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シネマ365日

2013年6月29日

ストレンジ・デイズ 1999年12月31日 (1995年 サスペンス映画)

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監督 キャスリン・ビグロー
出演 レイフ・ファインズ/アンジェラ・バセット

ビグローの「夜明け前」 

 「ハート・ロッカー」でアカデミー監督賞の女性監督キャスリン・ビグロー44歳の作品。「ハート・ロッカー」で高い評価を得るまで彼女の映画は赤字続き。さっぱり当たらなかった。旦那のジェームズ・キャメロンは「ターミネーター」「エイリアン2」など監督・脚本で快進撃だったから、夫婦としてはともかく同業者としては嫉妬やジレンマもあったでしょうね。彼女の監督は1983年の「ラブレス」から1995年の本作まで8年間に4本。量産といえないのは、ヒットがなかったせいもあろうが女にホイホイ監督のチャンスを与えないハリウッドという男社会のせいもある。しかし監督した映画の内容をちょっとみてみよう▼「ラブレス」はリージェントに革ジャン、サングラスでハーレーに跨り、セックス・ロックンロールに明け暮れるバイカー軍団。「ニア・ダーク 月夜の出来事」は西部劇をモティーフにしたバイオレンス吸血鬼。「ブルー・スチール」はそのものずばり「銃」のことです。親の代から警官であるジェイミー・リー・カーティス扮する女性警官が殺人犯と壮絶な死闘を繰り広げる。「ハート・ブルー」はキアヌ・リーブスがハーヴァード大学出のエリートFBI捜査官、サーファーに潜入捜査する。今からみてもみないい役者だし、内容もけっこう面白いのにどうしてヒットしなかったのだろう。思い当たるのは軸足が中途半端なのですね。理屈っぽいこと100%でもない、エンタメ100%でもない、コメディ100%でもない、女の味方100%でもない。主人公が気にいって監督は肩入れしているかと思うと100%そうでもない。ジェームズ・キャメロンの自分の嗜好に徹する思い切りのいい演出とそこがちがいました。「ハート・ロッカー」はもうどうでもいいわとばかり、男たちが血道をあげる戦争のアホらしさをこれでもかと突き放した力強い映画でした▼はっきりいって「ストレンジ・デイズ」はキャスリン・ビグローにとって「夜明け前」の映画だと思います。サイバーパンクの体験ディスクが映画の進行役。主演はレイフ・ファインズ。服をきていたらさっそうたる二枚目ですが裸になったら筋肉がトロンとしている。監督はいくら演技力はあっても肉体そのものをもっと鍛えさせなくちゃいけないと思う。レイフ・ファインズは「イングリッシュ・ペイシェント」も「クイズ・ショウ」も「シンドラーのリスト」もみないい役者だと思ったけど、本作は本領発揮とはいかない映画だった。彼のインテリジェンスみなぎる容貌で、女性問題で警察を解雇され、違法ディスクで日銭をかせぐダメ男という設定は付け焼刃の噴飯物だ。劇中の事件そのものも社会的な大事件というより裏社会の仲間モメでしょう。それで2時間以上延々とひっぱられるのはしんどかったな。ラストの真犯人もわかったところで「なんだ、こいつか」というしょぼいやつだから衝撃も意外性もないし▼しかし体験ディスクという、自分の脳を機械で刺激してプロセスを展開する「劇場空間」はこのあと「マトリックス」や「アバター」に受け継がれた。ビグローは「ストレンジ・デイズ」で開発した新方面をなぜ成熟させなかったのか疑問だけど、最新作の「ゼロ・ダーク・サーティー」の傾向なんかでみると、彼女の強みはイマジネーションよりドキュメンタリーふうリアルタッチが向くのでは。事実「ストレンジ・デイズ」は制作費4200万ドル投入して収益795万ドルというみごとな外れっぷりだった。さすがのビグローもこれにこりて5年間沈黙した。ところが性懲りもなく「悪魔の呼ぶ海へ」という妙ちくりんな映画を作り、そのつぎの「Kー19」でよみがえった。主役がハリソン・フォードとリーアム・ニーソンだったからではなく、ソ連の原子力潜水艦の事故という事実に基づくノンフィクションだったからだ。骨の太い問題意識の高い硬派の女性監督が、妙なサスペンスもどきに手をださず、持ち味の社会派感覚で勝負してほしいと願うばかりだ。

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