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シネマ365日

2013年3月15日

特集「男の顔 チャールズ・ブロンソン」 ストリートファイター (1975年 アクション映画)

監督 ウォルター・ヒル
出演 チャールズ・ブロンソン/ジェームズ・コバーン/ジル・アイアランド

ブロンソンの肉体

 たとえば、と想像してみる。チャールズ・ブロンソンがアロハを着てウクレレを手に歌っている。常夏の浜辺はパラソルの下、妻と子どもたちといっしょにソフトクリームを舐めている。鼻の頭にクリームがつき、ペロンと舌をまきあげる…書いているうちになんだか気色が悪くなってきた。ダリかキリコのグロテスクな絵みたいだ。それでなくてもブロンソンの顔って、笑っているのかいないのかわからない。怒っているのか怒っていないのかもわからない。かといって無表情であると片付けるにはちょっとためらう。そうなのだ。彼にとっては世間で起こるいろんなことは、とくにいやなこととつらいことはしこたま経験してきたから、いちいちびっくりしておれない、と言ってつきはなすのでもない、ちゃんとみてとっているが自分で決めた車間距離を縮めようとしない▼そんなブロンソンの顔で「ストリート・ファイター」は始まる。時代は1936年の話だ。貨物列車に乗ったブロンソンが立ったまま外をみている。のどかな田園風景だ。つぎは小さな町に着くのだろう。線路のそばのトラックの荷台に子どもたちが乗り、ブロンソンを見ている。ブロンソンは鳥撃ち帽をかぶり着古したジャケットを着て、口ヒゲを落としている。独りのときもそばにだれが何人いても表情の変わりそうにない顔だ。ブロンソンの顔について書き出すと映画はそっちのけになる。映画をみるのか彼の顔をみるのか、どちらかといえば後者になる。タキシードのブロンソンもいいが、やっぱり裸になったときのブロンソンは特別だ。顔のつぎは体かよ、と思わないでほしい。体の表情を言っているのだ。この映画でブロンソンはするっとシャツを脱ぎ何度も裸体の上半身を見せる。ことわっておきたいがそう立派な体ではない。低くこそないが目立つほど背が高くもないし(共演のジェームズ・コバーンが190センチ以上の長身だからよけい小柄にみえる)例えばシュワちゃんのような、隆々たる美々しい筋肉ではない。一流のボクサーやアスリートに備わっている、光るような筋肉ではない。毎日つるはしをふるう炭鉱夫とか、漁船に乗って網を打ち、魚を引きあげる猟師とか、獣を追って山を走る狩人とか、重い船荷をあげおろしする沖仲仕とか、男の生活のにじんだ筋肉なのだ▼ブロンソン扮する旅の男チャニーは、降りた町でストリート・ファイターのマネージャーをしているスピード(ジェームズ・コバーン)に「おれに賭けろ」といきなりもちかける。この二人が出会うときのブロンソンがいいのだ。賭け試合で負けて賭け金をすってしまったスピードが食堂で生牡蠣を注文し、トレーにのせて振り向くと、自分のテーブルに見知らぬ男がひっそりと座ってこっちを見ている。おどおどしているわけでも威嚇しているわけでもない。リラックスしているのに隙がない。すました山猫みたいである。ブロンソンは音もたてず視線も動かさないが、神経の筋一本も緊張しておらず、しなやかで余裕たっぷりであることがすぐわかる。「用があるなら言ってくれ」とスピード。「おれに賭けろ」「???」何者だ、この男。それはあとまわしにしてスピードは言下に「その年じゃ無理だ」とあっさり言う。ブロンソンはこのとき54歳。鬢に白いものがまじっていた。返事もせず相手をみつけろという流れ者にスピードは半信半疑で試合を組む。あんなジジイをだして気でも狂ったかという野次が終わらないうちにブロンソンは一撃で相手を倒す。スピードはろくにモノをいわないブロンソンにあれこれ問いただし、彼が金を入り用としていること、ストリート・ファイターで稼ぎたいこと、金を稼いだらちがう町へいくことなどがわかる。スピードは自分の生まれ故郷のニューオリンズでファイトをやることにした。暗い不況のなか。貧しい町はジャズが流れ場末の飲み屋にはその日暮らしの労働者があふれていた。安いアパートを借りたブロンソンは、どこかで猫を拾ってくる。それも大きな猫だ。ブロンソンは特別可愛がるふうでもないが、子猫でもない猫がなつくのだから、この人間は猫好きだと見破ったにちがいない▼連戦連勝でブロンソンは勝ちまくる。スピードはもうけた金をみな博打ですって、金貸しから借りた借金がはらえず脅されていた。ブロンソンの強さに一儲けをたくらむ地元の事業家は、スピードに試合の権利を半分譲れば借金を肩代わりしてやるという。金貸しはスピードを人質に金を返せと迫っている。スピードがどうなろうと知ったことではない、儲けさせるだけ儲けさせたのにバカな男だ、おれはそろそろこの町をでる、とブロンソンは老トレーナーに言う。しかし、ギリギリになって、やっぱり見捨てておけない。ブロンソンはファイトの場所に姿を現す。最後のファイトは10分くらい続きます。男の肉体と肉体がきしむようなアクションです。CGなんか犬にでも食われろ、なんて思っちゃいますね。