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特集「女のわがまま」

2013年3月6日

特集「女のわがまま」 レミング (2005年 サスペンス映画)

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監督 ドミニク・モル
出演 シャーロット・ランプリング/ローラン・リュカ/シャルロット・ゲンズブール

狂気のわがまま殺人 

 自分の復讐を果たすために主人公アリス(シャーロット・ランプリング)はこういう手順を踏みます。誘惑・自殺・憑依・実行。これほど用意周到なら人様に迷惑をかける自殺でなくても他の方法がなんぼでも考えつくやろ、なんていうのはちょっとお待ちを。そこがモル監督の設定する狂気の世界なのです。ヒロインはアリスではなく若い夫婦、つまりアラン(ローラン・リュカ)とベネディクト(シャルロット・ゲンズブール)ではないかというご指摘はあると思いますが彼らは被害者であって、彼らを振り回す主人公といえばやはりアリスだよ。ファーストシーンに優秀なエンジニアとその妻が暮らす、閑静な住宅街の瀟洒な住まいが現れる。モル監督は青年の勤務先の社長夫婦をディナーに招待したときからすべてが狂い始めたと、はっきり前提条件を示している▼シャーロット・ランプリングはのっけから異様な風体で出現する。黒のドレスはいいとしても、ディナーの席にサングラスで現れ、テーブルに座ってもはずさない。挨拶もつっけんどん、社長のリシャールがとりなすと「なぜ訪問が遅れたと思う? 彼が寸前まで娼婦といたからよ」びっくり発言で一座は凍結。うまいワインだとかなんとか社長はつくろうのもなんのその、アリスはビシャッとワインを夫にぶっかける。晩餐どころではなくなり社長は妻をつれてほうほうのていで引き上げる。ランプリングはこのとき59歳。彼女どっちかというと三白眼でしょ、黒目より白目の面積が広いのよ。だからお世辞にも黒目勝ちの瞳がきれいな女優とはいえないのだけど、そのかわり妖しい光を発するのよね。特に白目が。ランプリングの年齢にかかわらぬ(このときもそうだけど)ほっそりした肢体を、子鹿のようだという人もいるけど60歳になろうというときに、子鹿なんてカマトト以外のなにものでもないでしょ、気色悪い。それよりね、スクリーンでも白目がきらきら光っているのがよっくわかります▼案の定アリスはアランを誘惑するがアランは「そんなことするのは正しくない」優等生の回答でアリスを退けるものの内心は反対。アリスに関心アリアリで「なぜご主人と別れないのです」と聞いちゃう。「あいつがくたばるのが見たいからよ」とアリスが答え、この殺意が劇の根幹をなします。ある日アリスがふらりとアラン夫婦の家を訪ねる。ベネディクトはいやいや中にいれる。早く帰ってほしいがアリスは疲れたから横にならせてくれと頼む。しかたなく二階の寝室にあげるとなにやら大きな物音をたて、飛んで上がるとアリスが拳銃自殺していた。この日からベネディクトは人が変わる。アリスの夫リシャールを誘惑しアランはのけもの。あろうことか山小屋の別荘に置いてきぼりにしアランは300キロの帰路を歩く羽目に。途中車をつかまえのせてもらったもののベネディクトに対する憤懣やるかたない。ベネディクトはかつての初々しい妻とは様変わり、底力のある低音で、脅すようにアリスがアランにもちかけた行為をなぞってみせる。わたしに隠しているけど、あなた、本当はアリスにこんなこと言われたでしょと諳んじるのだ。アリスがベネディクトなのか、ベネディクトがアリスなのか夫は錯乱状態。深夜ベネディクトがベッドのそばに座り話しかける。しかしよくみればいつのまにかそれはアリスに変わっているのだ▼アリスはもとの平和な家庭と妻を返してほしいならこうやれ、ととんでもない条件を与える。自分は夫がくたばるところをみたら成仏してやるから今から実行しろ、屋敷の鍵はここへおいておく、くれぐれも自殺にみせかけ余計な疑惑を招かぬようにと、わがままをおしつけさすがに悪いと思ったのか、最後に親切なアドバイスもして消えた。アランは夢かと思ったがテーブルには鍵があった。映画はアリスの筋書き通り運びます。翌朝ベネディクトはふだんとかわらぬ妻に戻っており、今までの悪夢はきれいさっぱり洗い落ちている。アリスはすぐ約束を実行したらしい。いちばん割をくったのは妖怪妻をどうにもできなかった社長ということになります。思い余って夫はわたしを殺そうとした、と劇中アリスは言っていましたから自分でも厄介な性格だとわかっていたのでしょうね。レミング? ああ近所の子供が休暇を過ごした北欧から、親に隠して持ち帰ったのですって。ベネディクトは最初死にかけていたレミングを獣医に連れていき元気にして可愛がるのですが、ラストでは夫が殺したレミングの死体をゴミ箱にポイ。人が違ったような冷たい仕打ち。ひょっとしてアリスはベネディクトのどこかにまだ残っているのかも。

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