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シネマ365日

2013年1月30日

特集「サイコ変奏曲」 サイコXX (1970年 サイコ・ホラー映画)

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監督 カーティス・ハリントン
出演 アンソニー・パーキンス/ジュリー・ハリス

パーキンス「終の棲家」 

 アンソニー・パーキンス主演で「サイコ」(1960年)のあと「サイコXX」(1970年)「サイコ2」(1983年)「サイコ3」(1986年)「サイコ4」(1990年)と4作つくられています。パーキンスが自分で監督したものもある。第1作のあと4作も「サイコ」バージョンがつくられた。ふりかえるにつけ「サイコ」第1作の衝撃度、そしてサイコ・サスペンスという新ジャンルを映画史につくった、ヒッチコックや波及力を改めて見直したくなりました。アンソニー・パーキンスは一生をサイコとともに過ごしたと言ってもいい。しかしその「サイコ」連作というか「サイコ再び」の感触をパーキンスが掴んだのはこの「XX」からではなかったかと思います。なぜならこれは「サイコ」といっさい関係ない内容で、しかも「サイコ」のタイトルを冠して成功した映画です。世界中の観客にいかに「サイコ」が強烈に刷り込まれているか、今さらのような影響力を再認識するのに充分でした▼主人公はノーマン・ベイツではなくアラン・コーリーという青年です。母親はいなくて、姉キャサリン(ジュリー・ハリス)と父と三人暮らしであること。パーキンスは一生「サイコ」から逃れられなかった、というより、彼の持ち味に最も適した「終の棲家」を「サイコ」に見出したかのようです。ここまで決定的な影響を与えるとはヒッチコックも罪なやつです▼映画はいきなり燃えさかる火事から始まります。父親の部屋から火が吹き出て、アランはどうしようもなく見ている。父は高名な学者です。パパっ子の姉キャサリンはアランをおしのけ火の中に飛び込もうとするのをアランが抱きすくめて止める。家は燃え落ち、アランとキャサリンは救出されたが父親は焼死、キャサリンは顔半分にひどい火傷を負った。アランはショックで目が見えなくなる。心の傷が大きく精神病院に入院した。8カ月後、アランは退院する。目はぼんやり光を感じるくらいには回復した。キャサリンは顔の火傷から社会復帰し大学の事務職に勤めていた。姉に付き添われてアランは退院するが、後遺症は深く、他人との接触を極度に恐れ、元婚約者のオリーブにも心を閉ざした▼パーキンスはこのとき38歳でした。「サイコ」からちょうど10年です。くたびれた中年であってもいいのですが、この人って典型的なピーターパンというか、よく言えば「永遠の青年」悪くいえば成熟を拒否した「精神的発育不良」なところがあると思いません? そのせいかどうか、とっくりのセーターが、首が長いのでよく似合います。オッサンには着こなせない、ざっくりしたTシャツとGパンが、これまた細身によく合う。ふつうに考えれば父親が焼死するのはいたましい事故ではあるが、ショックで失明し8カ月入院し、退院しても社会復帰できない青年もどきの中年男って、治療はともかくヒーローの対象になるのでしょうか▼なるのですよ、それが。ことパーキンスに関しては堂々主役を張る魅力の対象であるのだ。ちょっと薄気味悪いですが、そんなこと言っておったのでは「サイコ」シリーズについていけませんから、黙って見ていきましょう。アランは身の回りいっさいキャサリンに世話してもらい(ごはんよ、と呼ばれて部屋から出てくる)外出もしない。キャサリンが収入の一助として、2階の一室を学生ハロルドの下宿部屋として貸すという。アランの精神状態はにわかに均衡を失い、ハロルドとは姉の元カレで、自分を陥れようとしているのではと考えるようになる。オリーブはなんとかアランの神経を鎮めようと軽い外出をさせるとか、いろいろ気を配るのだが、裏目にでるばかり。ハロルドという男はいつも留守だ▼本作はネタバレというにも該当しない簡単な内容でして、要は父親が世界一の男性だと尊敬していたキャサリンは、父が死んだのはアランが助けなかったからだと怨み、そんなやつは一生精神病院で暮らせばよいと、もう一度錯乱させて病院に送り返そうとしたのです。ハロルドもつくり話。いつも留守のはずだよ、始めからいないのだから。それに弟が罪のトラウマとなっている原因のひとつ、姉の顔半分に残った火傷(ふだんは大きなガーゼで隠している)も、じつはすっかり跡形もなく完治していたとわかる。病院に収容されることになったのは姉のほうで、アランはオリーブと幸せに暮らす予兆を映画は示すが、なんとっ。アランの目はまたもや視力を失いそうに、あたりは沼に吸い込まれるようにぼんやり、ぼんやりかすんでいくのであります。どういうこと? なにかショックなことが起こる前兆なのか、これは。もはや何が起こってくれてもいいが▼さてジュリー・ハリス。この映画では45歳になっていました。覚えておられます? 「エデンの東」では婚約者の弟ジェームズ・ディーンにふらちなキスをされてわななく、純真なお嬢さんだったのは29歳のとき。映画はあまり出演がありませんが、舞台では5度エミー賞に、テレビでは2度トニー賞に輝いています。「刑事コロンボ」では「別れのワイン」にゲスト出演しました。

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