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シネマ365日

2013年3月14日

特集「男の顔 チャールズ・ブロンソン」 夜の訪問者 (1970年 アクション映画)

監督 テレンス・ヤング
出演 チャールズ・ブロンソン/ジェームズ・メイソン/リブ・ウルマン/ジル・アイアランド

ポール・カージーの原型

 「ロシアより愛を込めて」や「暗くなるまで待って」のテレンス・ヤング監督にしてはちょっと食いたりないのです。どこがというと、うーん、キャスティングかなあ。ブロンソンの妻ファビエンヌにリブ・ウルマンでしょ。夫婦仲がよくないことをはやばやと観客に教えるためなのだろうけど、彼女が思いつめた目でジーッと夫ジョー(チャールズ・ブロンソン)を見つめるところはベルイマン映画みたいな重苦しさ。ブロンソンはそんな妻の心の影を全然気にせず、倦怠期なんてどこの夫婦にもあるさ、そのうち風向きしだいでどっかにいく、とりあえず「愛しているぜ、ハニー」でまったくアメリカの男(彼はマルセイユで釣り船のオーナーをして観光客を乗せて沖に出るのが仕事)。船乗り仲間と陸にあがれば陽気にポーカーをやり、飲み歩き「わたしより犬にやさしい言葉をかける」という妻の怨嗟の言葉も「気にしない、気にしない」と受け流す▼でも彼は愛妻家なのだ。家族のため妻のため、愛するもののため戦うヒーロー像という意味では、本作は「復讐の天使」ポール・カージーの原型だ。登場するブロンソンはもちろんワケあり男である。無言電話があったと妻にいわれた矢先、かかってきた電話にでたジョーは妻に二階にいって鍵をかけておけと指示する。ファビエンヌは二階に隠れていたがただならぬ物音に降りてみるとジョーが伸びていた。その男はジョーの過去に後ろ暗いところがあることをにおわせる。気がついたジョー隙をみて男の首の骨を折って殺す。男の死体を断崖から棄て帰宅するとうさんくさい男三人がジョーを待ち受けていた。ロス(ジェームズ・メイソン)とカタンガにファウストだ。ここでやっとジョーの正体がわかる▼5人は過去にいっしょに刑務所を脱走したが警官にみつかり、ジョーは4人を置き去りにして車で逃げ4人は刑務所に逆戻り。刑期を終え出所してイの一番にジョーに仕返しにきた。もうひとつの目的はジョーが釣り船を持っていることを幸い、操船させてアヘンの取引に使おうという魂胆だった。翌日カタンガを乗せてアヘンを取りにいくふりをしたジョーはカタンガを注射で眠らせ空港に向かう。ロスの愛人モイラ(ジル・アイアランド)が到着するのだ。まんまと言葉巧みにモイラを誘拐したジョーは、ロスの人質となっている妻子と交換する条件を出す▼モイラって頭の弱いお嬢ちゃん、っていう感じで登場するのよ。ジルはあの通りオードリー・ヘプバーンに似た美人でしょう。顔にしても態度物腰にしてもギャングの情婦っていう役どころではないのよね。にらみつけたところで莫連女の凄みがないし「バカヤロー。殺してやる」と口いっぱいののしるのだけど効き目がうすいなー。ジョーはロスらを連れてモイラを監禁した小屋に連れていくのだけど、カタンガが銃を乱射してファウストが死にロスは重傷を追う。間の抜けた話よね。出血多量でロスは数時間しかもたない。病院へいくにも動かせない。医者を連れてくるしかない。さあ、だれが行く。ジョーとモイラがいくことになる。ジョーは妻と娘が人質にされ、ジョーはモイラを人質にとることによってお互いを牽制するのだ▼このへんがよくわからないのだけど、要はカタンガひとりをやっつければいいわけでしょ。なんでこうくどくど男の約束だとか部下を信頼するとかしないとかいって問題をひねくりまわしているのですか、このヒマな男たちは。ジョーは医者をつれ律儀に戻ってくるが結局ロスは死んでおり、死ぬ間際にジョーの妻子に「逃げろ」といって自由にした。出血多量で意識がもうろうとしてきたロスに何杯もコーヒーを飲ませて気をしっかりさせるより、ロスの拳銃をひったくってカタンガを撃ち殺すほうがよっぽど理にかなっているのではないだろうか。ロスも女子どもの足で逃したとしても逃げ切れない、どうせカタンガに殺されることくらいわかっていそうなものだ。だったら裏切り度想定100%男(カタンガのこと)を道連れにして死んであげることが人助けだと思わなかったのだろうか。まだある。モイラはどこへ行った。ジョーといっしょに帰ってきてロスの遺骸にとりすがり、そのあとどうなったのよ。死んだふうもなかったし銃撃戦から脱出したふうもなかったし、火事場を逃げる姿もみかけなかったが。結局「もうどっちでもいいや」と思わせるのがこの映画だったのだ。