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特集「女のわがまま」

2013年3月11日

特集「女のわがまま」 クリスチナ女王 (1933年 事実に基づいた映画)

監督 ルーベル・マムーリアン
出演 グレタ・ガルボ/ジョン・ギルバート

 「肉体と悪魔」に引き続きグレタ・ガルボです。とくに選んだわけじゃないのだけど、ガルボの映画にはわがままやり放題で開いた口がふさがらんような女がいっぱい出てくるのです。そんな作品に限って大ヒットしている。当時女の美徳は夫を立てよき妻として家庭を守る良妻賢母でしたから、それを蹴とばす「わがまま女」に女性たちは溜飲をさげたのかもしれません。代表作がこれ「クリスチナ女王」でしょう。ガルボの母国スエーデンの実在する女王の物語です。学芸を愛し知性をうたわれ、金に糸目をつけず芸術品を収集し、そのため財政破綻を招いたが、本人は「わたし、お金の勘定は苦手なの」苦手もヘチマも、勘定などしたことがなかったにちがいない。映画にも登場しますが、彼女はわずか5歳で父王戦死のあと即位します、5歳の女の子がちょこちょこと玉座に座り王冠をいただくのは、悪趣味としかいいようのない滑稽さですが、このとき王冠を授けるのが「国家という船にたったひとり宰相を乗せねばならぬとしたらこの人物しかいない」と欧州各国のトップが嘱望した、忠臣にして名宰相オクセンシェルナ。彼が一生を捧げて彼女を補佐するのです。もちろんお金のやりくりをふくめて▼彼女の美への志向はほとんどビョーキで、気に入ったものとなるとほしくてたまらない。父王が戦死したのは30年戦争ですが、彼女は戦後処理をスエーデンに圧倒有利で締結させた、これがいわゆるウェストファリア条約で、これによってスエーデンはドイツ北方を領土に、バルト海をはさんだ大国となります。たいした政治手腕です。いやいやそればかりか、ものはついでとばかり敵側の美術品をごっそり国に持って帰った強引さも特筆すべきでしょう▼ものすごい勉強家で、日の出とともに読書を始め、知識欲のおもむくところ各国の叡智を招聘した。近代哲学の祖デカルトもお招きにあずかりました。デカルトは当時50歳でしたから、勝手のわからぬ外国なんか行きたくない、ぐずぐずしていたらなんと、女王は軍艦で呼びにきた。あまりの麗々しさにさすがのデカルトも飛び上がってしまった。講義はもちろん女王とマン・ツー・マン。女王は国王の激務の合間に勉強するのであるから時間をひねりだすのがたいへんである。であるから執務を始めるまでの早朝を講義に充てた。北欧ストックホルムの朝5時といえば氷柱ができている時刻、フランスではぬくぬくベッドにおれたのにトホホ。デカルトはとうとう肺炎を起こし、女王にみとられ彼の地で没しました▼映画ではスペインの大使と恋におち、忠臣オクセンシェルナのいさめもきかず退位。あっさり王位を従兄カールに譲る。映画では恋人が決闘で命を落とすと、二人で約束した地に埋葬してあげると、見知らぬスペインへ帆をあげ出港。女王は死骸とともに旅立つのです。ようこんな薄気味の悪いことするな。しかもこれスエーデン政府から、我が国の女王は男に現(うつつ)を抜かすようなヤワではなかったと抗議があったそうですよ。退位の理由は世継ぎをつくる気がないという説を映画は取っています。退位してヨーロッパ各国を歴訪し、ローマに落ち着き母国の資産で余裕の暮らし。オペラ劇場を創設したりローマ・アカデミーを創立したりして市内のフォルネーゼ宮で30年に及ぶきままな生活を謳歌します。63歳没。ローマ教皇の特別なはからいで彼女はサン・ピエトロ大聖堂に眠っています。ミケランジェロの有名な「ピエタ」のそばに。これ以上なにをかいわんや▼ガルボに話をもどすと、スエーデンからきて端役をもらったとき週給350ドル。それから600ドル。「肉体の悪魔」の大ヒットで一挙に5000ドル。「クリスティナ女王」では30万ドル。頂点ともいえる座にあったときの突如の引退は、いろんな憶測がなされましたが本人は緘黙しました。ジョギングしているガルボにたまたま出会ったビリー・ワイルダーが「もし映画をやるならなんの役をやりたい」ときくと「クラウン(道化)」がいいと答えた。素顔をみせたくなかったのでしょう。冷たいいいかたをすれば女優とはしょせん浮き草の人気稼業であり、いい潮時に「退位」すべきだと判断したのかもしれない。引退はガルボという女優との告別であり過去の埋葬でした。一行の自伝も残さなかったのも、いいたいやつがいればなにをいってくれてもけっこう、という孤高なものを感じませんか。