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特集「どんでん返し」

2013年5月5日

特集「どんでん返し」 真実の行方 (1996年 法廷映画)

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監督 グレゴリー・ホブリット
出演 リチャード・ギア/ローラ・リニー/エドワード・ノートン/フランシス・マクドーマンド

ラストの沈黙が不気味 

 よくできた法廷劇だと思います。リチャード・ギアは、やさしい顔立ちが俳優としてかえってソンしている場合がありますね。殺し屋ジャッカルと対決するFBI捜査官なんかもやったけど、ホントあれはしょうもない映画だった。42歳で結婚した相手がスーパー・モデルのシンディ・クロフォード。野次馬のひとりとして(うまいこといくのかなー)と思っていたが4年後に離婚。今は目立たない奥さんと幸せみたい。本作はひとくせ・ふたくせある出演者に囲まれている。エドワード・ノートンはこの映画でブレイクしたおかげで以後「ファイト・クラブ」とか「幻影師アイゼンハイム」とか「ラリー・ハリント」とか、偏執狂的人物の役にご縁が生じるようになった。またそれが上手なのだ。女優陣では有能な弁護士役のローラ・リニーはこのとき32歳。翌年「目撃」でクリント・イーストウッドの娘役「トルーマン・ショー」ではジム・キャリーの妻、「ミスティック・リバー」で再びクリントと組み「エミリー・ローズ」では、悪魔払いで死んだとされる女子大生の事件で、告訴された神父の弁護役を引き受けました。そうそう「ライフ・オブ・デヴィッド・ゲイル」の大どんでん返しを仕掛ける社会運動家もありましたね。もうひとり精神科医に扮する女優がフランシス・マグドーマンド。ハリウッドとは一線を画するコーエン兄弟のジャックと結婚、ニューヨークを拠点としてものすごく地味な映画「ファーゴ」でアカデミー主演女優賞。受賞者の名前を聞いても日本では「マグドーマンド、フー?」って感じなのに、スクリーンに出てくるとちがう意味の「フー!」になる女優さんですね▼舞台は冬のシカゴ。町はそれだけで重要な「登場人物」になることがあります。「L.A.コンフィデンシャル」のロスとか「ゴッド・ファーザー」や「ティファニーで朝食を」のニューヨークとか「ムーラン・ルージュ」のパリとかですね。本作はシカゴ。ワシントンでもない、ニューヨークでもない、ロスでもない、どこか無機質でとっつきの悪い、よそ者になじみにくいアメリカ中西部の肌感覚。そんなシカゴの表情が大事な要件になっている。主人公の弁護士マーティン(リチャード・ギア)は新聞の取材でもテレビでも喜んで出演する売り出し中の弁護士です。彼の力量は相当なものであるにもかかわらず、どこかシカゴの弁護士という位置にコンプレックスがあり、必要以上にめだちたくて仕方がない。そのあまり自分で自分のことを敏腕弁護士だと名乗り失笑を買う。日本でいえば東京コンプレックスみたいなものですね。腕はいいのだけれど徹底的に打算的にも冷徹にもなりきれない、そんな人の好いところがリチャード・ギアに似合っています▼粗筋は複雑すぎもせずひねりすぎもせず、もちろんおおざっぱではなく、観客がファーストシーンあたりの記憶や人名をすぐたどれるホドのいい複雑さである。かなわない映画ってありますでしょ。話が進むにつれ、いったいどこに出てきただれのことなのか「???」になる映画。カタカナの人名に弱い日本人でも充分ついていける。まさか日本びいきのギアの発案ではないでしょうが。グレゴリー・ホブリット監督はSFふう殺人事件の「オーロラの彼方へ」捕虜収容所殺人事件の「ジャスティス」殺人の映像をライブで載せるシリアス・キラーの「ブラックサイト」など、玄人向けすぎてわかりにくいとか、素人向けすぎて幼稚すぎるとかがなく、バランスのとれた映画で良好な興行成績をあげるヒットメーカーです▼冬のシカゴで地元の大司教が惨殺され容疑者として逮捕されたのが聖歌隊所属の青年アーロン(エドワード・ノートン)。彼は現場に自分以外のだれかがいたと言うが警察は耳を貸さない。マーティンがこの弁護を買ってでる。検察側が立ててきたのはマーティンの検察時代の同僚にして恋人にして現在辣腕検事のジャネット(ローラ・リニー)である。大司教に関係する再開発事業の投資などがからみ、すわ利権をめぐる金欲の事件かと思うのは早い。同時進行で聖歌隊という美少年グループと大司教の欲望がちらついてくる。アーロンはなにか隠しているにちがいない。マーティンは精神科医アリントン博士にアーロンの精神分析を依頼する。面接を重ねるうち博士は何気ないアーロンの言葉と表情に凍りついた▼淡々と組み上げられてきたプロットがこのあたりから徐々に、観客の感情を逆なでするようなざらざらしたものを露出させていきます。検察上層部の腐敗、それに踊らされようとするジャネット。大司教のスキャンダル。ラストの法廷での対決は迫力ものですが、そのあとやってくるどんでん返しが不気味です。まさに「真実の行方」はどこに。この問にマーティンは沈黙しています。

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