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シネマ365日

2013年3月22日

顔のないスパイ (2011年 サスペンス映画)

監督 マイケル・ブラント
出演 リチャード・ギア/トファー・グレイス/マーティン・シーン

理解に苦しむ映画

 前半まではグイグイひきずっていって「おおすごいぞ」と思うのに、カシウスの正体がばらされ、その先の興味がなくなってしまうのよね。そのつもりで見ると原題の「ダブル」なんて始めからネタバレみたいなものだし邦題の「顔のないスパイ」にしても「ああ、そういうことナン」といかにも素直に粗筋がつかめてしまう。ひねくったあげく人をばかにしたドタバタアクションよりましかもしれないけど、だからといっていい映画かといわれたら「期待はずれ」の一言だろうな。前半のキレがよかっただけに、中盤からの失速が惜しいわ。冒頭のメキシコ国境の警備員殺害や、アメリカに入国しようとする一団がなにものなのか、因果関係が明らかになるころはすべてネタバレ。もうちょっと手練手管を弄するほうがいいのに。こういっちゃナンだけど、映画本来の物語の面白さとか、どんでん返しとか、トリックとか、だましのテクニックとか、小道具・大道具の念の入れ方とか、偏執狂的な時代考証とか衣装とか、これでもか、これでもかとつくづく堪能させてくれるのがスパイ映画だと思うのだけど▼メキシコの砂漠の越境から半年、ワシントンでロシアと密接な関係をもつ上院議員が殺される。手口から浮かび上がったのは伝説のスパイ「カシウス」。彼は死んだはずだった。CIA長官ハイランド(マーティン・シーン)は、カシウスをリーダーとする暗殺集団「カシウス7」の逮捕に執念でキャリアを捧げた元CIAエージェント、ポール(リチャード・ギア)に召集をかける。ポールは議員を内定していたFBIの秀才捜査官ベン(トファー・グレイス)と組むように命じる。ベンはポールを尊敬し、ポールが一生をかけて追跡してきたカシウスに親近感さえいだいていた。ベンのハーバードにおける修士論文はカシウスだった。現場経験のないベンをポールは最初ばかにするが、熱心さに、見直すようになる。カシウスが復帰したというCIA長官の見解をポールは断固否定する。なぜ断言できるのかときくベンに「おれが殺したからだ」とポール。二重、三重の謎がカシウスにはついてまわる。いったいだれが本当のことを言っているのか、このへんはみどころのひとつでしょうね▼ベンとポールは過去にポールが射殺したはずの「カシウス7」のひとりブルータスが獄中で生存していることをつきとめ、刑務所へ行く。ブルータスはカシウスが暗殺者の掟を破ったため罰をくだされたと教える。ブルータスはふたりの面会後巧みに脱走を図るが、待ち伏せていた「カシウス」に殺害される。ここであっさりカシウスの正体がわかります。観客はいったいこの先の一時間余り、なにを楽しみに映画をみていろというのか不審に思うにちがいありません。でもまあなにかあるにちがいない。気をとり直して見続けることにします。すると、確かにこまごまとした細工はなされていました。カシウスの魔手はベンの家族にも伸びる。ポールはベンに手を引けというが彼はいうことをきかない。過去の資料をあたるうち、暗殺の現場に必ずポールがいることを発見する。ベンは「カシウスこそ彼だった」事実を発見するのだ。FBI捜査官でなくとももう少し疑ってみるのが普通だと思いません? ポールはCIAの腕利きのエージェントだ。その彼が現場に居合わせたからといって、なんで「カシウス」に直結するのだ。いくら上映時間が残り少なくなってきたからといって、おい、こんな単純な頭でハーバードの修士論文はパスするのかよ▼さてここでやっと冒頭の国境警備隊殺害事件との結びつきがわかります。なんと、もうひとりの「カシウス」が現れたのだ。しかしだな、主演のリチャード・ギアのあとに何人「カシウス」をくりだそうとあとの祭りでしょう。でも監督の作りこみはまだまだあるのだ。今度はベンこそがロシアのスパイであり偽装結婚して家庭をつくり、本国からの指示をまつ諜報部員だったことがわかる。この映画の本筋は「カシウスはだれだ」ではなかったのね。正直いうとこのあたりになるともう時間消化みたいな付け足しです。ベンはなんでか知らぬが、ロシアのスパイなのに正体もばれず(唯一彼の正体を知るポールは死んじゃった)アメリカの、しかもFBIで勤務を続けられるばかりかCIAからヘッドハンティングされるのですよ。理解に苦しむ。