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シネマ365日

2013年6月6日

ミレニアム ドラゴンタトゥーの女 (2009年 サスペンス映画)

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監督 ニールス・アルデンオプレヴ
出演 ノオミ・ラパス/ミカエル・ニクヴィスト

ワイルドな女

 2011年にハリウッドが製作したのはリメイク版。オリジナルはこのスウェーデン版だ。ヒロインのリスベットだけど、ハリウッド版ルーニー・マーラが洗練されていたのとちがい、ノオミ・ラパスのワイルドなこと。劇中わずかに挿入された彼女の過去は、若い女の子が味わう境遇とすればかなり過酷で、家庭とか女とかしつけとか世間体とか、自分にまとわりつくものを全部そぎ落として24歳になった、という女性なのですね。社会性とか社交性なんか皆無だし言葉自体ろくにしゃべらないしあいさつもしない。彼女のコミュニケーションはパソコンだけだ。パソコンの操作と知識は超一流でハッカーして生活費を稼ぐ。自己を主張するのは革ジャンに鼻ピアス、背中のドラゴンというパンクそのものの出で立ち。彼女のパンキッシュがよく現れるのはモノを食べるときだ。周囲の思惑も礼儀も無視、腹のすいた動物が餌を食べるのと同じでガツガツと手づかみで平らげ、そのへんに汚れた指をなすりつける。真っ黒にふちどった両眼は表情にとぼしく喜怒哀楽を抑圧している。彼女の存在そのものが犯罪とか暴力とかを招き寄せる▼これに比べもうひとりの主人公、雑誌の敏腕記者ミカエルは平凡なキャラだ。ハリウッド版はダニエル・クレイグだったからそれなりに気を使ってカッコよさを味付けしてあったが、オリジナル版の彼はどこからみてもメタボの親父だ。ストーリーの展開でも要所、要所はリスベットが解決の糸口をみつける。だからこのオリジナル版はノオミ・ラパスのレヴューみたいなものだった。原作そのものがよかったけどね。40年前に失踪した少女の行方を捜索してほしいとスウェーデンの富豪から頼まれたミカエルは現地の小島に行く、北欧の木々と湖、冷たい鈍色の空と雲のしたで調査を開始する。いっこうに手がかりがつかめない。彼のパソコンにいきなりメールが来る、発信者がリスベットでドンくさいミカエルの調査にみかねたって感じだな▼変態福祉係のリスベットに対するえげつない暴行やそれを倍にして返すリスベットの復讐やらはともに(オリジナルもハリウッド版も)過激。失踪した少女を探すうち犯人はナチスの信奉者がユダヤ人迫害と女性虐待にかかわる変質者であることがわかってくる。犯人の自室にあった嗜虐をきわめる殺害の手口の何十枚という証拠写真。ヨーロッパ人のホロコーストの受け止め方って、たぶんアメリカ人や他国とはぜんぜん違う生々しいものがあるのではないでしょうか。どことなくぞっとする映し方だ。それとスウェーデンってフリーセックスと福祉国家として知られていなかった? ところが本作に登場するのは女性蔑視のあげく陵辱して殺すという変態男ばかりが中心人物なのだ。雪と森と湖に静まり返った北欧の別の顔。億万長者たちのなかに暴力と犯罪と変質が渦巻く。リスベットは会社の倉庫にある山のような伝票の中から証拠を洗い出し、ミカエルのもとに急行する。そのときミカエルは犯人に殴り倒され首を締め上げられている。本作のミカエルの描き方ってちょっと可哀想すぎない? こんなとろくさい「敏腕記者」じゃ裁判は負けるだろう、失踪のてがかりがみつからないのは仕方ないだろうと思わせるに充分なほど情け容赦がありません。反作用としてリスベットのひとりがちだ。ミカエルがベッドに入ってくるとジロッ。「なにしているの。向こうで寝て」「きみのそばにいたいのだ」「いいけど、寝るわよ」(ぐー)▼ノオミ・パラスが本作のあとブレイクしてリドリー・スコットの「プロメテウス」と、これまた大ヒットの続編「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」に出演したのはご存知の通り。ラストでブロンドの髪をみせたリスベット。水もしたたる美女になったときの脱パンク豹変ぶりは一驚ものでしたね。

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