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シネマ365日

2013年2月2日

幸せへのキセキ (2011年 事実に基づいた映画)

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監督 キャメロン・クロウ
出演 マット・ディモン/スカーレット・ヨハンソン

「動物を救ったのね」 

 動物園再生映画というか、家族映画というか、ハートフル映画というか、とにかく心があったかくなる映画です。最愛の妻に死なれたベンジャミン(マット・ディモン)は、14歳の息子ディランと7歳の娘ロージーを抱え、ロスでコラムニストとして働いていた。ある日息子の学校の校長先生から呼び出され絵を見せられた。首がちょん切られ血しぶきがあがっている。心に問題があると指摘され妻を失くしたことで自分も落ち込んでいるベンジャミンはどうしていいかわからない。息子は口をきかない。ベンジャミンは親子関係と人生を修復しようと郊外に家を買うことにする。広大な敷地と豊かな自然にベンジャミンとロージーはすっかり気にいった。しかし不動産屋はもっとよく考えろと意味深長だ。わけをきくとこの家を買うと自動的に動物園のオーナーになるのだという。どういうこと? わけがわからない親子の隣をなにかがすっと横切った。ふりむくと「うわーっ」ライオンがたてがみをふさふさ揺らしながら目の前を歩いているのだ。冗談じゃない。ベンジャミンは命からがらひきあげようとしたらロージーがいない。うろうろしていたら「ライオンに食われる!」探しまわるベンジャミンをよそに、ロージーは大きな七面鳥に話しかけていた。「うれしいわ。これから毎日あなたにあえるのね」▼「おれは人と交われ、と言ったのだ。だれが動物園を買え、と言った」ベンジャミンの兄ダンカンはバツイチ。妻を失った弟になにかと力づけようとするが、弟は人嫌いになり魂が抜けたようだ。なるべく人中に出るようアドバイスしたら動物園を買うだって。この兄は最後には味方になりいっしょにやるのだが、最初は反対ばかりしている。ベンジャミンはオーナーとなりスタッフに紹介された。動物園は前オーナーの遺産でいまのところ運営されているが、それが底をつきだれも引き継ぎ手がいないときは廃園、動物たちは射殺だ。スタッフももとは30人近くいたが今は7人、それもボランティアのような状態で動物園と動物たちの管理をしている。動物の餌代を捻出するのが精一杯で、かれらはほとんど無給であり無休だ。飼育員の一人ケリー(スカーレット・ヨハンソン)も園に残ったひとりだが、いつまでこの状態が続くか不安は隠せない。動物を愛していても運営となると資金がいる。愛情と金はいつも二人三脚だ。それに他のスタッフたちの目も冷たい。いままで何人かこの動物園再生に手をあげてやってきたオーナーはいたがみな逃げてしまった。どうせあいつもそうだという目でベンジャミンは見られている。しかも環境がかわればと期待していた息子の心の状態は相変わらず反抗的で、文句ばかりいい、なにひとつ手伝わず、同じ年頃の飼育員リリーが甲斐甲斐しく働いているのをみてバカにする。リリーはディランにたちなおってほしいとサンドイッチをつくってあげたり話しかけたり、こまやかに尽くすが、どこまでも人生のお客様気取りで、気に入らないことはすべて父親の理解のないせいにしているディランから、とうとう離れていく▼ベンジャミンの我慢強い努力は次第にスタッフの気持ちを本気にさせていった。動物園は夏季に年間集客の75%が来る。かきいれどきだ。7月7日開園ときめ営業許可をとるため全員が張り切った。検査は農務省の役人である。彼の厳しいチェックは「殺してやる」といわれるほどスタッフから嫌われている。でも全力でこれをクリアしなければならない。クマが脱走した、トラが老衰だ、ライオンのオリの錠前が壊れた、高価なクスリがいる、脱走するのはエリアが狭いから運動が足りていないのだ。柵の高さ、溝のはば、エリアの拡大、獣医の診察、餌代、ベンジャミンがつぎこんだ資金はみるみるなくなっていった。とうとう資金切れでベンジャミンが逃げ出すといううわさがたった。それもそのはず、彼の銀行口座にはもう1ドルも残っていなかったのだ。途方にくれるベンジャミンはつい死んだ妻の幻に話しかける。彼女が着ていた愛用のジャケットをなでた。ふと手に触ったものが…▼このあたりちょっとファンタジーっぽいですが、なにしろキャメロン・クロウは「ハロルドとモード 少年は虹を渡る」(ハル・アシュビー)の大ファンなのです。目をつぶってあげることにします。そしてついに来るべきときが、父と息子の激突のときがきた。ここはマット・ディモンが顔を真っ赤にして青筋をたてて怒鳴ります。息子も負けていない、感情が激して涙すらでるが自分のことをひとつも可愛がってくれなかったと訴えるのです。だから一挙に親と子は理解しあえたのか。いやいや、クロウ監督は焦りません。じっくり煮込んでいきます▼効果的に使われるいくつかのキーワードがあります。「20秒の勇気」とか「いけない?」とかね。でも見逃してはならないのは動物園を愛してくれた地元の人たち。「あら、動物園の人?」とベンジャミンはスーパーのレジで聞かれる。そうですというと「7月開園するの。うれしい。予約チケットちょうだい。姑を連れて一番に行くわ、トラに食わせるのよ」「動物園が再開されるの。そう、あなたたち、動物を救ったのね」ベンジャミンはいかに動物園と動物たちが、いかに町の憩いであり癒しであったかを知る。5000万ドルの制作費で、興行収入世界で1億1388万ドル。ケタちがいのヒットとなりました。少なくとも「幸せへのキセキ」などという浅薄な邦題からイメージするより濃い内容があります。モデルとなったのはダートムーア動物公園。ベンジャミン一家はいまも園の敷地にある家で暮らしています。

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