ミュウ・ミュウ)。ニノはアリスの息子。ゲイである。マリアンヌはシモーヌの娘で離婚申請中。ロシアから養子を迎えるつもりだ。プレーボーイのニッキーはかつて有名だったものの今は老残をさらし、息子に「ぼくの最大の努力はあなたに似ないことだった」などと言われながら「青いオウム」の歌姫レア(エマニエル・ベアール)を口説きにかかっている。売却すると決めた店内を隅々まで調べたニノとマリアンヌは秘密の部屋をみつけた。そこはハーレムか娼館か、いちばん大きな額に美々しく描かれているのはアリスではないか。「ぼくの父親は客の一人か」とききただすニノに「ニッキーよ。残念だけど」▼アリスとシモーヌはいわば昔の恋敵。アリスは傲慢が服を着て歩いているような女。口から嫌味と皮肉を連発するがシモーヌとていつまでも世間知らずの娘ではない。アリスに対抗し応酬しているうちに、女ふたりはすっかり気があってしまう。酒をくみかわしているところにニッキーがやってきた「あなたの可愛いミルドレッド」とアリスが元夫に話しかける。「そうだ。従順で賢くて、おれのいうことをなんでもきいた」「あの子はどうしたの」とシモーヌ。「いなくなった。いきなり姿を消したのだ」それをきいた女ふたりは声をそろえ「わたしたちが食べちゃった」(ミルドレッドは手品で使うウサギの名前)。奮然と去るニッキーの後ろ姿に「冗談も通じないわ」と顔を見合わせニヤリ▼哀歓をにじませ吹き替えなしで歌うベアールがいい。若き日の飛ぶ鳥落とすマジシャンだったニッキーが、行きずりに抱いた少女が成長し歌姫レアとなっていることにニッキーは気がつかない。なぜ黙っていたというニッキーに「憧れていたあなたに口説かれたかったから」とレアは言う。フランスの地方からショー・ビジネスのメッカ、ニューヨークに羽ばたこうとするレアはニッキーにいっしょに行こうと言う。しかしニッキーは英語がしゃべれないとか何とか理由をつけ「青いオウム」を離れられない。空港に向かうレアが「飛行機の隣の席をとってあるわ」「片付けることがあるから後から行く」と先に行かせる。いい年になっても父親代わりだったガブリエルの亡霊に、いちいち相談して自殺さえしそこなうようなニッキーに、アメリカへ行く度胸はあるのか。ニノは若い男とセックスに夢中。幸福そうな息子をアリスは「ま、あいつが機嫌いいならいいか」おおらかに見る。マリアンヌは離婚が成立しロシアで養子をもらって帰国。シモーヌは「おばあちゃん」になった。ガブリエルの死によって思いがけず巡りあった関係者たち。ニノとマリアンヌは「青いオウム」が紡いできた喜怒哀楽を軸に、そこで生きた人々の人生の重さに気づく。ふたりは店の存続を決めた。ノスタルジーあふれる田舎のキャバレーの楽屋。多少のトラブルにびくともしない辣腕の女マネージャー、入れ替わりたちかわり舞台にあがる裸の踊り子たち。そこにはおおげさな許しあいや歯の浮くような励ましはないが、どんな生き方もあるのが人生だ、サメは泳ぐのをやめたら死ぬし、ショーは途中で降りてはいけない。そう信じて前を向く彼らがほのぼのとしている。この映画の共演が縁でエマニエル・ベアールとミヒャエル・コーエンは結婚した。明るい話題だった。

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