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特集「女のわがまま」

2013年3月9日

特集「女のわがまま」 ブーリン家の姉妹 (2008年 事実に基づく映画)

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監督 ジャスティン・チャドウィック
出演 ナタリー・ポートマン/スカーレット・ヨハンソン

アンとメアリとエリザベス

 原題は「ブーリン家のもう一人の娘」。史実に現れるブーリン家の娘はアンだから、もう一人の娘とは妹のメアリですね。つまりメアリ(スカーレット・ヨハンソン)から見た姉アン(ナタリー・ポートマン)という視座から本作は構成されています。野心に満ちた気の強いアンが自我を貫いて破滅に至り、やさしく控えめで父や王のいいなりになってきたメアリが愛にみちた平和な家庭を得ます。どっちが幸福か不幸か比較にはならない。国外追放のあげく首を刎ねられたものの、波瀾万丈の生き方をしたアンも、歴史の表舞台に出ることなく姉の影でひっそり生きたメアリも、思う存分生きたことでは変わりはない。それにしてもアンの「思う存分」は「やるなあ」と今みても驚嘆せずにいられない。自我の強さのスケールが違います。狙うはあくまでも王妃の座。カトリックだから離婚できないという王に「自分以外の人間のいうことなんか聞く必要はない、イギリス教会をたちあげ、あなたが宗教界のトップになりなさい」なんていってのける。ヘンリー8世はイングランド王室最高のインテリであり、ラテン語、スペイン語、フランス語に長じ、音楽を愛し作曲までしたという一級の人材だが、ズバッと本質に切り込んではらわたをひきずりだす、そんな天性の鋭さはアンのほうが上でした。始めから終わりまでヘンリーはアンに鼻面を握られ引き回されるのです。積もり積もったうっぷんが、無実であろうとなかろうと問答無用の斬首、という過酷な刑になったのでは。ヘンリー8世はしかし教会離脱が現実にひきおこす悲惨な結果が読めていた「わかっているのか、国を分裂させたのだぞ」とアンに怒鳴りますが男の文法は女に、とくにアンには通用しません。アンのトバッチリを食い、トマス・モアらこの結婚に反対する良識ある側近たちは処刑され、修道院の資産は没収されるなど、王は苛烈な処理を断行し、知性派の一面暴君とも呼ばれることになります▼しかしまあブーリン家の男たちの浅ましいこと。時代が時代でいくら女は出世の道具だったとはいえ(日本もそうだったけどね)父と叔父(ノーフォーク公爵家)はまず美貌のアンを差し出す気だったけど見初められたのがメアリだった。メアリは男子を産むが産後の肥立ちが悪く王はベッドから遠のく。スキャンダルを起こしフランスに所払いになっていたアンが呼び返される。フランス宮廷ですっかり洗練されたセンスを身につけたアンは、たちまち頭角を現し王の関心をひく。姉妹の母は男たちがつぎつぎ娘を生贄のように(事実そうだが)王に差し出すのが見ていられない。フランスの宮廷にアンを預けるとき「王妃のふるまいをよく観察しなさい。主導権は男にあると思わせ男をあやつるのが女の奥義です」と言い含める。帰国したアンはその奥義を発揮したか。したと思いますよ。アンなりのやりかたで、というのは主導権を放さず王をあやつろうとしたのですから▼メアリはこの映画で見る限り本当に性格のいい娘です。さんざんアンにひどい目にあいながら姉を恨まない。ヨハンソンがちょっと口を半開きにして、文字通り姉のやることに「開いた口がふさがらない」妹を好演しています。アンに男子が生まれず王は不機嫌。メアリとちがい何かあるとビシビシ隙を突いてくる王妃が疎ましくなり、近親相姦罪をでっちあげロンドン塔でアンを処刑します。メアリはアンから託された「エリザベスをお願い」を守り2歳半の姪をわが子とかわりなく育てます。これがのちのエリザベス1世。イングランド史上最大の繁栄をもたらした英君をアンは産み落としていたのです。運命はアンを死なせその娘を世に送り出した。姉妹はふたりとも聡明だったがメアリは忍耐強かった。権力を握ったからといって、思った通りなで斬りにするばかりでは、命がいくらあってもたりないのが君主です。メアリのもとで忍耐と寛容を学んだエリザベスは正解だったと思います。

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