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シネマ365日

2013年2月24日

ドライビング Miss デイジー (1989年 ヒューマン映画)

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監督 ブルース・ベレスフォード
出演 ジェシカ・タンディ/モーガン・フリーマン/ダン・エイクロイド

人生の祝福

 年とともに深まる感覚のひとつに「しみじみ」がある。それに比べると若いときの「しみじみ」が心の浅い部分で、いかにどうでもいいものに「しみじみ」していたか、よくわかる。「ドライビングMissデイジー」を見ると、淡々と過ぎた25年の歳月と、時間という揺籃が育てた温かい理解に「しみじみ」を感じる。25年という年月は短いものではない。それをともに過ごせたのは縁があったからだ。縁とは血縁であるなしにかかわらず、巡りあって離れなかったことだ▼ときは1948年。舞台はジョージア州アトランタ。綿工場を経営するブーリー(ダン・エイクロイド)は、70歳になろうとする母親のミス・デイジー(ジェシカ・タンディ)が車を隣家の垣に突っ込み、もう運転はさせられないと運転手を雇うことにする。やってきたのは黒人の初老のホーク(モーガン・フリーマン)だ。どこか飄々として「母は口うるさいが気にしないでくれ。給料を払うのはぼくだから、ぼくの言うことをきいてくれ」というブーリーに「わかっています。うまくやります。子供のころブタと格闘しましたが、そのときもうまくやりました」「???」M・フリーマンはこれが「インビクタス」で南アフリカ独立の父を演じたのと同じ俳優かと思うほど、田舎から一歩もでたことのない無骨な、でも裏表のない朴訥な黒人を演じる。彼は自作のなかでこの役がいちばん気にいっているそうだ▼ミス・デイジーは元教師。ご近所の同年輩の奥さんたちとワインを飲んで麻雀し、図書館からグレアム・グリーンの新作を借りて読む。まだまだ「アンクル・トム」の雰囲気が残るアメリカ南部だ。法のもとで黒人差別が容認されていた。ミス・デイジーはユダヤ人である。ホークからみて成り上がりの金持ちに思われるのがいやで、もう自家用車などいらない、従って運転手もいらないと頑固に主張するが「あなたは車が必要だ。わたしには仕事が必要だ。お互いもちつもたれつがいい」貧しいが卑屈でもかたくなでもない、心根のやさしいホークをデイジーは見直していく。ある日墓参りに行ったミス・デイジーはホークが字を読めないことを知る。「ABCは読めるの?」「それはわかりますが、言葉となると読めないのです」「ばかおっしゃい。そんなことあるはずないでしょ」デイジーはその場で特訓する。クリスマスが来た。デイジーはユダヤ教だからこれはクリスマスのプレゼントではないと断りながら、自分が使った古い書き取りの本をホークにあげ「いいこと? 練習するのよ」ミス・デイジー先生は厳しいのだ▼1960年代、ミス・デイジーはキング牧師の演説を聞きに行く。あなたもいっしょに入ろうとホークにいうと、喜ぶかと思いきや「本当にそう思うならもっと早く私にいうべきです。あなたのはただの思いつきだ」そんなことで人種問題を考えるのは白人のおためごかしだといわんばかりのホークに、そしてキング牧師の「世の中を悪くしているのは悪人の悪行ではなく、善人の無関心だ」という指摘にミス・デイジーはグサッとくる▼長年家族同様に働いていた家政婦が急死した。ホークはこまごまとミス・デイジーの世話をし、デイジーも自分ができることはやり、思い出話を語りながら歳月が流れる。ある朝、ホークがやってくるとだれもいない。「ミス・デイジー。ミス・デイジー」大声でホークが呼ぶと、やっと現れたミス・デイジーの様子がおかしい。「採点したテストがないのよ。子供たちに今朝返すことにしているのに、どこにやったのかしら」デイジーに認知症が発症したのだ。取り乱さずやさしくなだめるホークに、我に返ったミス・デイジーは「あなたは親友よ」そう言って手を取る▼やがて屋敷は売却、ミス・デイジーは介護施設に入った。息子とホークが訪ねてくる。ミス・デイジーは歩行器につかまって歩いていた。「ホーク、久しぶりね」「よかった。きょうはまともだ」「ブーリー、看護師さんの相手をしてきなさい」「お前を独占したいらしいな」息子はニヤッと笑い姿を消す。ホークはテーブルに座りミス・デイジーによもやま話をする。パンプキン・パイの包みをひろげ「食べませんか」スプーンですくってミス・デイジーの口に運ぶ。「ホーク元気?」スプーンを運びながら「なんとかやっています」「わたしもよ」「なんとかやっていくのが人生ですな」そしてまた一口。ここで映画は終わる▼本作はアメリカで約1億600万ドル、国外で約3900万ドルをあげる大ヒットになった。アカデミー作品賞・主演女優賞・脚色賞・メイクアップ賞に輝いた。ジェシカ・タンディは80歳、オスカー史上最高齢の快挙だった。モーガン・フリーマンは自分のことのように嬉しかったとどこかで述べている。

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