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シネマ365日

2013年5月16日

スウィッチ (2011年 サスペンス映画)

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監督 フレデリック・シェンデルフィール
出演 カリーナ・ヴァナッス/エリック・カントナ

「なにを」ではなく「いかに」 

 「 オートマチック 」といいこの「スウィッチ」といい、テンションあがりっぱなしのアクション映画と、イキのいいアクションスターがフランスに現れてきている。本作のヒロイン、ソフィを演じるカリーナ・ヴァナッスは25歳。笑顔のシーンでみないっしょの笑顔になるのがちょっと難だが、それを補ってあまりあったのがエリック・カントナの刑事フォルジャの追跡をふりきる逃走シーン、いやー、よく走りましたね。劇中でもこのシーン、監督もノリがよくて(いつまで走っているのだろ)と思うほど走らせましたよ。エリック・カントナは元サッカー選手ですが、メタボとなった今は文句なくカリーナの「走り」に軍配ですね。それはともかくシェンデルフィール監督といえば父親ピエールも映画監督。父親の助手として早くから映画界に入り「少女首狩事件」で監督デビュー。タイトルはおぞましいが内容は高く評価されセザール賞新人監督賞を得た。だいたい猟奇的な犯罪分野が好きですね。おまけに脚本が「クリムソン・リバー」の原作者ジャン=クリストフ・グランジェだから止めようたって無理、息もつがさぬノンストップ・サスペンス・スリラーの激走となりました。面白かったですよ▼ある日目覚めたら自分が見も知らない人物になっていた変身テーマ、最近ではリーアム・ニーソンの「 アンノウン 」がありました。よくある筋書きになりそうなところを謎とサスペンス、ヒロインの混乱と推理、裏切りの人物の正体と狂気、犠牲と解明、それらのプロセスがてきぱきとじつにスピーディーに運ばれます。ヒロインは就活するふつうの娘で恋人もいない。ときは8月、みなバカンスにでかけている。なんとかならんかなあ、この惨めな状態、とタメ息をついているところに行く先はあこがれのパリという思わぬ話がもちこまれた▼「アパート交換サイト」で条件のあう相手の女性ベネディクトと部屋を交換しソフィはパリに到着。一日目は観光。凱旋門にシャンゼリゼ、住まいはセンスのいい部屋で目の前にエッフェル塔がみえる。イラン人のボーイフレンドまでみつけた。100分程度の短い尺なのにここからぎっしり、映画は爆走します。翌朝踏み込んできた警官たちにしょっぴかれ、わけのわからぬまま首なし殺人の犯人に仕立て上げられたソフィ。自分はカナダ人だ、モントリオールからこれこれのわけでパリへきたといっても、モントリオールの彼女の部屋にはちゃんと別人のソフィがいた。パスポートはいつのまにかベネディクトになっていた。交換サイトは削除されていた。警察は「イカレ女の妄想」としてソフィを精神病院に送り込む。こんな連中につきあっていたら真相は闇に葬られる。ソフィは果敢に脱出しあらんかぎりの知恵をしぼって追跡をまく。このあたりもテンポが速くていい。唯一の味方は黒人の雑貨店主だ。逃亡に必要なケータイや変装の衣類を用意してくれた。ベネディクトとはいったいだれ。モントリオールではベネディクトの魔手にかかる第二、第三の犠牲者が相次ぐ。ソフィの母親まで惨殺されるのだ▼いっぽう拳銃は奪われる、追跡はふりきられる、ソフィにやられっぱなしのフォルジャ刑事は、こんなしっかりした女が本当にイカレ犯罪者だろうか次第に疑問になってくる。周辺人物を洗ううち首なし死体の男性とソフィのDNAが非常に似ている、それだけでなく何年も娘とあっていないベネディクトの母はソフィの写真をみて「ちょっと変わっているけど娘だ」と断言したのだ。いったいこの三人を結びつけるものはなんだ。「近親相姦か」刑事はまずそれを考えた。でもちがう。ソフィの調書で彼女が言っていたこと「12歳までボルドーにいた」を思い出す。彼女は子供のときフランスにいた。そこでなにが起こっていたのか。犯罪ではない。犯罪なら警察にデータが残っているはずだ。市民生活のなかで認められているごくふつうの行為が犯罪に転化したのだ。冴えなかったメタボ刑事はとことんヘマではないということがわかってきます。映画でも小説でもそうですけど、上手下手の問題は「何を」書くかではなく「いかに」書くか、ですよねー。ラストは脚を折られて泣き叫ぶソフィが水槽に放り込まれる寸前メタボが、いやフォルジャ刑事が間に合います。犯人はもちろんベネディクトなのですが、これはとっくにわかっていること。彼女が猟奇殺人犯に変貌する背景がこの映画の「いかに」に当たります。

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