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シネマ365日

2013年6月1日

ダメージ シーズン1 (2007年 サスペンス映画 全13話)

監督 マリオ・ヴァン・ピーブルズ他
出演 グレン・クローズ/ローズ・バーン/テイト・ドノバン

高品質リーガル・サスペンス

 シーズン1だけで13話の長丁場だ。それをだれさせずぐいぐい引っ張っていく。グレン・クローズは内容の質の高さが気にいって本作のオファを受けたのだが、テレビと映画の作り方の違いにとまどったと来日時のインタビューで答えている。作り方の特徴にフラッシュバック・サスペンスという新感覚を取っている。頻繁に過去と現在が交錯する作劇はわずらわしいときもあるが、放映時に過去のシーンを織り込んで脈絡をつないでいくことはテレビであれば当然のテクニックだろう。「第一容疑者」の成功を受けて大物女優のテレビへの進出が著しい。映画には真似できないコテコテの作りこみ、そこかしこに仕掛けたトリックで人物の正体をばらしていく巧妙なエピソード。浮気な視聴者をつなぎとめるだけのテクなら、料理番組にでもワイドショーにでも、ゆるキャラ家族番組にも弁護士番組にでもある。本作がそれらとかけはなれているのは人物群の冷徹な造形だ。クレン・クローズ演じる主人公は「勝つことが正義と信じる、善人でもあり悪人でもある人物」だ。本作でエミー賞助演女優賞のローズ・ダーンの台詞にある「法律は信じませんが正義は信じます」などという、あえて修羅場をくぐる女たちの彫込が深い▼オープニングは衝撃的だ。ある朝ニューヨークの高級マンションから下着にコートだけを羽織った血まみれの若い女性が路上に走り出る。彼女の名はエレン・パーソンズ。ヒューズ法律事務所の若手弁護士だ。パティ・ヒューズ(グレン・クローズ)は巨額の賠償金を求める訴訟しか扱わない辣腕弁護士。ロースクールを卒業したばかりのエレン(ローズ・バーン)は希望にもえ、弁護士ならだれしも羨むパティの事務所に採用される。恵まれた未来、斯界でトップの有能な経営者、恋人は医師、パティに才能を認められたエレンはマンハッタン目抜き通りのマンションを与えられ満帆の船出だった。場面はチカチカとフラッシュバックする。エレンは前日婚約者のデービッドと喧嘩しアパートをとびだした。パティにわけを話すとパティはエレンを自分の家に泊め、翌日車で別荘に向かった。残ったエレンは翌朝見知らぬ男の襲撃を受け、抵抗するうち男を刺殺してしまう。血まみれのままアパートに戻りバスルームでデービッドの惨殺死体を発見する▼パティは大物実業家アーサー・フロビシャーを告発する訴訟にかかっている。彼の弁護士レイ・フィクスは強敵で依頼人の尻尾をつかませず証拠固めが難航、パティのとった突破口がエレンだった。そもそも彼女の採用には裏の目的があるのだ。それを知るのはパティの右腕・トム(テイト・ドノバン)だけ。パティはいきなりトムを解雇し、事務所から遠ざけたふりを装いながら極秘裏の調査を続ける。迂回しながらも獲物に投げた輪をじわじわ狭めていくパティ。彼女にとっては裏切りも懐柔も法律家としての正義だ。フロビシャーに騙され株の売買に財産をつぎこんだ5000人の従業員がパティの依頼人である。依頼人のために最大に有利な条件をひきだすために、パティは提示された和解の条件を蹴り法廷で争うと主張するが、じつは彼女の狙いは1億ドルやそこらの和解金ではなかった。原告の中にフロビシャーの内通者がいて虚々実々のかけひきが展開、訴訟とデービッド殺害犯人とその首謀者がからみあう▼おちついてみていればすぐ見当はつくのですが、なにしろホレ、過去現在のシーンの割り込みや(これってホントは観客への目眩ましですね)登場人物の相互関係や、と思うと固い話だけでなくロマンティックな恋愛トラブルや、なににもまして怪人パティ・ヒューズともよぶべきカリスマ弁護士の強烈なキャラや、実に豪華メニューのリーガル・サスペンスであることはまちがいありません。