女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

シネマ365日

2013年5月29日

薔薇の貴婦人 (1984年 コメディ映画)

Pocket
LINEで送る

監督 マウロ・ボロニーニ
出演 ラウラ・アントネッリ/ジェイソン・コネリー/モニカ・グエットリーレ 

ヴェニスの休日

 マウロ・ボロニーニ監督は「哀しみの伯爵夫人」とか「沈黙の官能」とか、わりとセレブの女性を主人公にした映画が多いです。本作なんかタイトルからして「貴婦人」だからね。ハイソが好きか。でもそんな単純なものじゃないみたい。どんな立場の女性も、もちろん貴婦人だろうとセレブだろうと一枚めくればごらんの通り、という冷ややかでコミカルな艶笑ふうにして大真面目なイタリア映画という面目でしょうか。なにしろばかばかしいがしまいに「やれやれごくろうさま」で終わるカラリとした恋愛劇です。嫉妬だ、恨みだ、愛欲だという恋愛の暗い深刻な側面はみごとにパス。こういうふうに処するのも悪くないでしょうといわんばかりの快楽嗜好だ。同時に几帳面な節度があって、青年との情事をおえた未亡人は、青年が「もういちど」名残惜しげにというか、物欲しげにというか、誘惑の合図を送ってもビシャッと鎧戸を締め二度と家の敷居をまたがせない。もうひとりの貴婦人も男を呼び入れるのは夫が不在のときに限る(当たり前ですが)その割り切り方や情事のやりかたがおおっぴらで地中海のように朗らかだ。さすが「デカメロン」の国です▼物語は調子いいというかアホらしいというかたとえようがない。時代は16世紀中頃、というからルネサンスの爛熟期、抑圧されていた中世の暗黒時代が地鳴りを轟かせて舞台転換したときです。ところは海の都ヴェニス。ヴェニスの商人に代表される開放的な商業都市です。そこへ留学生のジュールズ(ジェーソン・コネリー)がたった一日のバカンスを満喫するためやってきた。ゴンドラの船頭が「いいところへ連れて行きますよ」とさかんに誘うが彼はことわり、まずは市内観光へ。そこで町の通りをいく謎の美女に吸い込まれる。みとれていたらアンジェラ(ラウラ・アントネッリ)という美しい未亡人をぶつかってしまう。この未亡人は豪邸に侍女と二人住む。目がさめてベッドから出ようとしたら壁に描かれた豪快な壁画のたくましい男性の裸体に目がいく。見まいとしても目がいく。思わず目をそむけると反対側の壁画の歓喜の交合図が目に入る。目を閉じようとしても閉じられない、両眼は食い込んだように露骨な描写から離れられない(寝室ですからね、刺激のために旦那が描かせたのだろうけど、独りになった今は目の毒なのです)。そんな彼女は、街角でぶつかり仰向けに転倒したジュールズが思い切り広げた股間に目がいく。ほとんど病気である▼ジュールズは未亡人に謝り謎の美女の行方をさがす。未亡人は家に帰ったもののハンサムな昼間の青年が忘れられない(ジェーソン・コネリーはショーン・コネリーの息子です)。悶々として夜中だというのに侍女の部屋に忍び入り、なんとかしてくれとたのむ。侍女は「お医者様をよびましょう」ととぼけるが「医者では治せない」と未亡人は積極的、ベッドに入り込んで侍女の豊満な体のあちこちに手を伸ばすので、これを治すのは医者ではなく男だと侍女は判断、夜中だというのにでかけて行って自分の情人(これが昼間の船頭)に青年の探索を頼む。青年はなぞの美女の召使と会ったが、彼女がいうには夜の12時教会の前で待てという指示である。いいつけ通りの場所でうろうろしているのを船頭はみつけると、そんなところで待っていても無駄だ、女はとっくに心変わりしている、来るか来ないかわからない女より確実に会える女のほうを大事にしたらどうかと進言。青年は「それもそうだ」とあっさり未亡人に乗り換える▼青年を迎えた未亡人はこれこそ運命の出会いだととろけそうな目、青年はシェイクスピアも真っ青な情熱のセリフを並べふたりして暖炉のそば、ベッド、床の上。それを屋根裏部屋の覗き窓から逐一みているのが侍女と船頭だ。もちろん二人もじっとしておれなくなる。振られた謎の美女ヴァレリアは召使に八つ当たり、彼女は頭にきて必ずみつけだしてごらんにいれますと町中走り回り、夜明けとともにふらふらになって未亡人の家をでてきた青年にあう。さあいまから、という召使の強制連行みたいなことばに青年は「ぼくはもうカラッポだ」とあっけらかんと白状する。召使のセリフがふるっていて「うちの奥様なら死んだ馬でもふるいたたせる」こういうやりとりが続き、青年は最後はうっとりとゴンドラに身をよこたえ「すばらしい休日だった」恍惚としてヴェニスを去る。アホらし▼未亡人役のラウラ・アントネッリ。10年ほど前ルキノ・ヴィスコンティが「イノセント」で主役に抜擢しました。目が点になる脱ぎっぷりでした。彼女を有名にしたのはほとんどの映画ファンが題名を知っているであろう「青い体験」ですね。ジャン=ルイ・トランティニャンと共演した「刑事キャレラ/10+1の追撃」では事件の鍵を握る女性に扮しました。本作では20歳年下のジェイソン・コネリーとのラブシーンをさすが、違和感なくこなしています。

Pocket
LINEで送る