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シネマ365日

2013年5月30日

殺人ゲームへの招待 (1986年 ミステリー映画)

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監督 ジョナサン・リン
出演 アイリーン・ブレナン/ティム・カリー/マデリーン・カーン

見なければわからない 

 テレビのサスペンス劇場より軽い映画だ。イギリス発祥のクールドというゲームに基づいて物語とキャラクターが構成され、上映劇場ごとに3つのエンディングが用意され、DVD化では3つとも収録されたというが、すべてを見る暇な人がいるのだろうか。退屈なので途中で早送りした。なんでこの映画をみる気になったのかというと「スティング」で、ポール・ニューマンの情婦になり、出演シーンは少ないがドスの利いた声で存在感を放っていた、アイリーン・ブレナンが出演していたからだ。ブレナンは「スティング」のとき35歳。この映画のとき48歳。悪くはなかったけど、やっぱり役者というのはあんまり軽い映画にでるものじゃないな▼でも出だしはどことなく気を持たせる。雰囲気がある。時代は1954年、アメリカはニュー・イングランドのとあるゴシックふう大邸宅。遠景でもどことなくチャチで模型っぽいのです。ここで豪華なディナー・パーティーが開かれ、案内状を受け取ったゲストがつぎつぎ到着するが、みなここでは偽名を名乗ることになっている。ゲストたちや屋敷の召使、料理女たちみんなが被害者にも犯人にもなりうるという前提だ。ゲストの顔ぶれは、ワシントンのホステスとして凄腕をふるっている上院議員ピーコック夫人(アイリーン・ブレナン)、何を考えているのかまったく表情を動かさないワズワース(ティム・カリー)、重要人物の未亡人で腹黒い女ホワイト夫人(マデリーン・カーン)、ほかに精神科医、いばりちらしている横柄な大佐、セクシーでずる賢そうな女・スカーレットは〈エスコート・サービス〉の経営を通じて女をあっせんし、要人たちの裏の顔を知っている。ほかにフランス人メイド・イヴェット、晩餐会に遅れてきたボディ氏▼参加者たちの秘密が暴かれていき、なんらかの騒動が生じてみなが部屋をあけているうちにつぎつぎ殺人が起こる。アダムス・ファミリーが住んでいそうなそうなこのゴシック様式大邸宅は、いたるところに抜け道、隠しドアに回転壁、地下室、まるで忍者屋敷なのだ。その秘密の通路をつたって犯人はあっというまに屋敷のどこにでも姿を現せるらしいのだ。だからって「それがどうしたンだよ」と言いたくなるのだなあ。どうみても納涼大会のお化け屋敷ふうカラクリなのよ。いかにも幼稚だろ。ボヤいていても仕方ないから先に進もう▼最初に言いたいことは、これ、豪華ディナーの招待のはずだったでしょう。それがねー。出てくる料理がお粗末で皿数も少ない。フランス人の料理人はなにを作ったのだ。バベットはいなかったのか。前菜を食べてスープをすくって、鶏肉みたいな焼き物があってもうデザートと食後のブランデーなのだ。わが社がある古都奈良のちょっとコマシなビジネスランチでも、もう少し食べごたえのあるものをだしますよ。それにゲストたちは全然食い気がなさそう。うまそうに食うなという監督の指示でもあったのか。それならそれで表情豊かにまずそうに食えよ。食事は観客に登場人物の育ちをわからせる、人格を伝える大事なシーンだ。おろそかな扱いだったから幻滅した▼連続する殺しから生き残ったのは7人。ワズワースが自分はFBIだと正体を明かし、犯人ひねりだしを解説する。料理人を殺したのはピーコック夫人、夫と浮気したイヴェットを殺したのはホワイト夫人、ミスター・ボディを殺したのはだれそれ、嵐で避難してきた車の男を殺したのはだれそれ。このあたりになるとまるで殺人カタログ一覧で、謎解きでもなければミステリーでもないという、不思議な犯人探しになる。そうそう、原子力科学者の核融合による軍事秘密という、ものものしい事件の背景も、小学校の理科の実験でやったミカンの汁のあぶりだしみたいに出てくる。一言でいうと、中盤から終盤にかけてドタバタコメディになってしまい、こういっちゃナンだけど、正直なミステリーファンとしては「だまされた」後味になってしまうのだ。アガサ・クリスティも一箇所に全員集めて犯人を明かす。一室に容疑者が勢揃いするのは、古典ミステリーの王道だ。単純きわまりないスタイルからいえば、踏襲されつくしたそれかもしれないが、歌舞伎が同じ型を繰り返すからってだれか文句をいう人がいるか。ムキになるのはよそう。あってみなければ人はわからないのといっしょで、映画は見なければわからない。そこがいいのだから。

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