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シネマ365日

2013年3月29日

グレートスタントマン (1978年 コメディ映画)

監督 ハル・ニーダム
出演 バート・レイノルズ/サリー・フィールド/ブライアン・キース/ジャン=マイケル・ビンセント

くそ食らえ、このやろう 

 ハル・ニーダム監督の前歴が変わっている。朝鮮戦争に空挺歩兵として出兵したパラシュートの名手だ。映画界に入り「西部開拓史」「マクリントック」「小さな巨人」など1960年代のトップ・スタントマンの地位を占める。バート・レイノルズのスタントも務めた。レイノルズのすすめで監督した映画が大ヒット。これが「トランザム7000」だ。勢いをつけて次に作ったのが本作である。レイノルズやサリー・フィールドが「7000」に引き続き出演した。だから息があっている。知り尽くしたスタントの世界を描く思い入れの深さが、この映画を熱くした。もうひとつはレイノルズが演じた男の自画像だろう。草食男子だ、複雑系だといわれるご時勢にこんな男がいたらどうだろう。彼は「このやろう、くそ食らえ」ですべて解決してしまう男である▼「グレートスタントマン」をみているとCGも特撮もしょせん「おもちゃ」だと思ってしまう。それこそ「くそ食らえ」なのだ。体を張ってスタントをやり、中年にさしかかって酷使してきたフーバー(バート・レイノルズ)の肉体はボロボロ。にもかかわらずたとえ1メートルでも高いところから飛んで、新記録を作ってやるとヘリから飛び降りる。何度も手術した古傷をまた傷め、ドクターは首までやられたら一生全身麻痺だよと宣言する。だれにもいうなとスタントの親友に口止めしフーバーは仕事に復帰。若手の有望なスタントマン、スキー(ジャン=マイケル・ビンセント)が出現し、監督は色目を使っている。フーバーも内心おだやかでないが(ふん。くそ食らえ)で押し通す。同棲する恋人のグエン(サリー・フィールド)は、父親(ブライアン・キース)が往年の名スタントだったから仕事は理解しているものの、命を的にぶつかっていくフーバーに心配は絶えない▼作家気取りの監督は見事にスタントしたフーバーにねぎらいの声もかけず、脚本家にはケチをつけるジコチューのナルシスト。見栄えにこだわるあまり、橋がぶっとばされた谷を車で跳ぶという破天荒なシーンを考えつく。距離は150メートル。どうだときく監督にスタントたちは(冗談じゃねえ)聞こえないふりをするが、目立ちたがりのスキーができるという。しかし操作に二人要る。ふつうの車ではできない、ロケットカーならとフーバーは条件をつけて引き受ける。制作費が予算オーバーになり、帳尻をあわせるために人員削減。フーバーの親友が解雇された。フーバーを息子のように可愛がってきたプロデューサーは、この映画が成功しないと二度と浮かび上がれない。成功はもちろん前代未聞のロケット飛行にかかっているのだ。映画界の裏面を引き合いにだしながら、ニーダム監督の浪花節は調子をあげていく▼橋が落ちた谷に向かって車は走り始めますが、途中で止まります。観客は肩透かし「なにやってンだ」とフーバーはスキーを見る「気圧があがらない。このままじゃロケットの噴射不足で墜落だ」スキーはまっとうなことをいいます。上空でヘリを旋回させている監督は激怒「ばか、はやく跳べ」むちゃくちゃだろうが何だろうが知らないことほど強いものはありません。フーバーは監督の指示を無視。スキーに「一回きりしかできないのだ、死んでも跳ぶぜ」二人は顔を見合わせ、スキーはアクセルを踏んだ。ロケットカーに改造した大道具の技術者、セットの裏方、業界の生き残りをかけたプロデューサー、フーバーの肉体がもうもちこたえられないことを知っている親友と恋人、すべてのスタッフが見守るなか命がけの大ジャンプに車は爆走する▼バート・レイノルズの顔って独特ですね。濃い眉に黒々とした口ヒゲ。たくましい肉体をヌードになってコスモポリタン誌で披露したこともあります。肝心な箇所はCGで逃げ、そのくせ派手なことだけはバカ派手なアクションに、いまいち乗り切れないアクション・ファンは多い。でもレイノルズのアクションはどうだ。彼は肉体に対する素朴な信仰を満足させてくれる。ときには傷んだり故障したり、泣きをみたり、治療に時間がかかったりするアナログそのものの人間の体の、いとしみと美しさとやさしさを示してくれる。血の通ったアクションは危険な野獣の芳香を放つ。もうひとつ。落ち込んだときは言ってみようぜ「くそくらえ、このやろう」