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特集「女のわがまま」

2013年3月12日

特集「女のわがまま」 ヴィクトリア 禍いの家の花嫁 (1986年 事実に基づいた映画)

監督 マイケル・ローリン
出演 ジョディ・フォスター/ジョン・リスゴー

どうやって殺した? 

 1986年といえばジョディ・フォスター24歳。「他人の血」(監督クロード・シャブロル)や「ホテル・ニューハンプシャー」(監督トニー・リチャードソン)ら英仏の(つまりハリウッドから離れた)一流の監督のもとで話題作に出演していたときです。女優としてワンランク上を狙った実力涵養時代といっていい。事実この2年後彼女は「告発の行方」でアカデミー主演女優賞に、その2年後「羊たちの沈黙」で二度目の同賞に輝きます。大体フォスターのイメージに「わがまま」という感じはあまりない。ないと思うのです。どちらかといえば刻苦精励・努力型のクールな女性である。でもねー、なんというか心の中に鬼火を燃やす女っていうのがホントは似合うのですよ。この線をもっと掘り下げたら追随を許さぬ女優になると思うのだけど。最近の「おとなのけんか」でポランスキー監督にちょっと赤肌をめくられたような演技をらくらくとこなして、さすがだなと思いました。まあまあの線というか、やりやすいところに安穏としていてほしくない女優さんですね▼本作は日本で未公開でした。内容が暗いというか、ヒロインの悪女ぶりに同情できないというか、あんまり好かれる女ではないと思えます。私生児として生まれた女児ヴィクトリア(ジョディ・フォスター)が孤児院に預けられて成長し、オリバー・トンプソン(ジョン・リスゴー)という中年の男性が面会にきて、いきなりプロポーズする。孤児院の院長の勝手でこういうことができたらしい。時代は19世紀のニュージーランドです。オリバー家に嫁いだ彼女は夫が手広く食料品の製造販売をしている実業家だとわかる。舅は男女差別も甚だしいおじいさんで(この時代では普通なのだろうけど)夫は事業拡張にかかりきり、ヴィクトリアは工場を見学させられるがひとつも関心がわかない。ピアノを弾いていると夫の弟が声をかけ、やっと趣味を同じくする相手を見出した思いでほっとする。これが恋の相手になります。趣味といえば夫の趣味はまあ、隣の部屋からヴィクトリアの着替えを覗くこと。たまたまそれがわかったときのヴィクトリアの嫌悪は頂点に達する。もうこんな男と一瞬も暮らしたくない、でも家をでていくところもない、弟は夫と舅の策略で島流し同様になり、しかも死んだことにされている▼毎日が失意の日々ですがある日探しものをしていたら、弟からの手紙をみつけた。彼は生きていて、再会できる日を恋焦がれている。ヴィクトリアは自分が罪にならず夫を殺す方法を考えます。思い込んだらとことん鬼火を燃やすフォスター姉御であります。映画は冒頭裁判のシーンから始まっています。ヴィクトリアが夫殺しの罪で起訴されたのですが、弁護側はなにを証拠に被告が夫を殺したというのか、証拠をだせと検察を責め立てる。当然ですよね。検察の言い分は情況証拠だけで物的証拠がない。死因はクロロホルムを飲んだことだが、争ったあともなければ皮下注射のあともない。どう考えても夫が自分で飲んだとしか思えない。舅はそんなばかなことをだれがやる、鬼嫁が殺したに決まっていると言い張る。しかし妻がいかなる甘言を弄しようと、命を落とす薬物をヘイヘイ飲む夫がいるか?▼裁判は膠着し証拠不十分でヴィクトリアは無罪。終始青ざめた顔で証言をきいていたフォスターの表情に、かすかな(ホッ)がみえたのは医師が「被告は自分で薬物を飲用したとしか考えられない」と証言したときだ。たしかに夫は自分で嚥下したのです。でもなぜ。もちろんこの伏線はちゃんと張られていますが、結果としてヴィクトリアは恋人のもとに天下晴れて走ります。可哀想なオリバー。のぞき趣味のために嫌われ殺されるなんて。妻の裸なんかいちいち覗かんでもいやというほど見られるのに、いやいや、目の前をパンティ一枚で横切っても興味なくなる日もこようというのに。オリバーは確かに悪趣味ではありますが仕事は熱心で事業拡張に意欲的、もちろん経済的に困窮させたわけじゃなし、意地の悪い舅はいたかもしれんが順番としては先に死ぬのだし、性急に夫の命まで奪わんといかんものか。確かに義弟への恋心やオリバーの暴力もありましたが、殺しの動機はヴィクトリアの生理的な嫌悪でしょう。嫌いとなったら我慢できない。で、殺しにまで突っ走るのですが、そのくせ手段が冷静沈着というところがこわいですよ。