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特集「女のわがまま」

2013年3月3日

特集「女のわがまま」 ヤング≒アダルト (2011年 コメディ映画)

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監督 ジェイソン・ライトマン
出演 シャーリーズ・セロン/パトリック・ウィルソン/パットン・オズワルド

セロン最高の「ダメ女」 

 いくつか面白い要素があります。脚本のディアブロ・コーディーは本作のヒロイン、メイビス(シャーリーズ・セロン)が住むミネアポリスで本物のストリッパーとして舞台に上がっていた。アダルト・ショップののぞきやテレフォン・ショップのオペレーターもやって新聞や雑誌に記事を載せ、脚本を書き出したところ「JuNO/ジュノ」でアカデミー脚本賞、「ジェニファーズ・ボディ」は死霊に取り憑かれた高校のチア・リーダーが男子生徒をつぎつぎ殺すオカルト映画で、監督がカリン・クマサ。クマサが監督した「イーオン・フラックス」の主演がシャーリーズ・セロン、本作でセロンの高校時代の恋人に扮するパトリック・ウィルソンはこのあと「プロメテウス」で再びセロンと共演。人間関係がグルっと円になっています。「モンスター」以後これといった出演作は「スタンド・アップ」と「あの日、欲望の大地で」くらいだったと思うのよね、セロンは。添え物みたいなパッとしない女を演じて数年、息を吹き返した主演作が本作だった。でもこのあと「スノー・ホワイト」も「プロメテウス」も、映像だけでみせるこけおどしの映画だったわ。いくら話題作で監督のネームバリューがあるにせよ、自分らしい役をもう少し吟味しなくちゃ。量産できる体力と才能はディーバの大事な条件だけど、それにはあくまで「主役で」というくくりがある▼だったら本作は吟味したのか。それは知らんが、屈折した強い女プラス最恐のわがまま女を発揮した点では成功作だった。性格が悪くて根性がきつくて、頭はいいが口を開けばイヤミがほとばしり、つきあいきれないがそのくせ哀れで捨て切れないという、かなり分裂気味の疲れる女というのが今回のメイビスです。かつては片田舎の高校の学園の女王。いまは37歳バツイチ、ミネアポリスでゴーストライターとして人気小説を書いてきたがそのシリーズも最終回を迎える。将来の設計も収入のあてもなくアパートで二日酔いの朝、メールにモト彼のバディ(パトリック・ウィルソン)から娘の誕生祝いのパーティーのメッセージが入る。バディは自分に気があるのだ。過去の栄光に取り憑かれたメイビスはクーペに飛び乗り一路故郷をめざす▼セロンがヨレヨレのTシャツを着て冷蔵庫からペットボトルのコーラをラッパ飲みという「ダメ女全開」で登場。田舎町につくや念入りなメーク、バチッと着替えてバーに入りあたりを睥睨する。おずおずと声をかけてきたのは同級生のマット(パットン・オズワルド)だ。彼は在校中メイビスに憧れていたが高嶺の花で、ロッカーにラブレターをいれるしかなかった…そういえばあの時から「あなたデブのチビだったわね」とメイビスは完全に哀れみの眼差し。彼はいじめにあってリンチを受け、下半身が、できないわけではないが不自由らしい。杖をついて歩き経理職についている。メイビスの冷たい視線は冴え渡る。セロンの意地悪度満開、水を得た魚の冷え冷えした美貌とはこれを言うのでしょう。バディに会うため帰ってきたとメイビスから聞いたマットは不吉な予感に襲われる。彼は幸福な結婚をして子供に恵まれた、奥さんはいま妊娠中だ、トラブルを持ち込むなと忠告するがモト女王はかす耳持たぬ。このあたりから映画は完全にセロンのペースになっていきます。こういう女を許せるのだろうか、なんて人間観はメイビスの辞書にはない。わたしの魅力の前にだれしもがひれふしてトーゼン。頭にはそれしかないからだれに会おうと見下す目つき。メイビスが町に現れたとわかったとたんかつての同級生たちは汐が引くようにさがり悪口を言い募る。嫉妬はサクセスの代償、あんな連中が何人かかって来てもゴミ同然とメイビスはますます意気軒昂である。両親だけは娘が世間からどう見られているか正しく理解している。大都会で成功したかもしれないが(アメリカでゴーストライターは表紙の裏に名前が入る)…高慢チキで人をすぐばかにするのは満たされていない、飢餓感の裏返しだ。親にはそれがわかる。だからかわいそうでならないのだが肝心の娘だけが自分の心の真実に気づかない。気づかないだけならまだしも、その飢餓感は気の強さとあいまって、攻撃性を伴っているから(うわー、こりゃちょっと)メイビスが非常にアブナイ女だということが観客にもわかってくる。いよいよセロンの真価発揮である▼最後は、セロンは再起不能なまでに現実に叩きのめされ、チビ、デブと軽蔑していたマットに「抱いて」とすがります。マットは受け入れさてメイビスはどうする。翌朝マットの妹が台所にいた。彼女は田舎の人々がメイビスに辛くあたるのは羨ましいからで、だれもあなたがやってのけたことをできない、みな意気地なく最低だ、メトロポリスに帰るなら自分も連れて行ってくれと頼む。メビウスはじっと彼女をみつめ「ここにいるのよ、サンドラ」とだけ言う。監督も脚本もどっちの肩ももっていない。無意味な説明もしていない。生きることって自分が自分で人生のつぎのページをめくる、たったそれだけのことだ。メビウスはマットとの一夜限りの幻想からも覚め町を去る。このときのセロンがかもす冷え冷えした空気は、ひとまわり大きくなったヒロインを感じさせて新鮮だ。

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