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シネマ365日

2013年5月20日

フェイシズ (2011年 スリラー映画)

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監督 ジュリアン・マニャ
出演 ミラ・ジョヴォヴィッチ/ジュリアン・マクマホン

脱アクションのミラ 

 「バイオハザード」がスタートしてはや10年、どこまでいくのか余計な心配をするほどの長期シリーズになりましたけど、その間にはアリスにも、いやジョヴォヴィッチにも変化がありました。結婚し離婚し娘に恵まれ、そのせいじゃないでしょうが「フェイシズ」では壮絶なアリスのアクションを封印、一人娘を得たやさしい母親の笑顔をみせています。本作では相貌失認という症状がヒロイン、アンナ(ミラ・ジョヴォヴィッチ)にふりかかります。だれの顔か識別できない。目があり耳があり、鼻があるのはわかるがその統一がどういう名前をもっただれの顔であるか判断できなくなる。そうなった原因はアンナがニューヨークで起こっている女性ばかりを狙った殺人事件の目撃者になったことだ。犯人は殺害し暴行し、殺したあと泣く、そこで「涙のジャック」とよばれるようになったというシリアル・キラー(連続殺人犯)である。現場に遭遇したアンナは犯人に追い詰められ橋から川に落ちる。病院で気がついたときは恋人の顔も友達の顔も自分の顔さえ識別できなくなっていた▼顔が判別できなくなるという症状は、文献としてはツキジデスの歴史書にあるというから古くから知られていた。相貌失認と命名されたのは1947年ドイツの神経医学者によってだといわれます。が、映画でとりあげられたことはあっただろうか。伝奇小説では読んだような気もしますが。このへんが本作の新しさだったのではないかと思います。仕事は小学校の先生、恋人との仲も円満、気のおけない女友達と楽しい食事もし、順調な人生を謳歌していたアンナの境遇は一変する。刑事ケレスト(ジュリアン・マクマホン)はアンナが犯人で顔がわからないフリを装っていると疑いを解かない。しつこく追及するわりには刑事にも確信がない。おまけに情報を得ようとしたホームレスは刑事が近づいたため口封じに殺されてしまう。捜査は行き詰まりケレスト刑事は憎まれ役で、いいところがありません。もうひとつプロファイラーという仕事が出てきます。われわれになじみのある名称でいうと犯罪心理捜査官というのでしょうか。これは1990年代「羊たちの沈黙」の時代ですね。それをプロファイラーなんて呼ぶようになったのはこれまたご時勢です。ソフトウェア工学における性能解析ツールのひとつで、劇中その実務はでてきませんが、実務に携わる登場人物が、レクター博士のような異能の天才でないからといって見過ごしてはいけません▼涙のジャックの犯罪はおさまらず犠牲者は6人、7人とふえていく。精神分析医の治療を受けて記憶をよびさまそうとするアンナに犯人は「おれがそばにいても君にはわからないのだ」とあざ笑うような脅迫がはいる。人の顔ってつくづく情報のかたまりですね。きれいとかそうでないとか、美しいとかどうとか、もうそんなことどうでもいい、とにかくその顔が誰であり自分とどういう関係か、日常では無意識に判別しているすべての情報が遮断された。アンナの精神は不安定に落ち込んでいき恋人も去ります。こんなときこそそばにおってやらんといかんのに冷たいやつめ、と思うまもなく、ちゃんとあのイケズだったケレスト刑事と愛がめばえますのでその点は心配ない。わりときちんとできた映画ですがただ犯人がちょっとねー。世界三大推理作家の一人とされているヴァン・ダイン(「僧正殺人事件」「グリーン家殺人事件」など)が「推理小説の二十則」つまり「べからず集」のトップにあげているのは「事件の謎を解く手がかりはすべて明白にしなければならない」「端役の共犯者はいてもいいが犯人は物語のなかで重要な役を演ずる人物でなくてはならない」「プロの犯罪者を犯人にするのは避けること」などがありますね。本作ではこのあたり、さあどうだったか、観客のみなさんの判断をまとう。

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