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特集「われらのダイナソー」

2013年1月22日

特集 「われらのダイナソー」 ダイナソー (2000年 ファンタジー映画)

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映像の説得力 

 CGの恐竜と実写を組み合わせた迫力のディズニー映画。映画が始まってまもなく、翼竜が草原から大空を飛翔し、草原が終わると左右が切り立つ断崖の間をぬい、みはるかす海洋へ滑空する。その躍動感に圧倒される。実写の風景を求めて世界中をロケしたというこの場所は、オーストラリアの断崖だそうだ。恐竜の表情や皮膚や筋肉の動きがあまりにリアルなので、恐竜が言葉をしゃべるという超現象までリアルの一部になってしまう▼物語はこれこそディズニーというべき、ストレートの真っ向勝負だ。キツネザルのファミリーに育てられた恐竜イグアノドンの子供アラダーは、楽園のような森と草原で無邪気に暮らしていた。隕石が落下し急激な気候の変化とともに環境は荒野となり、たくさんの恐竜や生物が死に絶えた。新天地を求めてアラダーたちは移住する。キツネザルの母プリオ、娘のスー、祖父のヤー、アラダーの親友ジーニーがいっしょに出発する。やがて彼らは草食恐竜の群れが移動するのに出会う。群れはイグアノドンのリーダー、クローンに率いられ、その妹ニーラ、スティラコサウルスのイーマ、体重90トン、体高16メートルに達するプラキオサウルスのベイリーン。イーマとベイリーンはともにおばあさんで、クローンの速度についていけないと嘆くが、クローンは弱ったやつは置き去りにする、死んでもしかたないという方針を動かさない。向かう場所は「命の大地」と呼ばれる緑の沃野だ。そこにたどりつくまでにはでも、熱砂の砂漠を越えねばならなかった▼群れにはいったアラダーは、弱ったベイリーンやイーマを励まし、もうすぐ水飲み場だと元気をふるいださせるが、たどりついた湖は枯渇していた。子供の恐竜や体力の弱った恐竜のなかにはすでに行き倒れるものがでてきた。クローンは休まず進むことを告げる。アラダーは群れとはぐれるのは危険だが、歩けなくなったイーマやベイリーンを置いていけない。そのときベイリーンの巨大な脚がめり込んだ砂地に水が湧いてきた。アラダーは砂の下に水があることを発見し、群れを呼び止める。救世主となったアラダーをみて、クローンは面白くない▼「命の大地」まであと一息というとき、偵察に先行していたクローンの部下二匹が肉食恐竜カルノタウルスの襲撃を受け、一匹が殺される。傷を受けて戻ってきたもう一匹のブルートンにクローンは「なぜ食われなかった、お前のあとをやつらはつけてきたのだ」と冷たく言う。その言葉通り、肉食恐竜がすぐそこまで迫っていた。旅を急ぐ群れから遅れ嵐に遭遇したアラダーとキツネザル、イーマとベイリーンは洞窟に避難し、そこへブルートンも入ってきた。賢いプリオは洞窟に生えていた薬草をブルートンに食べさせる。そこにもカルノタウルス二匹が襲ってきた。アラダーは太い尻尾と長い首を使って必死で防戦するが、彼には肉食恐竜のような牙も爪もない。しかしブルートンは洞窟の天井が衝撃で緩んだのをみて、全身でカルノタウルスに体当たり、地響きをたてて岩石を落とし、敵もろとも岩の下敷きになってアラダーたちを逃がす。前方は行き止まりだった、後ろは落盤で埋もれアラダーたちは進退極まる。もうここで死ぬのだ、さすがのアラダーも弱音を吐くとベイリーンが90トンの巨体を岩にぶちあてる。イーマが頭突きをかます。なんだか知らないが岩の壁がぐらぐらし、轟音とともに洞窟は向かい側に貫通したのだ。目の前に広がる緑の平野こそ「命の大地」だった▼ここで終わりではありません。生き残ったカルノタウルスの逆襲と迎え撃つ草食恐竜たちの結束、アラダーとクローンの激突。まあいろいろ織り込んだ物語なのです。チームワーク、自己犠牲、ユーモア、経験者の知恵、助け合い。人間社会の教訓を恐竜社会に置き換えただけといってしまうとそれだけなのですが、映像の説得力にひきこまれます。生き残った恐竜たちが砂漠を歩いていくさまを鳥瞰したシーンなんか新鮮で叙情に満ちています。確かに善悪の構図の二分化は単純すぎますが、現状を打開していくときの行動の原型みたいなものは伝わってきます。クローンはかなり分の悪い役柄です。難破船の救命ボートが満杯になり、これ以上救助したら沈没するというとき、ボートに手をかけた遭難者の指を斧で斬っていったという人間の話を、どこかで読んだのを思い出しました。ラブストーリーかつ単細胞的冒険譚である「ダイナソー」に陰影を彫り込んだのは、クローンであり、ベイリーンであり、イーマであり、肉食恐竜のカルノタウルスである、弱者と憎まれ役であったことは確かです。

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