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シネマ365日

2013年1月31日

召使 (1963年 社会派映画)

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監督 ジョセフ・ロージー
出演 ダーク・ボガード/サラ・マイルズ/ウェンディ・クレイグ/ジェームズ・フォックス

ロージー版「悪徳の栄え」

 ジョセフ・ロージーとダーク・ボガード、ダーク・ボガードとルキノ・ヴィスコンティ。この二人の組み合わせ、なんとなく映画に共通項があると思いませんか。ひとつ・ボガードの役がみな陰気臭い。ひとつ・ボガード(主人公)の二重性(裏面性)が強烈である。ひとつ・女が全く魅力的でない。ひとつ・物語に救いがない。ひとつ・ボガードの目は魚に似ている▼ジョセフ・ロージーみたいな男性が父親だったり親戚にいたり、先生だったり、となりのおじさんだったり…と考えてみた。親父だったら「だめよ、うちのお父さん、まったく人を信用しないのだから」なんて友達にぼやくだろう。親戚のおじさんだったら「いやね、いつもだまりこくって、笑った顔なんてみたことないわ、おばさん大変ね」と愚痴の相手になると思う。先生だったら知識は抜群だけど話がおもしろくない、それに生徒はもちろん父母にも妥協しないからかなりの偏屈で通る。近所のおじさん? 自治会の回覧板を配るとき以外、あいさつする機会はないでしょうね。だから彼は映画監督になってよかったのよ▼人間の裏、ダークサイトを描かせたら外科医みたいなメスさばきで映画をつくるのがロージーなのでしょう。なにを考えているか表情の動かない魚眼のボガードが、オーダーメイドしたみたいに役にフィットしている。裏と表の顔が多少異なることは時と場合では魅力にもなるが、ロージーとボガードの手になると犯罪の域に入ってしまうわ。カフカの迷宮はあくまでもイマジネーション、いうなれば現実離脱の迷宮だったけど、このお二人がつくりだすものはそんなどころか、弱い人間を餌食に、現実の泥沼にどっぷりクビまでつからせ、犯罪的迷宮をひきずりまわすこわい映画なのだ▼裕福な貴族出身の独身青年トニー(ジェームズ・フォックス)が召使バレット(ダーク・ボガード)を雇用した。トニーの婚約者スーザン(ウェンディ・クレイグ)は、余りに気がつきすぎるバレットの召使ぶりに、胡散臭いものを感じるが、お坊ちゃんで人のいいトニーは、バレットなしでなにもできないくらい取り込まれる。バベットは愛人ベラを妹だと偽って住み込ませ、まんまとトニーを誘惑させる。トニーの留守中バベットとベラが抱き合っていることを知ってトニーは二人を追い出す。とたん、バベットにすべて依存していたトニーの生活はなりたたなくなる▼ある日町で偶然バベットに出会ったトニーは再び雇用する。今度は完全に立場が逆転。男二人の淫靡な生活が始まる。トニーはバベットのなすまま、怪しげなパーティーや背徳の世界をひきずりまわされ、健康も頭脳も意思もぼろぼろに荒廃する。どこまでいくのだ、ロージー版「悪徳の栄え」は▼いやらしい男バベット。こんな召使なら主人をあやつりなんでもできるでしょうね。トニーが情けないと憤慨しても仕方ない、主人公の弱さと不運とそれにつけこむメフィストの存在はロージー映画の三本柱だ。類は類を呼んで集まる。ベラがまたけっこうなワルなのよ。ベラはあくまでバレットを際立たせる脇役なのだけど、サラ・マイルズについて一言。彼女はイギリスの女優。「召使」のとき22歳。この1年前に公開された「可愛い妖精」を覚えておられる方は少ないと思うが、あどけない女学生役の彼女が、ローレンス・オリヴィエとシモーヌ・シニョレを向こうに回して堂々四つに組んだ佳品である。この好演が認められ「召使」で準主役。このあとアントニオーニの「欲望」、デヴィッド・リーンの「ライアンの娘」でオスカー候補に。映画化された三島由紀夫の「午後の曳航」でも「恐るべきこどもたち」によって殺されてしまう恋人を待つヒロインを演じています。ロージー好みの、泥のような陰影を笑顔の下にひそませるいやな女には、さすがにちょっとムリがありましたが、なかなか頑張りました。

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