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シネマ365日

2013年5月19日

クーリエ 過去を運ぶ男 (2012年 サスペンス映画)

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監督 ハニ・アブ・アサド
出演 ジェフリー・ディーン・モーガン/ジョシー・ホー/ミッキー・ローク

ちょっと生煮え 

 アサド監督の意気込みはわかるけど消化不良だった。主人公は記憶を喪失しているのですね。ここをしっかり覚えておかなくちゃ。それでなくても頻繁なフラッシュバックがめまぐるしくて途中で前後の関係がわからなくなる。そうそう。ロバート・グラッツアの「シネマ頭脳」(フィルムアート社 吉田俊太郎訳)によれば、コロンビア映画の創始者ハリー・コーンには独特の映画鑑賞法があった。彼はその映画が「いいものなのか全然売れないのか、自分のケツがよく知っている」と言っていたそうだ「自分がかかわった映画をすべて試写しているときに、座席の上で自分の体がもじもじしてきたら、その映画はダメ。もじもじしなかったらその映画はまちがいなくお金になった」映画に没入できる作品かそうでない作品かをお尻が「もじもじ」して教えるというのだ。その伝でいけば「クーリエ」は完全に「もじもじ」のクチだろう。パート、パートにセンスのいいシーンはあるものの、細切れにしてしまった肉といっしょで、分厚いステーキを夢中でほおばり「ああ食った、食った」という満足感と迫力が感じられないこと、主人公がドンくさくて(「トランスポーター」のジェイソン・ステイサムの逆を狙った、ヒーローっぽくないキャラにしたかった意図はわかるにしても)エンタメのアクション映画のつもりでつくったのなら観客のカタルシスにならないこと。おまけにラストに登場する少年(青年か)でいきなり映画はエンドになり、これどういう意味? という唐突感が拭えないこと(たぶん続編があることを示唆するのだろうが)などが理由としてあげられる▼主人公はクーリエ(運び屋)と呼ばれる記憶を失った男(ジェフリー・ディーン・モーガン)だ。彼の前にFBIが現れ、鍵のかかったカバンを行方不明の凶悪犯「イーヴル・シヴル」に届けるよう依頼する。リミットは60時間以内。でなければクーリエの友人家族が殺されるというのだ。クーリエが拒否すると「イーヴルを探しだすのがお前の生き残る道だ、このカバンはその命綱だ」なんてケッタイな理屈。そもそもFBIが、記憶も失くした正体不明のオジサンに捜査を押し付けるなんて、お前ら義務の放棄ではないのか、エッ。まあがまんしよう、映画は始まったばかりだし▼クーリエはしぶしぶ親代わりともいえる親友が推薦した謎の女アナ(ジョシー・ホー)とともにシヴルの行方を追う。イーヴルとはマックスウェル(ミッキー・ローク)という男の元にいた、殺し屋みたいな人物という情報だけがたよりだ。マックスウェルのおかかえ会計士を尋ねると彼は書類をもやして逃亡を図り、不意に現れた男に射殺される。その暗殺者もクーリエと格闘中に死亡。死んだ男がもっていたリストからつぎの犠牲者に狙われている詐欺師を割り出し、彼を探しだすとこれまた夫婦の殺し屋に殺害された。死ぬ前に詐欺師はイーヴルとマックスウェルの間でおきた10年前の惨劇を話す。マックスウェルに家族を殺されたイーヴルは復讐のため町に火を放って行方をくらました。小さな息子がいたが…▼謎めいた過去が明らかになる場所はラスベガス。窓に映った「エルヴィス・ライブ」の逆さ読みが「イーヴル・シヴル」だった。さてマックスウェルとクーリエの対決です。ミッキー・ロークのエルヴィスは拍手ものですが、ここのネタってなつかしや「エンジェル・ハート」に似すぎていませんか。劇中マックスウェルのことを「お父さん」と呼んで登場する少年の身元がラストで明らかになります。でもFBIとマックスウェルとシヴルのからみが「ポン」ひざをうつほど明快にならないから欲求不満が残る。ドンくさいクーリエはそれなりに味を出していたとはしても、彼を助けるべきアナが途中でしょぼくれた女になったのは作劇としてはイマイチの感を免れない。それに彼女途中でどっかに消えちゃったわね。練りすぎたのか練りたりなかったのかどっちかわからないけど「リミット60時間」ってなにかこの映画に影響を及ぼす要素だった? じゃなかったよね。そんなところが生煮えだった。

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