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特集「われらのダイナソー」

2013年1月23日

特集 「われらのダイナソー」 第1回 「巨大恐竜繁栄のかげで」 (2006年 ドキュメント映画)

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「小さな王」

 恐竜は1億5000万年にわたって繁栄した素晴らしい生物だ。環境に適応するために進化を遂げ、巨大にもなり多種にもなった。哺乳類は恐竜とほぼ同じ時代に地球上に現れた。恐竜の全盛時代をどうやって生き延び、ほ乳類は現在に命をつないできたのだろう。それを「巨大恐竜繁栄のかげで」と「迫りくる羽毛恐竜の驚異」と2回にわけて放映したのがこのNHKスペシャル版で、わたしたちの祖先・ほ乳類の登場と生き残るための苦難の道が明かされる。思うのだが、多くの人が恐竜に関心をもち、生態や環境やその実態を知りたがるのは、地球上最強の王者として繁栄を謳歌していた恐竜が絶滅した、つまり恐竜が体現する悲劇とミステリアスにひきつけられてやまないからだろう。隆盛を謳歌した恐竜が滅び、ネズミみたいな体でスタートしたほ乳類が地球に残った。ほ乳類と恐竜の関係という謎に満ちたテーマに焦点をしぼりきったところにこのドキュメントの勝利はある▼発見されているほ乳類の最古の化石は、2億2000万年前、体長10センチほどのネズミのようなアデロバシレウスだ。「小さな王」という意味の命名は、のちのほ乳類の繁栄から取ったのだろうが、あわれなほど小さい、恐竜のエサになるまえにふみつぶされたかもしれない、この生物がわたしたちの先祖だと思うと胸が熱くなる。7000万年後ほ乳類は体長15センチの化石となって発見された。7000万年の間にわずか5センチ。その間の恐竜の進化はすさまじかった。代表的なスーパーサウルスは体高13メートル、体重40トン、地上を歩く最大の生物だ。恐竜の巨大化は、当時超大陸パンゲアが分裂を始め、大地が分断されるときに地下のマグマから多量に発生した、二酸化炭素に関係があるとされる。現在の5倍と推定される大量の二酸化炭素は、アメリカでの実験によると、植物の成長を早めもするが葉は黄ばむのが早く、栄養は薄くなった。従って草食恐竜は、体に充分な栄養を補給するためにはたくさんの植物を食べなければならない。多量の繊維は消化吸収する長い消化器と、それを収める大きな胴体を必要とした。スーパーサウルスの化石を輪切りにした調査によれば、気嚢という独特のシステムが、酸素を十全に体に行き渡らせる機能を果たしていた。充分な酸素は体のすみずみまでエネルギーを燃やし、長い首や尻尾、太い胴体や脚にいたる恐竜の運動機能を支えた▼生物は体の大きいほうが長寿である傾向がある。スーパーサウルスの寿命はなんと100歳から200歳とも考えられるのだ。それにひきかえ、小さなほ乳類は2,3年で寿命が尽きた。彼らは昆虫を捕食したが宿敵恐竜からは食べられるほうだ。ほ乳類は恐竜に捕食されることから逃れるために、恐竜が眠る夜の世界で生きることを選んだ。そのために身を守る武器は聴覚だった。2億年前である。月と星以外に草原と森に何の明かりもない。月がなければ漆黒の闇だ。物音を聞きとり、聞き分けることが生死をわけた。まさに耳は命の器官だった。聴覚は内耳を伝わり脳に情報を伝える。情報をよりよく識別するために、情報を受取る脳の聴覚分野、大脳新皮質が発達した。脳とは大量のエネルギーを消費する器官だ。夜という活動時間を限られたほ乳類には、昆虫をみつけるとしても限界があった。少ないエサをせっせと食べても、脳にエネルギーを送るだけで、体を大きくするところまで、栄養はまわらなかった。7000万年の間にわずか5センチという進化は、7000万年を生きながらえるためにほ乳類が取った生存手段の結果だった。体は小さいままで寿命は短かった。彼らは、いやわたしたちは短命という犠牲を払って脳を発達させたのだ。これがしかし進化のうえでは有利となった。短時間で生と死を繰り返す、一見はかないサイクルは、短い期間に多様化したほ乳類を生み出し、適者生存の幅を広くした。外の世界にむかって進化していく恐竜と、内の世界に向かう進化を選んだほ乳類では、この時代の優劣は明らかだ。ほ乳類は小さく短命で夜の世界に細々と身を潜めている。地上では巨大化した恐竜が、豊富な獲物と恵まれた環境を得て王者として君臨していたときだ。

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