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シネマ365日

2013年6月2日

ダメージ シーズン2 (2009年 サスペンス映画 全13話)

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監督 トッド・A・ケスラー他
出演 グレン・クローズ/ローズ・バーン/ウィリアム・ハート/マーシャ・ゲイ・ハーデン/テイト・ドノヴァン

力を得る女 

 13話からなる本シーズンの粗筋をいちいち述べるのは無駄だろう、そう思ってしまうのは、じつは本作の企画と脚本が、微に入り細をうがって散文的な追跡を拒否するようにできているからだ。緻密な企みを張り巡らし、こまごまと筋書きを追ったとしてもこのドラマはエンタテイメントの秘密を白状してくれない。そう思いながらどこを突けば面白さの腸(はらわた)をひきずりだすことができるだろうとふりかえってみた▼マーシャ・ゲイ・ハーデンがゲスト出演している。パティ・ヒューズ(グレン・クローズ)が訴訟を起こす、世界第三位のエネルギー企業UNRの首席顧問弁護士クレアに扮し、役作りをこう分析する「クレアはグレンとはちがう方法で力を得る女なの。グレンのセクシーさはシャープでスーツ姿は決まっているし髪は金髪のストレート。クレアには丸みがあって官能的で胸の谷間のみえるドレスを着る」本作に登場するほとんどすべての女が成功するためになにかをあきらめている。しかしそれがつらい切ない選択かというとそうではない。彼女らはひっくるめて「力を得る女」思考なのだ。たとえばグレンの一人息子への対応はこうだ。彼は大学に行くといって入学願書を出さず年上の女にのぼせあがっている。コロンビア大学大学院で美術史を専攻し画廊を経営するやり手女性が17歳の高校生をまともに相手にするはずがないとパティは踏む。なぜ大学にいかないのかときく母親に「もし僕が大学に入ったらこの家には母さんを守る男はいなくなる」普通の母親なら涙がでそうなことを息子は言う。ある日彼が女を連れて帰宅すると自分の部屋はからっぽ。階下ではパティが毛づくろいを終えたトラみたいに澄ましてワインを飲んでいる。母親に詰め寄ると「大学に行かないならこの家に住む理由はないわ。荷物はジル(女の名前)のところに送ったわ(息子のそばにいるジルに向かい)男の子がいたら便利よ。よくみて。これが男?」息子に向き直り「行きなさい。もし男が必要になればわたしは自分で一人前の男をみつけるわ」息子だろうと夫だろうとパティの偽善を見抜く目はまるで悪魔だ▼しかしパティも巨悪企業の裁判に臨む緊張で眠れないときがある。夢をみる。階下でにぎやかな話し声がきこえ不審に思ったパティが起きると、リビングの大きなテーブルを男たちが囲んでいる。顔ぶれはパティの共同経営者でついさきごろ解雇されたトム(テイト・ドノヴァン)、UNRの最高経営者ウォルター、自殺したライバル弁護士レイ、夫、息子、FBIの追及からパティを守って自殺した叔父ピート。誰が呼んだのかときくパティに同じ夢のなかでエレンが答えた(彼女はFBIと組みパティを破滅させようと企てている)「あなたよ。みなあなたに復讐したがっているわ。覚えておいてパティ。人はだれも信用できないのよ」このシーンが笑わずにおれようか。つまり復讐したがっているのはみなパティに煮え湯をのまされた男たちなのである。この辛辣な「負け犬の遠吠え」シーンはだれが考えたのだろう▼力を得た女をもうひとりあげるとエレンだろう。恋人を殺害され自分も殺させようとしたのはパティだとエレンは信じている。これが憎まずにおれようか。弁護士資格の剥奪どころか地獄の底まで突き落とてやる。エレンは復讐の鬼と化し、まずはFBIに売ってやると追い詰めてきたのである。エレンはパティが自分を殺そうとしたことを白状させようとラストに一対一で対決する。こう言うのだ「あなたは心の腐ったナルシストで冷酷な人よ。でもそれはみんないっしょ。あなたを刑務所には行かせない。わたしが自分で裁くわ」そこまで大声でいい、この部屋はFBIの監視カメラに収められているとパティにメモで知らせる。パティはそれをみてエレンの復讐は、自分に真実を告白させたことで一応は気がおさまったことを知る。そして早く判事のところへ言って買収する金を渡せと指示する。それではFBIの思う壺にはまるというエレンに「わたしを信じて」この意味が最後にわかるのだが、このときの儲け役はトムだ「すべて見抜いてパティがぼくに連絡してきた。妹(連邦検事官)がUNR社の不正を把握している。証言してくれないか」トムを解雇したのはこのときも敵を欺く芝居だったのよ。力を得る女の正体のようなものがこのドラマにある。事件も謀略も裏切りもさることながら、なににもましてドラマをスリリングにしているのがそんな女の暴き方だ。

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