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特集「われらのダイナソー」

2013年1月24日

特集 「われらのダイナソー」 第2回「迫り来る羽毛恐竜の驚異」 (2006年 ドキュメント映画)

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獲得した羽毛と胎盤

 恐竜の一部が鳥となって現代までつづく繁栄を得たのは、羽毛を手に入れた進化ゆえであり、ほ乳類が繁殖戦術として獲得した胎盤という進化が、サバイバルを可能にした、というのが本編のテーマだ。しかも両者は進化の途上で食うものと食われるものという、壮絶な戦いを繰り広げる▼1996年中国の遼寧省で発見された、約1メートルのシノサウロプテリクスの化石は、体のまわりに羽毛のあとがあった。それまで爬虫類の一種である恐竜は鱗でおおわれていたという常識をくつがえした。羽毛とは劇的な進化であり新たな繁栄を恐竜に与えるものだった。ほ乳類がみな毛を生やしているのは、マイナス30度の極北でも赤道直下のアフリカでも、毛が体温を一定に保つ役割〈内温性の能力〉を果たしているからだ。食べ物を素早く熱に変え体を温かく保つ。体温が高いと活発に動くことができる。ほ乳類の高い運動能力は毛によって保たれた体内部の熱による。1億5000万年前、毛という保温システムがほ乳類の恐竜時代を生き延びる支えになった。この時代のほ乳類は北京の中国科学院に保存されている化石によると、体長50センチ、レペノマムスというほ乳類に進化し、体の大型化によって夜から昼の世界に進出、恐竜を捕食するまでになっていたことがわかった▼毛と同じ役割を果たしたのが羽毛だった。羽毛によって体の中で熱を保つことができ、いつでもどこでも俊敏に動けた。2004年明らかになったメイロングの化石は珍しい寝姿の化石だ。頭を胸に隠すようにして、羽があった腕のなかにおさめ、今の鳥類と同じ姿勢で眠っている。進化を遂げた恐竜の究極の姿といわれるティラノサウルスのあごの力は3トンから最大8トン。鉄でできたトラックだろうと車だろうと噛み砕く力をもっている。ティラノサウルスが羽毛恐竜ディロングの子孫だったという決め手は、ディロングの化石とティラノサウルスの化石の前歯の断面に「D」の形が見られることだ。ティラノサウルスの仲間だけにある珍しい特徴だ。頭蓋骨の形も同じで、ティラノサウルスには産まれたとき黒い羽毛が全身にあったとされる。カナダのアルバータ州の世界有数のティラノサウルスの化石の産地で、ティラノサウルスが群れで行動したと思われる、異常な数の骨が発掘された。考えられるのは、短い前脚は狩りをするのに不向きだし、脚もそんなに早くない。しかし子供時代の黒い羽毛の生えたティラノサウルスは脚も長く、走りも早く、獲物をみつけた子供たちはママが待ち伏せしている場所に追い上げ、ママは地上最強のアゴで仕留める、そんな家族の構図だったという▼胎盤に戻ろう。恐竜時代の最後に生きていたキモレステスというほ乳類の化石がある。体長15センチ。小さいが体の中で画期的な進化をとげていたことを示す。ほ乳類は体を大きくする進化をしなかったかわり内部で革新を遂げた。子供が母親の栄養を直接受け取れ素早く成長でき、産まれたあとの生存率を高める繁殖戦術として胎盤をつくったのだ。アデロバシレウスは卵を産んだ。卵で子孫を残すのは危険が大きかった。誕生後の生存率も低かった。キモレステスは卵を棄て胎盤をつくった。体長15センチの小さな体のなかでできるだけ子供を大きくして外に出す戦略をとったのだ▼ほ乳類の追い風になったのが花だ。2億年以上前、地球上に花はなかった。あったのはシダ、マツ、スギの裸子植物だ。恐竜時代の後半花の先祖が現れると花は虫の力を借りて繁殖する。虫は花粉にまみれて蜜を吸い、他の花に移動し雌シベに受精させる。裸子植物時代の昆虫はトンボやバッタに限られたが、花の誕生以後ハチやチョウが現れた。花は果実を結び、種をもふやした。ほ乳類は昆虫をたべて生きながらえてきたが、豊富になった昆虫やタネや果実を食べることで生きるチャンスは広がった。花と昆虫はほ乳類が生存できる環境を与えたのだ。恐竜が絶滅しほ乳類が生き残った。運命を分けたのはほ乳類の体が小さかったことと関係があるとされる。同じ面積なら小さい生き物のほうがたくさん住むことができ、生存できる可能性は多いからだ。巨大な体は逆境では不利なことがある▼地球はそのとき6550万年前だ。直径10キロの小天体が地球に近づきつつあった。夜空には無数の流れ星が尾をひき、胸騒ぎを覚えた野生動物もいただろう。狩りをしたティラノサウルスの母親は地面に前脚をのばし、そのかたわらにはまだ黒い羽毛を生やした子供たちが大きな母親の腹にもたれ寄り添っていた。初夏の夜だった。流れ星は降るように数を増し、恐竜時代の終わりを告げる激突があと数秒に迫っていることを眠る恐竜の母子はまだ知らない。ユリの花の咲く草原の木陰には安らぎが満ち、恐竜は静かに眠っている。

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