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特集「われらのダイナソー」

2013年1月21日

特集 「われらのダイナソー」 「絶滅した狩人 ダスプレトサウルス」 (2003年 ドキュメンタリー映画)

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恐竜たちの悲歌 

 1980年アメリカのワシントン州の活火山セント・へレンズ山の数十倍の噴火が7500万年前の北米で起こった。モンタナ州北西部の発掘調査によって、黒焦げになった恐竜の骨が発見された。骨には傷がなく敵の襲撃によるものではない即死状態だった。骨とともに200本以上の木々の化石が見つかり、火山灰が2メートルちかく積もっていた。火山の噴出物は2500平方キロに及んでいた。7500万年前の白亜紀後期、大規模な噴火によって森が破壊、噴火に伴うすさまじい爆風が木々をなぎ倒し、溶岩の濁流とともに恐竜たちもろとも火山灰の下に葬ったと考えられた▼この物語の主人公はリトル・ダス。肉食恐竜ダスプレトサウルスの子供だ。舞台は7500万年前の北米モンタナ・エルクホーン山脈。緑豊かな草原で草食恐竜と肉食恐竜がきょうもサバイバルを繰り広げる。頭上には巨大な翼竜ケツアクアトルが飛ぶ。翼を広げると12メートル。戦闘機なみのサイズで空の王者の異名をとる。草原の彼方にみえるロッキー山脈はまだ若い火山がいくつも連なっている▼リトル・ダスは狩りの修業中だ。彼の役目は姉2匹と組んで獲物を群れから離し、ボスである母親のもとに追い込むのがふだんの手筈だ。ダスはちょっとあわてものだった。その日ダスたちは格好の獲物をみつけた。草食のマイアサウルスの子供である姉弟2匹、ブリーズとバックが好奇心からうろうろと群れを離れたのだ。姉たちはたちまち2匹を挟みうち。ダスが待機する方向へ走らせた。ダスはそこからボスのいるところへ2匹を追い立てるのだ。幼い姉弟恐竜は絶体絶命。湯気のたつホッペタがおちるような新鮮な肉にたっぷりありつける…はずだった。姉弟の行く手を遮ったママ・ボスが大きな口をあけてガブッ。バックの尻に噛み付いたところへ、勢い余ったダスが体当たりしてしまったのだ。ママは思わず獲物を口からポロリ、バックは牙をのがれ九死に一生をえた。このシーンはもちろんCGだが、末っ子のダスがママと姉に、大きな頭でこづかれているところまでバッチリ作りこんでいる。名誉挽回。ダスはそのへんの恐竜を追い回し、若さと俊足にまかせて草原を走り回った。草を食べている恐竜や群れで休んでいる恐竜はダスをうるさがって一匹残らず移動してしまった。狩場は空っぽ。今度はこづかれるだけではすまない。ママはダスの頭にお仕置きのひと噛みをくらわす▼ダス一家は腹ペコであるが、でもそれは恐竜たちの日常の一コマだった。このままであれば、いずれ獲物をつかまえ、うまい食事にありつける、平穏な日々がめぐってくるはずだった。でもその日はちがった。ダスプレトサウルスは発達した嗅覚に異常を感じた。なにかわからないが経験したことのない恐怖だった。最強の敵・火山が長い眠りから覚め胎動したのだ。ケツアクアトルのはばたきかたが緊急事態の避難を告げている。不気味な地鳴りは低い音でやまず、マグマと有毒ガスで武装した巨大な怪物が、西半球最大規模の噴火をもたらそうとしていた。火山から80キロの草原にいる恐竜たちにも危険が迫った。次第に濃くなる噴煙は空を覆い、ときどき溶岩のかけらが降ってきた。空はかき曇り、真昼だというのにあたりは異様に暗くなった。恐竜たちは狩りどころではないと悟った。本能の命じるままに火山から遠のくのだ。そのとき溜りに溜まっていた大地のエネルギーを一挙に噴射するように大爆発が起こった。とびちる岩石に溶岩の固まりが混じりだした。雨のようにそれが草原にふりそそぐ。森は火の海となった。マグマの火山ガスの影響で山の斜面が崩れ落ち、大きく開いた火の口から高温の灰と岩石、有毒ガスのまじった雲が草原に押し寄せた。火砕流は猛烈なスピードで突き進み、中の温度は400度以上に達した。これにまきこまれたらなにも生きておれなかった。火砕流は容赦なく地上のハンターも獲物も飲み込んでいった。700万年後、噴火の傷跡はやっと癒えた。草原にはマイアサウルスの面影を残すエドモントサウルスが、ダスプレトサウルスに似たティラノサウルスがいた▼怒れる火山によって瞬時に絶滅した恐竜たちの生態がリアルで、ダイナミックであわれだ。わたしたちの地球にこんな野生社会があったのだ。この地上から遥かなむかし永遠に消えた恐竜たちの悲歌を、おそれと畏敬をこめて受け止めたいと思う。

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