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特集「われらのダイナソー」

2013年1月15日

特集 「われらのダイナソー」 ウォーキングwithダイナソー 驚異の恐竜王国 (1999年 ドキュメンタリー映画)

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恐竜へ愛をこめて

 恐竜とは2億2200万年前地球上に現れ、1億55500万年にわたり地上と海と空に君臨した巨大生物です。彼らは6500万年前ユカタン半島に激突した隕石による気象と環境の激変によって、地球上の生物の65%が死滅したときと同じくして絶滅したとされる。される、というのは鳥類の恐竜進化説によって恐竜の絶滅論はくつがえされようとしているからです。体重7トンの肉食暴君竜ティラノサウルスは、現代の鳥の親戚だという説を本作は取っています。全編6つのエピソードからなり、各編に主役級の恐竜がいて、他の恐竜や古代生物や、その時代の自然環境がわずかな手掛かりをもとに再現されています。潤沢な予算と製作期間、古代生物学者や考古学者の協力をもとに復元された骨格、アニメ製作者たちとの共同研究、アニマトロニクスとロボットの操作、それらの融合が、恐竜ドキュメンタリー屈指の名作といわれる所以でしょうが、決してそれだけではないと思います。恐竜への深い関心と偉大な生物への愛情、絶滅への哀惜が本作を血の通ったアプローチにしています。これは「昔むかし恐竜がいた」という過去の話ではなく、いまの地球が近い将来遭遇するかもしれない悲劇の源を示唆しているとさえ思えます。難渋したのはロケ地探しでした。2億2000万年前の三畳紀の森林はニューカレドニアの奥地、1億5000万年前のジュラ紀の森はカリフォルニアのレッドウッド森林公園、6500万年前の白亜紀の世界は南米チリの溶岩台地です。ただひとつどうしてもわからないものがあったと言います。恐竜の色でした。色素の化石がみつかっておらず恐竜の色だけは想像によるしかなかったそうです。どの恐竜もみな地味色ですが、もっとカラフルな、真っ赤な恐竜や黄色の、あるいはダンダラ模様の恐竜がいたとしても不思議ではないといいます▼適者生存の厳しい環境で生き延びたのは大型恐竜だけではありません。わたしたち哺乳類の先祖は恐竜のエサに子供を狙われ、このままだと一家全滅だと察知し、産まれてまもない子供を食べ、夫婦だけで夜のくらやみにまぎれて巣穴を脱出します。ネズミに毛が生えたようだった哺乳類は、だんだん(といっても何万年もかかって)イタチくらいの大きさと完全な胎生を得ましたが、地上を支配していた恐竜のかげに隠れるようにして息をひそめ、恐竜の卵泥棒というセコイ稼業で生き延びたのです。哺乳類が生存生物35%のなかに入ったのは、それは本作では触れていませんが、たぶん体が小さく必要とするエネルギーが少なくてすんだからだと思います。恐竜の大きな足の下を逃げまわり、卵泥棒しながら逃げまどっていた哺乳類の先祖がいてくれなかったら、いまの人類はなかったのですね▼巨大な恐竜も小さな子供時代は他の恐竜の餌食となります。あるエピソードの主人公はジュラ紀のディプロドクスです。全長30メートル、体重20トンにもなる植物食恐竜です。母親は卵を保護しやすい森のなかで産みたいのですが自分の体が大きくて森に入れません。だから森の入口で産み落とし、子供たちは自分でカラを破って森の奥に入り、樹の下や草のかげに身を潜めながらエサを探します。大人になれば群れで生活しますが、そのためには森から出なければなりません。卵からかえった3匹の兄妹は、森の出口で待ち受けている恐竜につぎつぎ殺され、最後に残ったメスの恐竜がSOSの咆哮を発します。それをききつけた群れのなかの大人のメスの一頭がかけつけ、敵を追い払い、子供恐竜を仲間に入れてやります。やがて数年、立派に成長した子供恐竜は初めての交尾を無事終えました▼こういうふうに歴代恐竜の代表が登場します。地上だけではありません。大型肉食鳥のオルニトケイルスは、繁殖のため南米から北米の海岸線を、さらに大西洋をこえ今のヨーロッパ(当時はまだ海の底)のひとつの島に、1万6000キロを飛びます。海には体長25メートル、体重150トン、巨大な海生爬虫類リオプレウロドンが、4枚のヒレを櫂のようにあやつり獰猛に獲物を探していました。イルカの先祖のようなオフタルモサウルスもジュラ紀の海の恐竜です。まだ森だった南極では4~5カ月の日が沈まない夏が終わると酷寒の冬がきます。寒さと暗闇のなかで、ラエリナサウラはその大きな目でわずかな光を感知し、敵から身を防ぐためグループをつくって身をよせあい、仮死状態になって生き延びます▼ティラノサウルスは恐竜絶滅直前の200万年間を、草原を支配した最大最強の肉食恐竜です。メスはオスより大きく性格が獰猛なので、オスは交尾をするために獲物をプレゼントし、メスが受け入れる限り交尾します。3日もするとメスはわずらわしくなりオスを追い払います(それにしてもすごい体力ですが)。卵を産んだメスはどこにもいかずつききりで卵を守り食事もしません。この映画では3つの卵が孵りました。生まれた子供は生後4週間くらい1メートルにも満たない。断食明けの母親は早速子供たちにエサを与え、2カ月ほど子育てをします。あとは放り出し最悪の場合自分のエサにするのです。3匹のうち1匹は足をひきずっており、とうとう育ちませんでした。この恐竜家族に絶滅の危機が迫っていました。西の空の不気味な赤い雲とともに、3000キロ離れたユカタン半島に、広島の原爆100億個分のエネルギー隕石が衝突しました。強烈な爆風。真っ暗になった空から溶岩がふりそそぎ、地球をおおったぶあつい塵は太陽の熱と光を何年も遮断し、植物は枯れ、それをたべていた動物たちがつぎつぎ死滅していきました。壊滅的な気候の変動で地上生物の65%が死滅し回復に数100万年を要したといいます。子供をみすてられなかったために、敵に不意の一撃を受けて死んだ母親にすがる、子供ティラノサウルスの頭上に劫火のような赤光の空。その映像は哀惜の詩情にみちています。

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