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シネマ365日

2013年1月29日

特集「サイコ変奏曲」 サイコ4 (1990年 スリラー映画)

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監督 ミック・ギャリス
出演 アンソニー・パーキンス/オリヴィア・ハッセー/ヘンリー・トーマス

「4」でついに完結 

 アンソニー・パーキンスの30年におよぶ「サイコ」シリーズも「4」をもって完結します。3作目のエンドをみれば、パーキンス扮するノーマン・ベイツは一生刑務所か病院暮らしが妥当だと思いますが、なぜか社会復帰していますね。いいのだろうか。それはさておきパーキンスは本作で58歳になりました。さすがに「永遠のピーターパン」も額には深いシワが、お腹もちょっと出っ張り、髪も薄くなっていました。ノーマン・ベイツの狂気と犯罪史を、手を変え、品を変え、あれだけ作ってしまうともうお話もなくなってしまうにちがいないと思うのは間違いでした。今度はベイツの少年時代、いや生まれてから青年までの母親との確執から解き明かしていくのです。ここまで掘り下げればもう思い残すことはなかったにちがいない。パーキンスはこの2年後に没します。まだ60歳でした。彼が出演したいい映画はいっぱいあるのに、全体として一連の「サイコ」に生命を吸い取られたみたいな感があるのは、やはり「4」までは作りすぎだったからでしょうね。母親にオリヴィア・ハッセーが、少年時代のノーマンを「E・T」で主演したヘンリー・トーマスが演じました▼深夜、母親殺しをテーマにした聴者参加番組にエドと名乗る男から電話が入る。エドは母親を殺しただけでなく、何人かの関係者を殺していた。ゲスト出演していた精神科医は、エドが30年前の母親殺しのノーマン・ベイツだと見当をつけるが、精神科医の質問にエドは拒否反応を示し、満足に対応しない。ラジオのDJとのやりとりの間に、ノーマンの少年時代の映像が流れ、狂気のルーツが母親の存在とともに解き明かされていく。ノーマンは社会復帰して愛する女性といっしょに暮らしているのに、自ら古傷をほじくりだすような、この告白は何の予兆だろう。少なくとも観客はノーマンがなにかやろうとしている暗い魂胆を感じます。当然よね、そのために映画化「4」だのだから▼母親がまあ、気分の変化の激しい人で、ノーマンを抱きしめたかと思うと突き放し「お前なんか産まなきゃよかった」と叫ぶ。ノーマンはそれでも母親を愛していて、何につけても母親の言動を気にかけ、母親の気にいろうと、マザコンと一言で片付けるのは、かわいそうなほど涙ぐましい少年なのである。父親の死が変わっている。ハチに刺され、鼻にも喉にもハチが入って死にいたった。猛烈にハチが刺したので顔も変わってしまった…というので棺桶をちょっとずらして父親の遺体をみるシーンでは、顔中でこぼこになった顔貌が覗きます。なんだかこの「サイコ4」あまり趣味がよくないって感じがこのあたりからしてくるのだけど。しかし乗りかかった船は降りてはならぬ。我慢してみていくとノーマンの思春期のころから母親は憑依しているのですね。最初の殺人は脱ぎたがりのガールフレンド(刺殺)、つぎは年上の女性(絞殺)。母親はノーマンに口うるさいばかりか、雷が大嫌いで、ある嵐の夜ノーマンを呼びつけ、怖いからベッドに入ってくれという。雨で濡れたままノーマンが急いでベッドにはいろうとすると「冷たいじゃないの、脱ぎなさい」と命じ、上半身ハダカのノーマンがベッドにすべりこみ母親を抱く怪しげな雰囲気。でも母親はノーマンをベッドから追い出し、体にオイルを塗れという▼とはいえノーマンも男の子だから性に関心のないはずはない。ノーマンの部屋にアダルトコミックを発見した母親は腹をたて、ノーマンをクローゼットにひきずっていって女装しろと言う。支離滅裂なのだがノーマンは従順に従う。その母親が男をこしらえた。今度はノーマンが母親を勘弁できない。男と母親を毒殺する。これが不思議、死んだと思った男や母親が、何度も起き上がったり、立ち上がったり、早送りしたくなるほどしつこいシーンになっています。こういうふうにノーマンの、いやエドの母親殺しはラジオで話されるのですが、おどろくべきことにノーマンはさらなる殺人を計画しているのです。DJは驚いてわけを聞く。ノーマンが語るには、殺すべき相手は現在の妻コニーなのだ。なぜ。社会的に抹殺されようとしていたノーマンはコニーとの結婚で立ち直ったというのに。わけは「彼女は妊娠した。それだけはよそう、と約束していたにもかかわらず、彼女は約束を破った。ノーマン・ベイツの血をこの世にもたらしてはいけない」だからって殺人という手段になっていいのか▼エドはノーマン・ベイツだとわかり殺人を阻止しようとDJや警察が例のモーテルにかけつける。ノーマンはさんざんコニーを追い回す。残る筋書きはノーマンの自殺しかない、と思っていたら違った。ノーマンは「サイコ・ハウス」に火を放ち、母親にまつわる写真、衣服、家具調度いっさいを焼きつくすのです。で、コニーを助け脱出。夜が開けると焼け焦げたサイコ・ハウスを後に夫婦がよりそって階段をおりてくる。「4」がいちばん精気のない作品になってしまったのは無理ないな。なぜってノーマンも含め常人ばかりになってしまって、回顧シーンの母親だけが異界の住人にふさわしい劇的人物でした。

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