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シネマ365日

2013年5月26日

セクレタリアト/奇跡のサラブレッド (2011年 事実に基づいた映画)

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監督 ランダル・ウォレス
出演 ダイアン・レイン/ジョン・マルコヴィッチ/マーゴ・マーティンデイル/スコット・グレン

翼もちし馬 

 セクレタリアトとは事務局とか秘書職という意味ですね。ヒロインの馬主ペニー(ダイアン・レイン)を助ける父の代からの秘書エリザベス・ハム(マーゴ・マーティンデイル)が名付け親です。彼(?)の通称はビッグ・レッド。燃えるような赤毛の非常に大きな馬体で体重500キロ。一日に食べる餌が妊娠した馬二頭分という大食漢。好きなことをすきなときにやる馬です。彼が生まれたとき牧場主のクリス(すでに認知症になっていましたが馬だけは見極められました=スコット・グレン)は「好きなように走らせろ」とひと目でこの馬の性格を看破します。セクレタリアトは頭がいいだけでなく陽気な目立ちたがり。体格がいいうえに均整がとれ、筋肉がつき頭の形がよく肩もがっしり、身体的にほぼ完璧だ。カメラのシャッター音が聞こえると耳が立ち胸を張ってポーズを取る。負けたときは馬房に入り誰にも邪魔されず考えこんでいるようで、つぎのレースで必ず記録をつくるような負けず嫌いの馬だった。生涯成績21戦16勝。1973年6月9日ベルモンテステークス競馬場で二位に31馬身の差をつけて優勝、アメリカ競走馬9頭目の三冠を達成する。そのときの記録2400メートル(競走馬の墓場といわれる最長距離)で2分24秒は2011年現在も破られておらず、20世紀最高のアスリートに人間以外ただヒトリ(と言うべきか)選ばれてた。これは不世出の競走馬を世に出した馬主・調教師・騎手・厩務員を中心に語られる実話だ▼時代は1969年、弁護士の妻であり四人の子の母であるペニーは母が死に、あとをおうように父が倒れ、兄たちが売却しようとする競走馬生産牧場をひきつぐ。当時競走馬のオーナークラブは女性が出入りできなかったという男社会だ。冒頭で軽くふれているが、恵まれた家庭であってもペニーの仕事はクリーニングの受け取り、夫が指定するワインの注文、子供たちの買い物のつきそいなど、がんじがらめの良妻賢母から一歩もはみだせなかった。およそ自分の能力や嗜好などとかけはなれたところで生きていた。そこへ赤字牧場運営と競走馬の養成である。たかが素人の主婦とばかにされながら生まれつきの馬好きと、馬をみぬく親譲りの目でペニーは父が残してくれたデータとコネをたよりに味方をさがす。彼女は生まれてはじめて、自分のあるだけの力を注ぎ込む夢をセクレタリアトに見出したのだ▼調教師のルシアン(ジョン・マルコヴィッチ)がセクレタリアトの出産に立ち会い「天意の馬」だとして人馬一体の厳しい調教に乗り出す。騎手には馬の心臓を破裂させるような攻撃的なロンが選ばれる。目にいれても痛くないほどセクレタリアトを可愛いがる黒人の厩務員エディ、運営の事務処理一切をひきうけポニーの母代わりともなるエリザベス。亡き父の親友の息子たち。かれらは人生最大の賭けに出たのだ。牧場を存続させる経済的な圧迫、レースの戦略、競争相手とのかけひき、セクレタリアトのまさかの不調。奇をてらわずこつこつと映画は彼らの「思い」を映していく。セクレタリアトは三冠のうち二冠を制した。1973年6月9日、アメリカ競馬史に語りつがれる日がついにきた▼ルシアンはこんなことを言っている「よく走るやつだ。あんなに走るのが好きな馬はみたことがない。最初は後方について、それからぐんぐんスピードをあげていっきょに抜き去るのを楽しむんだ。彼奴が本気になると魔法がかかるのさ」ペニーは三冠を決めたベルモンテステークス競馬場での走りを「独走状態に入って神がかり的になったわ。レースには勝った、今からおれの本気をみせてやる、この競馬場で…まるでそう言っているみたいだった」事実それに近かった。31馬身差という、あとにもさきにもだれもみたことのない激走である。ルシアンは決戦の前夜ペニーにこう言った「明日はあいつに翼が生えるよ」。本作の映画化が実現したのはペニーが「不滅の馬を語り継ごうと決めた」からである。調教師としてすべてを燃やし尽くしたルシアンはこの大レースの3年後引退した。ロンは5年後落馬事故で脊椎を傷めるまで輝かしい戦績を残し、車椅子になった今も闘志を失っていない。セクレタリアトはその後4勝して引退、種牡馬として600頭以上の雄親になった。エディはいちばん長く愛するセクレタリアトと過ごした。エリザベスは94歳の天寿を全うし、ペニーは家族と牧場を救った。彼女はコロラドで今も幸福に暮らしている。

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