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特集「われらのダイナソー」

2013年1月19日

特集 「われらのダイナソー」 「サルタサウルスの成長」 (2003年 ドキュメンタリー映画)

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聡明で勇敢な恐竜の娘

 1997年十数平方キロにわたり無数に散らばる竜脚類の卵の化石がアルゼンチンで発見された。この場所は「たくさんの卵」を意味する「アウカ・マウエボ」と名付けられた▼8000万年前にアルゼンチンで産み落とされた恐竜サルタサウルスの卵。本作の主人公は卵から孵ったアルファというメスの恐竜だ。ここは南米パタゴニアの広大な平野。今年もサルタサウルスのメスたち何百頭が卵を産むために帰ってきた。アルファもそこにいた。15年前アルファもここで産まれた。産まれたときはてのひらサイズだったアルファもいまや10メートルの巨体に成長した。それまでには何度も生命の危機にめぐりあった。サルタサウルスの脳はバナナくらい。巨体の比率でいうと脳の大きさは恐竜のなかで最小。でもアルファは賢くて勇敢だった▼卵に適した地面は乾いた大地で柔らかくて暖かな砂地がいい。いい場所は先輩のメスが陣取って産卵地は卵だらけ。何百頭ものメスが一頭につき20~40個の卵を産む。アルファは卵を産むと卵を隠す樹の枝を森に探しに行く。樹の枝は卵を隠すとともに日除けになった。15年前、アルファはまだ卵の中にいた。母恐竜に産み落とされたあとアルファの卵は運命の手に委ねられる。卵を狙う古代ワニの牙から逃れ、産まれて1日目の子供たちの最初の夜。数千頭は目にみえない合図とともに平原から森を抜け、丘をめざす。平原は敵にみつかりやすい危険な場所だ。夜のうちに姿を隠すことのできる森に逃げ込まなければならない。夜を生き延びられるのはでも一部の子供たちだけだ。なんの武器もない産まれたばかりの子供たちは情け容赦なく他の恐竜の餌食になる。アルファたちのそばにもう一組の肉食恐竜アウカサウルスの親子がいた。アウカサウルスの母親は子煩悩で徹底して子供を守り、ときとして子供をえさにしてしまう父親をよせつけない。この一家の息子の名前がドラゴンフライ。以後15年にわたってアルファとの確執が生じる因縁の間柄だ。エサに狙う最優先順位は子供だ。森の中を生き延びて平原の仲間の群れに入ったアルファはまだ体も小さく、ドラゴンフライがアルファに目をつけていた。強いものには目もくれず弱いものを狙うのが狩りの鉄則だ▼子供のアルファは大人の恐竜に守られながらだんだん成長していた。ドラゴンフライも成長して独立し、家族をなしていた。アルファの仲間が脚を折った。ドラゴンフライは群れには目もくれず、群れから遅れたサルタサウルスを餌食にした。群れの順位は大きさや年齢で決まる。おとなしい草食恐竜であるサルタサウルスは群れをつくることによって身を守る。だから脚を痛めて移動が遅れ、群れについていけないことは死を意味する。ある日敵の急襲を受け、逃げるうちにアルファは脚を倒木に打ち付けてしまった。なんとか群れにはおいついたが、ドラゴンフライが見逃すはずがなかった。はぐれたら襲われる。アルファは必死で行動を共にするが歩みが遅くなり、とうとう群れから離れた。つきまとうドラゴンフライ。決着をつけるときが来た。覚悟を決めたアルファは脚をひきずることをやめ、ドラゴンフライと正面から向き合う▼死闘である。スピードにまさるドラゴンフライが波状攻撃をかける。アルファが長い首と尻尾でこれをはねとばす。どうしてもアルファの場合は防御だ。鋭い牙も爪もない。長引けば長引くほど不利だ。脚はもう体重を支える限界にきていた。崩れようとする前脚で身を支えるアルファ。勢いを得て襲いかかるドラゴンフライ。もう態勢は立て直せない。アルファは膝を折った。どうせ倒れるならあいつの上に倒れてやる。捨て身だった。真上から落ちてきたアルファの巨体をまともに受けたドラゴンフライは頭をくだかれ即死。なんだかこのあたり「強い女オタク」のジェームズ・キャメロンが大喜びしそうなシーンでしたよ▼やがてアルファの傷は癒えた。宿敵と勝負を決したアルファは無事交尾し卵を産んだ。しかしアルファにも悲劇はあった。アルゼンチンの平原から何百という恐竜の胎児の化石がみつかっている。胎児には歯が生えていた。考えられる死因は、嵐によって大雨となり、川の水位があがり平野にあふれ、洪水となって卵の殻の穴から水が入り胎児が溺死したのだ。アルファの卵も流されるか溺れるか、しただろう。でもそれらを乗り越えてアルファは母親となり、地上最大級の草食恐竜に成長した。もはや群れでいるかぎりアルファをおびやかすものはいない。

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