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シネマ365日

2013年3月21日

悪女 (2004年 文芸映画)

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監督 ミーラー・ナーイル
出演 リース・ウィザースプーン/ロモーラ・ガライ

虚栄なくして人間なし 

 原作はサッカレーの「虚栄の市」。イギリスが植民地帝国として世界に乗り出していたヴィクトリア朝時代に書かれました。小説及び映画の舞台は19世紀初頭、ナポレオン戦争が背景にあります。「悪女」という邦題がどうもピッタリしないのよね。これヒロインの一人ベッキー(リース・ウィザースプーン)のことをさしているのだろうけど、悪女どころか彼女はとてもいいやつだ。頭がよくてしっかりしていて友達を大切にし、トラブルの処理能力に長け、厳しい差別階級の抑圧に目をくらまされず本質を見抜く。計算高いというが当然であろう。女が生きていく道は、結婚か修道院か家庭教師(女性が学べる教育機関がそもそもなかった)か娼婦か芸人である。そんな限られた選択肢のなかで、積極的に自分の能力を伸ばそうとすれば、あっちでぶつかりこっちでぶつかり、それを上手におさめていく女は計算高いという見方しかされなかったのだ▼本作のヒロインはベッキーとアミーリア(ロモーラ・ガライ)だ。ベッキーは子供の時両親に死に別れ、女学校の小間使いにされる「この娘はめっけものですよ。孤児だからいくらこきつかっても文句をいってくる者はいません」と売り飛ばされたのだ。ベッキーはここで忍耐と人間の裏を学ぶ。成長し女学校卒業の年になって、同級生のアミーリアが実家の家庭教師に招いてくれる。彼女の家は名家の富豪である。ベッキーにたったひとりやさしくしてくれたのがアミーリアなのだ。しかしお嬢さんの常というか、あまりに人が好くて(なんでこんなプレーボーイに)とベッキーが唾棄する青年ジョージと婚約する。ジョージはさかんにベッキーに色目を使っている。ベッキーの美貌と才覚はたちまち田舎の金持ち男たちの注目を集めるが、簡単にはなびかない。彼女の狙いは大きいのだ。大富豪の甥ロードンに目をつけ秘密に結婚するが、身分差のちがいに富豪女史は怒って甥を廃嫡する。そしてナポレオン戦争勃発▼ジョージもロードンも召集される。ベッキーもアミーリアも妊娠している。避難民でごった返す街道を、てきぱき馬車を手に入れたバッキーは乗りかけて(あっ)。アミーリアが人ごみに踏み倒されそうになりながらよたよた大きなお腹をかかえて歩いているのだ。「何をしているの、こんなところで、乗るのよ、早く」手をひっぱって馬車まで戻るがあと一人しか乗せられないという。とろくさいアミーリアだけ戦火の中に残しておけない、ベッキーは自分も残ることにする。悪女にはなかなかできませんでしょ▼ふたりとも無事息子を産み落として12年後。アミーリアは寡婦として、ベッキーは無事帰国したロードンの妻として家庭にいた。ロンドンで今をときめく侯爵の目にとまったベッキーはついに社交界デビュー。侯爵の妻、母、姉妹をオペラ歌手だった母親譲りの歌声で涙ぐませたベッキーは第一関門突破。女のうるささに比べたら男なんか…ベッキーはインド人の群舞のなかで舞姫に扮して男たちの度肝を抜く。妻にむらがる男たち。ロードンだけが面白くなくとうとう侯爵を階段から突き落とした結果左遷。僻地で黄熱病にかかり死んでしまった▼牝ギツネ・ベッキーとか疫病神ベッキーとかいわれるようになるのだがベッキーはヘッチャラだ。いつでもどこでも振り出しからやってやる。雨に打たれスカートを泥まみれにしながら、カバンひとつひきずって就活してきた。しかしこいつだけはなんとかならんのだろうか。そう思うのがアミーリアである。彼女を心から愛している男をベッキーは知っている。公務員だから裕福ではない、しかし実家が倒産したアミーリアからみればありがたい安定収入ではないか。彼はどうなの、再婚すればとベッキーがすすめると「いいお友達でいてほしい」そして自分はジョージに永遠の愛を誓ったのだという。ジョージはとっくに戦死したのである。とうとうベッキーは(ケッ)と「ジョージが戦地に行く前にくれた手紙よ。読むわね。愛しいベッキー。ぼくを憂うつから救ってくれ。僕と逃げて楽しく旅でもしよう。ジョージ。アミーリア、これがあなたの最愛の人の正体よ」泣き崩れるアミーリアに「まだあの人を取り返せるわ。早く行くのよ。早く」とベッキーは男のもとへ走らせる▼で、ベッキーはどうなるか。ベッキーもいろいろ苦労しましてね、まあこのへんで手を打ってもいいか、そう思ったのでしょうね。新天地インドへいっしょにいこうと言ってくれた、昔袖にした男とインドへ行きます。本作にはさかんにインド、インドとでてきますが、それもそのはずサッカレーはカルカッタ生まれで父は東インド会社勤務。彼のふるさとなのです。虚栄はしこたま描かれますが、最後の最後にはその虚栄さえも愛する人間讃歌があります。虚栄なくして人間なし。ひとつもチマチマしていない、スケールの大きさを感じさせるヒロイン・ベッキーがなかなかいいですよ。

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